第10話みんなで。
「忘れ物は…ないな」
今日は土曜日。先輩たちと色々遊ぶ日だ。
バスに乗って待ち合わせ場所まで行き合流する。
玄関を出た瞬間暖かい日差しが肌に当たった。
「いい天気♪」
バス停までは歩きで10分ほどかかる。
イヤホンを片耳に付けスマホに触れた。
お気に入りの音楽を聴き、自然と体がリズムをとっていた。
犬の散歩をしている人、ランニングをしている中年男性、周りは休日に染まっている。
カラスの鳴き声、公園から楽しそうな声が聞こえる。
横断歩道を渡りバス停に着いた。ベンチに腰を下ろしスマホをイジる。
先輩たちにメールを送り、バスを待った。
今バス停着きました!
了解!!
私は今待ち合わせ場所に向かってま~す('◇')ゞ
しばらくしてバスが到着した。
さっさと乗車し、音楽を聴きながら景色を眺めた。
「次は~永松《ながまつ》~永松~」
降車ボタンを押し、バスを降りる準備をした。
バスを降り待ち合わせ場所の公園へ向かった。
永松は少し離れた町。たまに来る程度でそこまで町に詳しくない。スマホのナビ機能を使って公園に向かった。
「あ!克己君来た~!」
公園から美香先輩の声が聞こえてきた。
「日渡先輩まだかな?」
和人先輩の声も奥の方から聞こえてきた。
「朱音先輩来てないですね…」
「ね」
「!」
スマホからピロンと音が鳴った。
ごめん!なんか混んじゃっててもうすぐ着きま~す!( ;∀;)
「混んじゃってるっぽいですね。もう少しで着くらしいです」
(わかりましたっと…)
「ごめ~ん!!遅れちゃった~!」
先輩たちの顔(僕もね)が一気に明るくなった様な気がした。
最も顔が眩しかったのは美香先輩だった。まあ当たり前かな。
「ほっんとごめん!!今日は楽しも~!!!」
「「「イェーイ!!」」」
「元気があって良し!」
「まずどこ行きます?」
「時間はいっぱいあるからね~!まずは…CDショップ行っちゃう!?」
「「「賛成!!」」」
「じゃあレッツゴー!!」
少し歩いて大きめのCDショップに着いた。
「着いたね~!」
「まあまあ歩きましたね」
「ですね」
「じゃあ僕あっち行きますね!」
「じゃあ私も~」
朱音先輩と階段を上り2階に着いた。
まずは自分の好きなバンドのCDを探した。
「お、これいいじゃん。買お~」
「早速見つけた感じ?」
「はい!好きなバンドのCDあったんで!」
「私はこれかな~」
そういって先輩が見せてくれたのは、自分の大好きな歌い手のCDだった。
「え!?先輩それどこにありました!?」
「向こうの方だったよ!」
「ありがとうございます!」
早歩きで先輩が教えてくれた方向に向かった。
「あった~!!やった~!!!」
「お気に入りの見つけれて良かったね~」
「ですね!もう満足です!」
CDが入ったエコバッグを大事に抱えながら言った。
「美香ちゃんたちの方戻ろうか!」
「はい!」
3階に上がり数音先輩と合流した。
和人先輩はエコバッグに数枚CDが入っていた。
「和人先輩結構買いましたね」
「良いのいっぱいあったからさ」
数音先輩は3枚買っていた。
「私もまあまあ買えたな~」
「美香ちゃんはお金の使い方慎重だよね~」
「そうですか?」
「じゃあ次は…昼ごはん軽く食べてカラオケかな!」
「近くにコンビニあります?」
「カラオケ行く途中にあるよ~!ちゃんと調べてきたからね!」
自慢気に朱音先輩は言った。
「朱音先輩用意周到ですね」
「ありがと」
「何食べようかな~」
「まあ僕は無難におにぎりでいいや」
「私もおにぎりでいいや~」
「ブリトーしか勝たん」
「やっぱ和人君ブリトーなんだ」
コンビニに入って各々食べたいものを買った。
「あそこのベンチで食べよ~」
ベンチに座りおにぎりの袋を開けた。
「いただきま~す」
とりあえず迷ったので具は紅鮭にした。
シンプルで個人的に一番ウマいと思ってる。
「ごちそうさまでした」
「さぁ~カラオケ行こ~!!」
「なに歌おうかな~」
今から楽しみになってきた。
「歌う曲古すぎてあるかわかんない…」
12年前…あるかな?
「ボカロならあると思うけど…どうだろ」
「行ってみないとわかんないね」
そう話しているうちに、カラオケに着いた。
「お時間どうなさいますか?」
華奢な女性スタッフがカウンターに一人で立っていた。
「2時間でいい?」
「いいんじゃないですか?長すぎてもだし…」
「じゃあ2時間で」
「かしこまりました」
部屋に入ると、少し広めの開放的な部屋だった。
茶色の照明と大きなモニターに著名人のインタビュー動画が流れている。
まさにザ・カラオケという感じだ。
「ドリンクバー行こ~」
荷物を置いて、部屋を出た。
(メロンソーダでいっか)
ドリンクバーのスイッチを押しコップにメロンソーダが注がれる。
小さく炭酸の音がして甘い匂いがする。
「先輩たちのかごに入れて持っていっときますね~」
「ありがと~!」
「じゃあさっそく歌いま~す!」
朱音先輩が選んだ曲は最近流行っている曲だった。
「――――♪――♪」
朱音先輩の歌声は少し低くて力強い歌声だった。どちらかと言うとカッコイイ部類に入る歌声だ。
「やっぱ日渡先輩上手いな……」
和人先輩の一言に動揺したのか、音程が少しブレた。
「先輩わかりやすいなぁ~」
ここぞとばかりに数音先輩が茶化した。
また音程がブレた。今度はさっきよりもわかりやすく明確に。
曲が終わった瞬間朱音先輩が顔を赤らめ先輩たちに言った。
「も~!ホントやめてって~!」
「すみません」
とは言ったものの二人とも反省はしてないように思えた。
「じゃあ次僕だな」
モニターに移された予約欄には、僕が歌うかなり古いボカロのタイトルが映し出された。
「古っ!!」
朱音先輩はすぐに反応したが、和人先輩と数音先輩はこの曲を知らない様子だった。
「ヤバいこの曲知らない…」
「私も」
この曲は一応僕の十八番だ。
だが周りがこの曲を認知していないためあまりインパクトを与えることができないままでいた。
だが今は違う。存分に本気を出して歌える。
「―――♪――――♪―♪」
「やっぱ綺麗な声だな…すごい」
「ね~」
正直照れてしまった。
周りとカラオケに行くということが久しぶりで歌声を褒められるのに慣れてなかった。別に褒められまくってたわけじゃないけど。
「ふぅ…」
「やっぱ上手いよ克己君!!」
「ありがとうございます!」
その後も2時間たっぷり歌い続けた。
「いや~歌いまくったね~!!」
「喉が…歌いすぎたな……」
「カラオケの中でギター弾きたい…」
「ドラム叩きたい…」
帰り道、ふと朱音先輩が口を開いた。
「ねぇ…私思ったんだけどさ――」
「これって……めちゃくちゃ青春じゃない…!?」
「……ですね…!」
「…確かに……!」
「…うん……!」
今まで、言うタイミングがなかった。
今しかない。
「僕、先輩たちと……最高の青春作りたいです…!!入部…させて下さい!!」
「克己君…!…うん…!うん……!もちろんだよ!!!」
「克己君がそんなこと言ってくれるなんて…」
「当たり前だよ!!」
「……!!ありがとうございます…!!これからもよろしくお願いしますね!!」
今の高校生活はきっと僕の青春になるだろう。
…いや、必ず。
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