第8話「かくしごと」前編
現在から4年半前……。
私達が小学6年生の頃のお話。
[いじめっ子A]
「泣けー、泣け〜!」
[あさくら そら]
「や、やめてー……」
[いじめっ子B]
「悔しかったら怒ってみろよー!」
気の弱い私はクラスの男子とかにいじめられる事が多くて、いつも泣かされていた。
[せつな いつき]
「あっー!!おい!やめろー!」
私がいじめられてる所に、見掛けた五木君が助けに来てくれた。
五木君の姿を見て私は、助かった、良かった……って言う気持ちなり、目から流れる涙は安心から来る涙へと変わる。
[いじめっ子A]
「うわっ!来た来た!」
[いじめっ子B]
「逃げろ〜!」
男子達は五木君の声を聞いた途端に逃げて行く。
[あさくら そら]
「あ、ありがとう……」
[せつな いつき]
「大丈夫?」
五木君が私を心配してそばに居てくれる。
[あさくら そら]
「うんっ!」
いつもありがとう。
だけどある日……。
[あさくら そら]
「いつき君遊ぼー!」
[せつな いつき]
「もう遊ばない」
そうやって私の遊びの誘いをキッパリ断ってくる五木君。
私はそれを聞いてドキッと胸が鳴った。
[あさくら そら]
「えっ」
この時から五木君は段々と私を避けるようになった。
[せつな いつき]
「女子と遊んで来いよ」
以前と違って、私に凄く冷たくなった彼が私は寂しくて。
[あさくら そら]
「う、うん……」
今は五木君と遊びたいのに……。
[せつな いつき]
「お前といると、おれまでからかわれるんだよ」
登校中、休み時間、お昼休み、放課後……五木君は私を無視するようになった。
それで、私は…………。
……。
[刹那 五木]
「中学振りだろ?」
あ、あれ?
私の記憶と、五木君が言っている事が一致しない。
でも、だって、でも……。
[朝蔵 大空]
「えっ?えっ、違うよ〜。中学は別だったでしょ?」
五木君と中学校が同じだった記憶が私には無い。
だって、五木君は小学校を卒業してすぐに私の家から遠い所に引っ越して行ったのだから。
そんな訳は無いし。
[刹那 五木]
「何……言ってんだよ」
[朝蔵 大空]
「え、そう……でしょ?」
私は五木君にもう一度確かめた。
[刹那 五木]
「…………ああ。そうだったな、ごめん。おれ、忘れてたわ」
その言葉を聞いた瞬間、私は凄く安心した。
よかった、私がおかしいのかと思った。
私の覚えてる事が間違ってるなんて……無いよね?
[朝蔵 大空]
「もう!ふざけないでよー」
私は五木君に近付き、彼の右腕に触れる。
ブランクは
そう言う感じ、昔から私達にはそう言う遠慮とか無かったし。
[朝蔵 大空]
「わぁ!今触って思ったけど、五木君の腕凄いね!わー、ムキムキだぁ〜」
何年か振りに再会した五木君の腕、服越しからでも分かるほど硬く、鍛えられていた。
サッカー部って、こんなに筋肉付くんだ……。
[刹那 五木]
「ちょ、ちょっと……?」
私は今度は両手でそれを夢中になって
[刹那 五木]
「お前って奴は……」
五木君、引き気味で更に私に何か言いたげな様子。
[朝蔵 大空]
「くすぐったい?」
私はからかうように笑って聞いてやった。
[刹那 五木]
「あのね。おれらもう、高・校・生なの。だからそう言うスキンシップは……」
[朝蔵 大空]
「えっ!?ごめんっ、嫌だった?」
私はすぐに五木君の腕から手を離して五木君に謝る。
前の私達ならこれぐらいの事当たり前の事だったはずだけど……。
私、この空白の時間で五木君に嫌われちゃったのかな……?
[刹那 五木]
「あーいやっ、嫌じゃないけど……さ」
[朝蔵 大空]
「ごめんなさい……」
私は俯きながら謝る。
[刹那 五木]
「……はぁ」
あ、ため息吐かれた……やっぱり私嫌われて……?
そう悲しいなぁ……と思った時だった。
[朝蔵 大空]
「えっ」
急に私の頭に何かが
[朝蔵 大空]
「五木……くん?」
なんだと思って五木君の顔を見上げる。
その時の五木君の表情はとても穏やかな顔で、しかも優しい目で私を見ててくれていた。
[刹那 五木]
「そんなにションボリすんなよ、おれがいじめたみたいになんだろ?」
そう言って私の頭を優しく撫でてくれる五木君、そして少しだけ乱れる私の前髪。
昔より成長した五木君の大きくてゴツゴツの手、でもあの時と縮尺はあまり変わらない。
その手が私のメンタルを回復してくれる。
私は香る五木君の匂いに、一気に懐かしい気持ちになった。
[刹那 五木]
「だから泣くなよ、な?」
[朝蔵 大空]
「なっ、別に泣きはしないけど……」
私は五木君に対して、ここぞとばかりに強気な態度を見せてみる。
そうすると、五木君はニヤニヤっと笑うのだ。
[刹那 五木]
「いやいや!お前はそうやってすーぐ強がるよな〜。素直じゃないのは可愛いくないぞー」
可愛くないっ……!?
私は怒った。
[朝蔵 大空]
「か、からかってんでしょっ……!」
私は五木君の言葉に少し腹が立ったので声を荒らげて言う。
私が言っても全然動じてない五木君。
[刹那 五木]
「アハハっ!!お前が怒鳴ったってなんも怖くないって!
派手に笑い、吹き出し、私をバカにする五木君。
[朝蔵 大空]
「小型犬って……私人間なんですけど」
[刹那 五木]
「あーごめん、今のは
え?想像以上に意地が悪いんですけどこの人、こんなんだっけ?
五木君って、こんな人だったけ??
[朝蔵 大空]
「う、うるさいわっ!それぐらい分かるよっ!」
[刹那 五木]
「はははっ!ひ、久し振りにこんな笑ったわ〜」
[朝蔵 大空]
「あーそうですか……」
この人の相手するだけ無駄では?!
[刹那 五木]
「あ、そうだ。これおれの連絡先、追加しといてー。じゃあおれ部活あるから行くわ」
と言って私の左手に何かの紙切れを握らせる五木君。
ポケットからすぐ取り出してたな……きっと日頃からケータイの連絡先聞かれるんだろうなぁ……。
陽キャだな!
[刹那 五木]
「じゃあなー」
と言って運動場へと走り出す五木君。
[朝蔵 大空]
「う、うん」
私は手に持っている五木君の連絡先が書かれたメモを見る。
やっば……サッカー部、しかも五木君キャプテンだったっけ?
サッカー部のキャプテンの連絡先手に入れちゃっても……い、良いんですか?
まあ私も言うて五木君の幼馴染みだから、その辺の女子達より一線超えてる訳だし、特別だと思うけどね。
[朝蔵 大空]
「し、仕方無いわね〜。い、一応追加しといてやるかぁー」
と言って渋々追加しましたよみたいな感じで私はケータイを操作した。
[朝蔵 大空]
「最初は……『よろしく』でいっか」
ピッ。
私は一番初めのメールで、五木君に『よろしく』と打って送ってみて、ケータイを閉じる。
[朝蔵 大空]
「さ、雨も
我が
……。
[加藤 右宏]
「たっだいマー!!」
大空より先に朝蔵
[加藤 右宏]
「アレっ?誰からも返事が帰ってコナイ……」
ミギヒロが帰って来ても、『おかえり』と言ってくれる人が居ない。
[加藤 右宏]
「誰もいないのカー?大空〜?」
大空を探して大空の自室まで来るミギヒロ。
[加藤 右宏]
「ナンダァまだオレ様ひとりかぁ……」
その時、ミギヒロがベッドの下に何か落ちているのに気付く。
ミギヒロはそれが気になり、手を伸ばしてそれを手に取る。
[加藤 右宏]
「……」
ミギヒロが掴んだのは前の夜に大空が取っといた怪しい封筒だった。
ミギヒロは着けていたゴーグルを外して……。
ミギヒロは何を思ったのか瞳孔が閉じた目でそれを見て固まる。
……。
[朝蔵 大空]
「あれー?ねぇ、ここに置いてあった封筒知らなーい?」
私は風呂から上がって、ミギヒロに例の封筒の事を相談しようと思ったのだが。
ベッドの横のサイドテーブルに置いておいた封筒がどこを探しても無い。
[朝蔵 大空]
「ねぇ聞いてるー?」
私は返事が無いミギヒロにもう一度呼び掛ける。
[加藤 右宏]
「んー……」
面倒臭そうに返事をするミギヒロ。
[朝蔵 大空]
「ちょっと!封筒見てない?」
[加藤 右宏]
「なんのー?」
私が大きな声をあげると、やっと返事らしい返答がミギヒロから返ってきた。
[朝蔵 大空]
「なんか変な柄の封筒!私の名前書いてあるんだけど……カタカナで」
私は封筒の大きさを手で表してミギヒロに説明する。
[加藤 右宏]
「知らないヨー」
ミギヒロはこっちを向かない。
少しくらい探すの手伝ってよ。
[朝蔵 大空]
「えー!もうどこ行っちゃったんだろー」
私はベッドの下を覗く、薄暗いベッドの下に微かに見えるのは少しの
[加藤 右宏]
「……」
[朝蔵 大空]
「無い……」
封筒が本当に無くて私は焦り始める。
[加藤 右宏]
「ママが捨てたんじゃなイノかー?」
[朝蔵 大空]
「えーお母さん私の部屋に勝手に入らないもーん」
昔から部屋の掃除はお母さんに任せないで自分でしてるし。
[加藤 右宏]
「じゃあ知らなーい」
[朝蔵 大空]
「まあ良いや。ねぇあのさ、魔王試練とかそのパートナーとか書いてあったの!ミギヒロ何か知らないの?」
私は封筒の手紙に書いてあった事を思い出してミギヒロに聞いてみる。
[加藤 右宏]
「何言ってるか分かんないゾー」
ミギヒロは布団を深く被って、あっちを向いて寝てしまったようだった。
[朝蔵 大空]
「ちょっとー……はぁ」
なので私も、一旦封筒の件は諦める事にした。
やる事も無いので私もそろそろ寝る準備をする。
明日も学校があるし。
[朝蔵 大空]
「おやすみ……」
しばらくして私は眠りについた。
……。
[加藤 右宏]
「……よし詠唱終わりっと」
深夜に謎に起きて怪しい行動をしているミギヒロ。
そしてその手には、大空が部屋
[加藤 右宏]
「バレないようにシナイトナ」
ミギヒロはまた何も無い空間から取り出した分厚い本の最初のページに封筒を挟み、それをまた何も無い空間に
[加藤 右宏]
「アッチになんか戻るもんか……」
つづく……。
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