第2話 フェアリーナイツ

 魔王軍の兵士共を殲滅したあと、駿助達『フェアリーナイツ』は、助けた人達を近くの村まで護衛することになりました。


 フェアリーナイツは、駿助、アキラ、レイモン、ナノリアが作ったハンターパーティーで、アキラをリーダーとしています。


 旅人に見えた人達は、医者と看護師、そしてその護衛の人達で、この辺りの村を定期的に巡回しているそうです。今回、魔王軍の襲撃を受けた時に護衛の1人が足に重傷を負ってしまったため、急遽フェアリーナイツに護衛を依頼してきたのです。


 フェアリーナイツの面々は、特に急ぎの用事があった訳でもなく、怪我人を連れた医者たちが、再び魔物や魔王軍に襲われては大変だろうということで護衛を引き受けたのでした。


 眼鏡をかけた壮年の医者が怪我人の治療を終えると、足を怪我して歩くのもままならない護衛の為に簡易タンカを作って一行は村へと向かって出発しました。


「いやぁ、助かりました。まさか魔王軍の襲撃に遭うとは思いませんでしたよ。助けて貰ったばかりか護衛まで引き受けてくれて、本当にありがとう」


 歩きながら軽く自己紹介をしたあと、ギルバートという医者の男が改めて礼を言ってきました。


「この辺りは、よく通るのですか?」

「ええ、この先の村にも定期的に医療巡回しています。ですが、今まで魔王軍が現れたことはありませんでした。しかも、あんな大軍が襲って来るなんて、思い出しただけでも身震いがしますよ」


 駿助が軽く尋ねると、ギルバートは気さくに答えてくれました。なかなか人当たりが良いお医者さんです。


「ここらだと、せいぜい猪の魔獣が出るくらいだったからね。それなら私らだけでも余裕で追い払えたんだがねぇ」


 大剣を背にしたマリエルという名の女性が、ギルバートに続いて、今までならば問題なかったと肩を竦めて話してくれました。マリエルは、装備も含めて女性剣士に見えますが、本職は看護師だといいます。薬の知識もあり、ギルバートの指示で治療薬を調合したりもするそうです。


「それは、また、災難だったっすね」

「あんたらのおかげで命拾いしたんだ。感謝してるよ」


 アキラの言葉に、マリエルは、にっこり笑って感謝を述べるのでした。


「それにしても、君達は強かったね。魔王軍の兵士達を次々と倒していたのだから大したもんだよ」

「もしかして、あんたら1級ハンターかい?」


 ギルバートが、先ほどの戦いを思い返すようにフェアリーナイツの面々の強さを称えると、続けてマリエルが駿助達のハンター階級を尋ねてきました。


「いやいや、自分は3級っす」

「俺も3級です」

「見習いです」

「こないだ登録したばっかりよ」


 アキラ、駿助、レイモン、ナノリアの順に、フェアリーナイツのメンバーは、自分のハンター等級を答えました。登録したてのナノリアは4級ハンターです。


「うそだろ!? あんなに強くて3級ってことはないだろ!?」

「ハンターカードを確認するっすか?」


 驚くマリエルに、アキラがハンターカードを提示すると、それに倣って駿助達もハンターカードを取り出してみせました。


「ほんとに3級だよ。ってか、見習いに4級って……。なんの冗談だよ……」


 マリエルは、ハンターカードに記された等級をまじまじと確認して、信じられないとばかりに頭を抱えてしまいました。


 ハンターは、上から1級~4級に階級分けされていて、昇級試験に合格すると上の階級に上がれます。登録したばかりのハンターは4級となりますが、3級へ上がる試験は弱い魔物と戦えるだけの戦闘力があればすぐに合格できるレベルですので、実質的には1級、2級、3級の3階級となっています。


 ちなみに、見習いハンターは、成人年齢の15歳に満たない未成年が特例として認められた場合にのみ与えられる階級で、フェアリーナイツの中では、レイモンがこれに該当しています。


「うちの護衛もハンター登録していたと思うけど、たしか2級だったはず」

「「「うん、うん」」」


 ギルバートが、思い出すようにして連れている護衛のハンター等級を2級だと言うと、護衛メンバーが揃いも揃ってうんうんと大きく頷きました。


 護衛は傭兵ギルドを通して雇うのが一般的で、傭兵ギルドに登録するためには、だいたいハンター2級程度のレベルが必要とされています。


 だからでしょうか、経験を積んだハンターが2級へ昇級した後に、傭兵ギルドへ登録する者が多いのです。なので、マリオンやギルバート達が驚くのも無理はありませんでした。

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