第11話僕の気持ち
今僕は静まり返った部室の中にいる。
皆部室の中にいるのに。
数十分前――
今日は歌唱部☆らいぶで演奏する曲を決める日。
6時間目を終え、部活が始まった。
今から2時間ほど先輩たちと過ごす。
「じゃあ歌唱部☆らいぶの曲を5曲決めま~す!」
と言ってもこの中から5曲決めるのは中々難しい。
黒板には先週選んだ曲がびっしりと書かれている。
ある程度周りが知っている曲を優先し、自分の好きな曲も演奏したい。
きっと先輩たちも同じことを思っていると思う。
どうしようかと頭を抱えているといつの間にか部室は静かになっていた。
――てなわけで今僕は静かな部室で曲を選んでいる。
(うぁ~…どうしよ……)
サッと数音先輩が席を立った。
どうやら考えがまとまったようだ。
黒板に正の字を書き、床に腰を下ろした。
「やっと決まったよ~…」
「時間はまだあるから和人君達ゆっくり決めてね~」
「は~い」
体育館に立った時、見に来てくれた人達と一緒に盛り上がりたい。
なら好きな曲は我慢しよう。みんなを楽しませるためのイベントだから。
よし。決めた。
席を立ちチョークを握った。
後悔は無い。いい選択ができた。
和人先輩達も曲を決め、黒板の前に立った。
「すごい静かだったね…」
溜息交じりに朱音先輩が言った。
確かに静まり返った部室というのは経験したことが無かった。
いつも明るく騒がしい部活だったのが一気に無音になっていた。
先輩たちも歌唱部の部員。音楽のことには真剣に向き合う人達なんだ。
「明日から練習!4日後に最高のライブをみんなに届けよ~!」
こうして今日の部活が終わった。
「ただいま~」
「おかえり~」
リビングに入ると、お父さんがソファに座っていた。
「克己お帰り~」
「ただいま」
宿題をするために2階に上がり机に座った。
カフェオレを一杯飲んでペンを握る。
今日は宿題が多め。思わず溜息をついた。
ノートにペンを走らせ、宿題を進める。
正直勉強はあまり好きではない。
自慢じゃないが僕はそこそこ成績は良く、学業で困っていることはない。
宿題を終わらせ、いつものように音楽を聴き体を休めた。
「克己~!ごはん出来たぞ~!」
階段を降りてリビングの扉を開けた。
食卓には和食が並べられている。料理の上手いお父さんが作ったのだろう。
「よし!食べるぞ~!」
「いただきま~す!」
「いただきます!」
お母さんは帰りが遅くなるらしい。
お父さんと二人きりなのは気まずいような楽しいような、複雑な気持ちだ。
でも美味しいご飯を食べながらお父さんと話すのはやっぱり楽しい気がする。
まあ、嫌いではない。それは確かだ。
僕の家族は皆明るい。特にお父さんかな。
僕のことを応援してくれる家族がいてくれることが幸せだ。
「いつもありがとね」
「なんだ急に?こちらこそありがとな!」
照れているのがまるわかり。それが僕のお父さん。
我が家は今日も笑顔で包まれている。
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