第2期2学期

夏休み

第13話真夏のヒトカラは疲れる

 あれから1ヶ月。今日から夏休みだ。

 セミの鳴き声と風鈴の音、太陽の日差しが眩しい季節。

 あれから特に変わったことは無い。部活を楽しみ、宿題して、遊んで。楽しい夏休みを過ごしている。

 夏休みは歌唱部の活動が極めて少ない。2週間に1回ぐらいだ。

 エアコンの効いた部屋でアイスを齧りながらスマホをいじる。暑くて外出する気にならない。かと言ってこのままじゃ暇だ。

「ヒトカラでも行くか…?」

 バスで20分ほど先にある永松のカラオケ。この前行ったところだ。

 バスの中は涼しいだろうし……行ってもいいかな。

 夏休み初日からヒトカラも悪くない。


 バックに財布とスマホを入れ玄関を出た。

 近くの公園から子供の元気な声が聞こえる。この暑い中元気だなぁ…なんか老いを感じる。

 ジリジリと照りつける太陽に目を細め、バス停に向かう。

 一応日焼け止めを塗って来た方が良かっただろうか。

 半袖半ズボンだとどうしても日焼けが気になる。

 まあ大丈夫だろ。別に肌が弱い訳でもないし。


 バス停が見えてきた。早く日陰に入りたかったので駆け足でベンチに向かう。

「ふぅ……暑っつ」

 スマホで今日の気温を調べてみる。画面には大きな太陽のイラストと、暑そうにしている男性のイラストが描かれており『32.4℃』とデカデカと書かれている。

(32℃……後でポ〇リとか買わないとぶっ倒れるなこれ…)

 幸いカラオケの近くに自販機が設置されてある。そこでスポドリでも買おう。


 車道に目をやると、奥からバスが来ているのが見える軽く伸びをしバスを待った。

 車内に入ると肌に付いていた汗に冷たい空気が一気に当たり、想像以上に涼しかった。エアコンの真下の席に座りスマホで適当にニュースを見る。

 事件、スポーツ、芸能人の結婚発表などなど。様々なニュースが掲載されている。

 あんまり見てると酔いそうなのでアプリを閉じた。

 そろそろ着くだろう。

「次は〜永松〜永松〜」

 ボタンを押してしばらくするとバスが停車した。小銭を機械に入れバスを降りると生温い風が全身を撫でる。その感触に少し顔をしかめた


 歩いていると、横を凄いスピードで自転車が通り過ぎた。

 交通量の多い平らな道だったので気づかなかった。

 多分小学5年生ぐらいだろうか。まったく……最近の小学生は……

 ――なんてね。正直僕も昔はああだった。友達と公園でサッカーしたりしてたっけ。遊んでた人の名前は覚えていない。我ながら中々に薄情だなと思う。




 向こうにカラオケの看板が見えてきた。

 サッと足を早める。スポドリを早く飲みたいからだ。暑くて仕方がない。

 自販機の赤いボディが段々と近づく。

 財布を出し、140円でスポドリを買った。

 すぐにキャップを開け、グイっとスポドリを飲んだ。

 体に水分が行きたわっていく。

「生き返ったぁ……」

 スポドリをバックに雑に詰めてカラオケに向かう。



 カラオケに入りコインロッカーに靴を入れる。周りは都会っぽいのに、何故かここだけ田舎臭が凄い。でも僕はそれもカラオケのいいところだと思う。

 時間は2時間にし、ドリンクバーでコーラをコッブに注いだ。


 18番の部屋に入ると当たり前だが以前より狭かった。マイクをテーブルに置き、デンモクで曲を選ぶ。

 ヒトカラは自分の好きな歌を周りを気にせず歌えるところだ。同じ曲を2連続で歌ったりとか、僕だけじゃないと思う。


「 ―――♪――♪」

 部屋の中に自分の声が響く。

 たまにはヒトカラを悪くないな。

「―――♪……?」

 なんか視線を感じる。

 ドアの方へ目をやると、誰かがこちらを不思議そうにこちらを見ている。同い年くらいだろうか。

 部屋を間違えたのかと部屋番号を確認するが間違っていない。もしかして僕なんかしちゃった?

 しばし見つめ合っていると、コンコンと軽くノックされた。


 ドアを開けると、ラフな服装に天然パーマの青年が立っていた。

「すいませんなんか僕――」



「克己…だよな?」



 ―――え?














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