第5話歌唱部の部員たち 和人編

 俺の名前は猿渡和人さわたりかずと

 歌唱部でギターを担当している。

「ただいま~…って聞こえないか」

 俺の家はかなりデカイ。豪邸って程ではないと思うが。

 自分のだだっ広い部屋に入り自分の机に座る。


「ふぅ…宿題するか…」

 カバンからプリントを取り出し、宿題を始めた。

「相変わらず簡単だな」

 勉強もできる方だ。完璧人間ではないけど。

「っし。終わった」


 宿題を終わらせたら、自分用の防音室に入ってギターを弾く。練習兼暇つぶしだ。

 スピーカーの電源を入れてギターを抱えた。

「音源足りないな…また探さないと」

 いつもは1時間ぐらい弾くのだが、この日は30分でいったん弾くのをやめ、音源探しを始めた。

 俺は音源に合わせて弾く方が好きだ。

 定期的に探して保存するという作業を行っている。


「これは…弾きやすいけどリズムがな…これは…お、いいじゃん!保存っと」

 この作業が意外と楽しい。


 「おーい和人!ご飯できたぞ~!」

「は~い!!今行く!」

 親はシングルファザーだ。いつも感謝している。


「ギターの調子はどうだ?」

「ん~まあまあかな」

「そっか。頑張れよ!」

「あ、今日新しい部員が来てさ~」

「お!どんな子だ?」

「先輩に振り回されてたね。でもやる気があって良い子だった。」

「ハハハっ!そうか。まあ部員が増えてよかったな。少ないからな~」

「も~言わないでって!」

「すまんすまん」


 この何気ない会話が俺の幸せだ。

「じゃあ食べるか!いただきます!」

「いただきま~す」

「ん!ウマ!やっぱ父さんのパスタが一番だな~」

「そうか?ありがとよ」


「ごちそうさま~」

「食器下げて水につけといてくれ」

「は~い」


 防音室に入ってまた音源を調べた。

「これは…弾きづらいな。これは――」

 そうやって1時間ほど調べた。

「あ。風呂忘れてた。今は―9時か。入ろ」

 お風呂を沸かし、音楽を聴きながら30分くらいゆっくり入った。

「そろそろ上がるか…」

 体を拭いて着替え、髪を乾かした。

「さ~て寝るか!」

 早寝早起き朝ごはん。健康のために一番大切なことだ。


 「おはよ~」

「相変わらず早起きだな。いいことだ!朝ごはんは?」

「ん~フルーツと、アイスコーヒーがいい」

「大人だな~よし!任せろ!」

 眠気覚ましのコーヒーは至福のひと時だと最近知った。


「よし!出来たぞ」

 テーブルにはオレンジ、リンゴ、バナナの盛り合わせと、お父さんが挽いたアイスコーヒーが置いてあった。

「ありがと!いただきま~す!」

「どうだ?ウマいか?」

「ウマい…!」

「ホントか!?またいつでも作ってやるからな!」

「マジで!?よっしゃあ!!」


「ごちそうさま~」

 顔を洗って歯磨きをして、30分程テレビを見て過ごした。

「じゃあそろそろ行ってくるね~」

「は~い!行ってらっしゃい!楽しんで来いよ!」

 いつも玄関まで見送ってくれる。


 良い朝だった。

 自転車で学校まで行き、教室に入り日課表を見た。

「あれ今日体育あるの!?マジかよ…」

 そう。俺はさっき言った通り完璧人間じゃない。

 

 え?どれくらいできないかって?

 それはそれは相当ひどい。体育祭は活躍できず醜態を晒すのみ、体力テストはひどい成績だ。持久走も地獄。


 体育まではいつも通りきちんと授業をした。

 意見を言い、ノートも完璧にとった。

 そして体育の授業が始まった。

「和人ホント運動できねぇな~」

「う、うるせぇ!中学の時は運動めっちゃできたんだぞ!?(大噓)」

「ホントか~?」

 これだから嫌だ。友達からイジられるのが苦痛でしかない。


 放課後――


「やっと終わった…」

 これが6時間目でよかった。

 部活で解放される。

「あ、先輩いた。」

 部室の前に朱音先輩が立っていた。







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