第11話 ゆるキャラパンダ

 マジパンワールドの中で、ラビットマンは迫りくる数多のマジパン戦士達を前にして焦りを感じていました。


「ちくしょう! あんなのに飲み込まれたら、さすがに持たないぞ……」


 辺りに散らばるマジパン・ダルマの攻撃を躱しつつ、警棒で反撃しながらラビットマンが零しました。


「もう、警棒なんか使ってないで、ライトソードで蹴散らせばいいじゃない」

「えっ? だって、ライトソードって魔王軍じゃないと切れないだろ?」


「なに言ってるの? こいつらっていうか、あのパンダは魔王軍よ」

「えっ? マジで?」


 ラビットマンは、どうやら敵が魔王軍だとは思っていなかったようで、ナノリアの指摘にちょっと驚いたようです。


 ラビットマンが使うライトソードは、なぜか魔王軍しか切れないという特性があります。ライドソードで魔王軍以外のものを切ろうとするとパリンと砕けてしまうのです。しかし、魔王軍であればスパスパ切れてしまうという対魔王軍に特化した不思議な武器なのです。


「なるほど、魔王軍なら、切れるはず!」


 ラビットマンは、いつの間にやら警棒をどこかへ片付け、両手にシャキンとライトソードを生成しました。


 実はこのライトソード、魔力を練り上げて作るような代物で、体のどこにでも生成出来るうえ、練習次第で形も自由自在です。ただし、変身しないと出せません。ラビットマンは少し短めの剣を両手に生成して使うことが多いです。


「てやっ! ていっ!!」


 スパスパッ!!!


 ラビットマンが近くのマジパン・ダルマをライトソードで切りつけると、面白いようにスパスパと切り裂いてしまいました。


「おおっ! 気持ちよく切れるぞ! こいつら魔王軍だったんだな」

「だから、言ったじゃない。ってか、摩幻結界に入っているんだから、魔王軍に決まってるでしょ」


「えっ? ここって摩幻結界だったの?」

「そこも気付いてなかったの? 竹藪で魔王軍の存在を感じていたんじゃないの?」


「あー……」


 どうやら、ラビットマンは、このマジパンワールドが摩幻結界だということにも気づいていなかったようです。竹藪の中で嫌な感じを感じていたこともすっかり頭の中から消えてしまっていたようで、ナノリアに指摘されても何もいえません。


 摩幻結界とは、魔王軍が使う特殊な結界で、魔王軍に有利な地形やギミックを作り出したり魔王軍の力を大幅に向上させたりすると言われています。その特徴から現実世界とは離れた異空間を作り出しているのではないかとされています。


「えーっと、なんだ、とにかくあのゆるキャラパンダを倒してしまえばいいんだな」

「まぁ、そういうことね」


「行っくぞー!!!」

「頑張って、ラビットマン!」


 相手が魔王軍で、ここが摩幻結界だと気付かなかったことが少し恥ずかしかったようですが、ラビットマンは気を取り直してマージ・パンダーを倒すため、邪魔なマジパン戦士達へ向けて再び駆け出しました。


「ガパパパパパ、多少は腕が立つようだマジぃ。だが、この数を1人で倒しきるなど不可能マジぃ、数の暴力に押しつぶされるマジぃ!!」


 ラビットマンが突撃体制に入るのを見て、マージ・パンダーは飛んで火にいる夏の虫と言わんばかりに大笑いしています。


「とりゃぁ!! はっ、ほっ、はっ、はっ……」

「マジぃ!?」


 ラビットマンは、マジパン戦士達を前に大きくジャンプすると、鎧姿のマジパン戦士に混じっている雪だるま型のマジパン・ダルマの頭を踏み台にして、次々とジャンプして行きます。それを目の当たりにしたマージ・パンダー目ん玉を飛び出して驚きの声を上げました。


「ガパパ! マジパン戦士達よ、槍で串刺しにするマジぃ!!」


 マージ・パンダ―が慌てて叫ぶと、マジパン戦士達の持つ剣が槍に変わり、マジパン・ダルマに生えた腕も槍の形に変わって、一斉に空へ向けて突き上げました。このままでは、ラビットマンは串刺しになってしまいます。


「シールド!!」


 ラビットマンが叫ぶと、マジパン戦士達が突き上げる槍の上に、下向きに大きな半透明のシールドが展開されました。ラビットマンは、自らが張ったシールドを足場に再び大きくジャンプしました。


「マジぃ!! ガパパ!? 信じられないマジぃ!!」


 マージ・パンダーが、ラビットマンの奇想天外な行動に驚きの声を上げている間にもラビットマンは、次々とシールドを展開してぴょんぴょんとうさぎのように跳ねていきます。


 そして、ラビットマンは、マジパン戦士達の集団を突破して着地すると、一気にマージ・パンダーへと襲い掛かります。


「うおおおおおおぉぉぉぉ!!!」

「ガパ!? マジパンシールド!!」


 ラビットマンが、雄たけびを上げながらライトソードを大きく振り上げて襲い掛かると、マージ・パンダーは素早く腕に丸いシールドを生み出して防御を固めます。


 スパッ!!


 しかし、ラビットマンのライトソードは、マジパンシールドごとマージ・パンダーの腕を切り飛ばしてしまいました。


「マージぃぃぃ!!???」


 スパッ!!


 腕を切り飛ばされて、マージ・パンダーは目ん玉を飛び出して驚愕の叫びを上げましたが、すぐにラビットマンのライトソードが返す刀でマージ・パンダーの首を刎ね飛ばしました。


「よっしゃぁ! ボスキャラ討伐!!」


 くるりと振り返り、マージ・パンダーの首が地面にドサリと落ちたのを確認したラビットマンは、ライトソードをビュンと振って、大きな声で勝利を叫ぶのでした。

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