第9話歌唱部☆らいぶ…?
「行ってきま~す!」
僕はいつもより元気に家を出た。
いつもの道は、桜の木と花弁でまるで始めて通る道のようだった。
「あ、克己君だ」
「和人先輩!」
「一緒に登校する?」
「はい!」
「部活、気に入ってくれてよかったな」
そう言った和人先輩の顔には強い安堵を感じた。
「昔、歌唱部に入った子がいるんだけどすぐやめちゃってさ。『退部したい』って言われた時、先輩…明るかったけど内心落ち込んでたんじゃないかな」
(そんなことが…)
「そんな顔しなくていいよ。ごめん、朝から気分悪くしちゃったね」
「いえいえ…」
「あの子今何してるんだろ?知りたいけど先輩に止められちゃったからな…『あの子が可哀そう』って」
「あ、そうだ。克己君に教えないといけないことが」
「?」
「昨日、活動内容に月一でライブがあるって書かれたでしょ?その名も……」
「歌唱部☆らいぶ!!!」
歌唱部……らいぶ……
思わず頭の中で復唱してしまった。
思ったよりダs…独特なネーミングセンスだ……
「今、『思ったよりダサいな…』とか思ってるでしょ?」
ギクッ
「まあ僕も最初はそうだったよ。日渡先輩から聞いた時『え?』ってなったもん。でもね~、なんか段々おしゃれに思えてきたんだよね。先輩って実はネーミングセンスめちゃくちゃ良いのかも…」
なるほど…そうなのかな?
一瞬納得してしまった。
「で、歌唱部☆らいぶは体育館で行われるイベントで歌う曲を決めて一週間の練習をしてから本番スタートって流れ。多分今日曲決めるのかな?」
「そういえば、歌唱部の顧問って誰なんですか?」
今まで1度も顧問の姿を見た事がない。
「いるけどいない……みたいな?」
え?顧問がしっかり部活に来ないって割と問題なんじゃ?
「え?大丈夫なんですかそれ?」
「そもそも歌唱部って日渡先輩が作った部活だから急遽バスケ部の顧問を歌唱部の顧問にしてるって感じだからほとんど顧問は来ないよ」
「なるほど」
中々珍しいな。
話しているうちに学校に着き、和人先輩とは昇降口で別れ教室に入った。
(よし…頑張るか!)
放課後――
「じゃあ今日はイベントで歌う曲を決めま~す!あ、克己君知らないよね!」
「俺が教えときましたよ~」
「さっすが~!ならすぐ本題に入ろう!なるべく知名度の高い曲にしてね~」
数ある人気楽曲の中から1曲に絞るというのは難しい。見に来てくれた人たちと一緒に楽しめる曲にしよう。
♢♢♢
あれから数十分が経ち、僕達の考えは纏まった。
「じゃあこの曲にしま〜す!今日はこれで終わり!」
下駄箱を出ると、夕日と桜の木の花弁でグラウンドは幻想的な景色に変わっていた。
「今日も…楽しかったな……」
僕の高校生活は明るく変わった。
🏠
「ただいま~」
「おかえり~」
「克己…克己!」
お母さんの声の後ろからいっつも聞いているうるさい声が聞こえてきた。
「お前部活入ったんだな!!もうお父さん心配で…」
「あ~うん」
この人は…僕のお父さんの佐藤巧《さとうたくみ》。
優しいんだけどまあうるさいことが多い。
「とりあえず宿題してくるから」
「いってら~」
「は~いいってき~」
なんだかんだ仲はいいんだけどね。
「夜ごはん出来たぞ~!」
「は~い」
今日もいつものように食卓を囲む。
「「「いただきます」」」
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