三
昔の武蔵野は
「秋九月中旬というころ、一日自分がさる
あるいはまたあたり一面にわかに薄暗くなりだして、瞬く間に物のあいろも見えなくなり、樺の木立ちも、降り積もッたままでまた日の眼に
すなわちこれはツルゲーネフの書きたるものを
楢の類だから黄葉する。黄葉するから落葉する。時雨が
鳥の羽音、
もしそれ時雨の音に至ってはこれほど幽寂のものはない。山家の時雨はわが国でも和歌の題にまでなっているが、広い、広い、野末から野末へと林を越え、
秋の中ごろから冬の初め、試みに
よもすがら木葉かたよる音きけばしのびに風のかよふなりけり
というがあれど、自分は山家の生活を知っていながら、この歌の心をげにもと感じたのは、実に武蔵野の冬の村居の時であった。
林に座っていて日の光のもっとも美しさを感ずるのは、春の末より夏の初めであるが、それは今ここには書くべきでない。その次は黄葉の季節である。なかば黄いろくなかば緑な林の中に歩いていると、澄みわたった大空が
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