第12話歌唱部☆らいぶ
あれから4日が経った。
練習に練習を重ね、4日という短い期間でやれるだけの事はやり尽くした。
「本番だね……」
給食を食べ終わり部室に集まった。昼休みが始まったら体育館に移動する。
「緊張する…」
僕の緊張はピークに達していた。恥ずかしいわけではない。ミスが怖いのだ。大勢の前でのミスほど恥ずかしいことは無い。
「初めてはそりゃ緊張するよね…私たちも緊張してる」
朱音先輩が語尾に息を混ぜて言った。ある程度経験があっても緊張するのか……そりゃそうか。
本番まであと10分。4日間の練習でこれでもかというほど喉の調子は良い。
そろそろ本番。体育館に向かう時間になった。深呼吸をして気分を落ち着かせる。
ここまで頑張ってきた。やれる。できる。行こう。
僕達は部室を出た。
裏口から体育館に入りステージに上がった。まだ幕は上がっていない。
自分が使うマイクスタンドを見てもう一度深呼吸をする。
ゆっくりと幕が上がっていく。自然と手に力が入った。
僕の目に映る体育館の景色はキラキラしていた。今から僕らの演奏が始まると思うと、鼓動が高鳴っていく。
体育館が拍手で包まれる。
「来てくれてありがと~!!!最高の演奏をみんなに届けます!!」
朱音先輩が笑顔で明るく言った。体育館が黄色い歓声に包まれる。
「1曲目いきま〜す!!」
体育館に音楽が響き渡る。
「「―――♪―♪――♪」」
先輩の声に重ねて僕も歌う。
観客はどうやら僕に興味津々なようだ。めちゃくちゃ視線を感じる。でも誰も僕に対して嫌悪感は抱いてないようだ。良かった……って、安心してる場合じゃない。歌うことに集中しないと。
僕はいつも通り歌っている。イベントだからといって変に考えると失敗するからだ。
(楽しい…!)
今の僕は最高に気分が良い。この部活に入って良かったと心から思う。
僕の後ろでドラムとギターの音色がステージを包みイベントを盛り上げている。
先輩達も最高の笑顔で演奏している。音楽に本気になれる先輩達に僕は憧れていたんだ。
そして曲が終わると、体育館がたくさんの拍手と歓声で包まれた。
気付けば額は汗で湿っていた。僕は達成感と安堵でいっぱいだった。
「……終わったね…」
溜息交じりに朱音先輩が言った。
無事最高の演奏になった。
僕は朱音先輩がいないと部活に入ることもなかっただろうし、適当に勉強して、卒業する。そんな高校生活になってたと思う。でも朱音先輩がいたから僕は変われたんだ。
僕から先輩にかける言葉は一つ。
「あ…朱音先輩!」
「わぁ!ビックリした!」
「あ…すいません……えっと…あの…」
やばい。恥ずかしい。
短く息を吐き、口を開いた。
「これからも…よろしくお願いしますね!」
「…うん!」
「よろしくね~!」
「よろしく~!!」
第1期 完
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