第10話 催眠攻撃の効果
マジパンワールドに入り込んだラビットマン達は、マージ・パンダーと名乗るゆるキャラパンダが率いるマジパン・ダルマ達と戦いになりました。そして、強力な睡眠効果のある甘い息を浴びて、ラビットマンは焦りを募らせるのでした。
「く、くそう、どうしたらいいんだ……」
ラビットマンは、マジパン・ダルマを相手に戦いながら、焦りを顔に滲ませて呟きました。打開策が思いつかないようです。
「ガパパパパ、そろそろ眠くなってきたマジぃ? 」
「まだまだぁ!!」
「ガパパパパ、我慢しなくていいマジぃ」
「まだまだぁ!!」
「ガパ……。そろそろ寝てもいいはずマジぃ……」
「まだまだぁ!!」
なかなか眠りに落ちずに頑張るラビットマンをみて、時間と共にマジパン・ダルマの声に勢いが無くなってきました。
「ガパパ……。まだ眠らないとは、おかしいマジぃ。こうなれば、もう一度、超強力濃厚甘い息を吐くマジぃ。 くらうマジぃ!!!」
マージ・パンダーは、再び甘い息を吐き出しました。強烈な甘い香りがマジパンワールドに広がります。
「ガパパパパ、これで、お前達は確実に眠りに落ちること間違いないマジぃ!」
超強力濃厚甘い息を吐き終えたマージ・パンダ―は、高笑いをしながら自信たっぷりに叫びました。
「うわっ、なんだこのにおい!?」
「甘いっていうか、これはもう悪臭ね」
ラビットマンは強烈な臭いに顔を歪め、ナノリアは、顔を顰めて鼻をつまんでしまいました。
少し離れて村人を守るように戦っているアキラも無言で顔を顰めています。どうやらアキラは鼻で呼吸をしないようにしているみたいです。
「ガパパ? お前ら、なんで眠らないマジぃ!?」
眠りに落ちることも無く、顔を顰めながら戦うラビットマン達をみて、マージ・パンダーは目を見開いて驚いてしまいました。
「そう言えば、全然眠くならないな。どうしてだ?」
ラビットマンも戦いながら全然眠気が襲ってこないことに疑問を持ったようです。
「ラビットマンって、結構おバカなのね」
「なっ!? バカって、酷くね?」
「いーい? 変身したその体は、スライムの中だって平気なのよ。催眠ガスなんか効くわけないじゃない」
「あれ? そうなの?」
ラビットマンに変身した体には、睡眠ガスであるマージ・パンダーの甘い息は効かないようです。同じように、変身した姿のナノリアとアキラも平気です。
ラビットマンに変身すると、スライムの中に入っても全然平気でした。スライムといえば、その体液で生き物をドロドロに溶かしてしまう恐ろしい魔物で、熟練ハンターでもなるべく避けて通るほどの強敵です。
普通はスライムの体液に触れてしまうだけでダメージを受けてしまうのですが、不思議なことにラビットマンは全然平気なのです。スライムの中だと呼吸も出来ないはずなのですが、変身した姿では全く問題なかったりします。
「ガパパ……、甘い息が効かないのなら、数で攻めるマジぃ。出でよ! マジパン戦士達! 寄ってたかって袋叩きにするマジぃ!!」
少し焦ったようすのマージ・パンダーが、両腕をくるくると回すと、ラビットマン達の周りの地面が盛り上がりました。そして、みるみる形を変えて鎧の戦士の姿になって固まりました。
「あれ? ちょっと強そうな敵が……、って、この数やばいんじゃね?」
ラビットマンが、マジパン・ダルマの1体を倒して、マジパン戦士を視野に捕らえるも、その数の多さに額に汗を滲ませます。
「これじゃ、切りがないわね。こういう時は、とっとと頭を潰すのよ! さぁ、ラビットマン、や~っておしまい!!」
「つまり、狙いはあそこのパンダってことだな。ようし!」
ナノリアのアドバイスに、ラビットマンは、後ろでふんぞり返っているマージ・パンダーに狙いを定めました。
「うおおおぉぉぉぉ!!!!」
ラビットマンは、雄たけびを上げながらマジパン戦士達の攻撃を躱しつつ、その間をすり抜けるようにマージ・パンダーへと向かって駆けてゆきます。
「ガパパパパ、威勢のいい奴だマジぃ。しかし、そこまでマジぃ。出でよ! マジパン戦士、追加マジぃ!!」
マージ・パンダーが、高笑いしながら、両腕を高らかと上げると、マージ・パンダーの前方の地面がうねり、無数のマジパン戦士やマジパン・ダルマがもこもこと現れました。なぜか、犬や猫なども入り混じっているのはご愛嬌でしょうか。
「なんじゃありゃー!!! あんな数、どうにもなんねーぞ!」
行く手に現れたマジパン戦士達は、地面を覆いつくさんばかりの数で、あまりの数の暴力に、ラビットマンは叫んでしまいました。
「ガパパパパ、この数を1人で切り抜けられるわけがないマジぃ。マジパン戦士達の波に飲み込まれるといいマジぃ!」
小高い丘の上から見下ろす形で、マージ・パンダーが高笑いします。
マジパン戦士達は、移動速度はそれほどでもないですが、隊列を組んでラビットマンへ向かってじわじわと詰めてきます。
「ちくしょう、あんなのに飲み込まれたら、さすがに持たないぞ……」
周りのマジパン・ダルマの攻撃を躱しつつ、警棒でマジパン・ダルマを殴りつけながら、ラビットマンは迫りくるマジパン戦士達へ視線を向けて焦りの言葉を零すのでした。
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