うわさのラビットマン!

すずしろ ホワイト ラーディッシュ

第1章 ラビットマン参上!!

第1話 ラビットマン参上!

「駿助、駿助ぇ、なんか追いかけられてる人達がいるわよ」

「なんだって!?」


 フェアリーのナノリアが、木の上から木々の向こう側に見つけた人達のことを伝えると、駿助は驚いた顔でタタッと忍者のように木の上へ登って行き、ナノリアが示す方角を確認します。


 見れば、川沿いの細い道を走る5人の人達がいて、多数の仮面を着けた兵士達が追いかけているようでした。


「うわっ! あれって魔王軍じゃないか!?」


 仮面を着けた兵士達は、全身赤と黒の横縞模様の服を着ていて、一目で魔王軍の兵士だと分かりました。逃げている人達もそれなりの装備をしていますが、魔王軍の兵士の数が多くて逃げの一択のようすです。


 この世界には、魔王軍と名乗り、人々を襲う正体不明の集団が存在していて、奴らは倒すと魔石を残して消えてゆくことから魔物に近い存在だとされています。


 駿助は、素早く木から飛び降りると、近くで戦闘訓練をしている仲間のアキラとレイモンの方へ駆けて行きました。


「魔王軍が旅人を襲っているみたいだ! 助けに行こう!」


 駿助が大声で声を掛けると、アキラとレイモンは訓練の手を止め、互いに頷きあうと駆け出しました。


 駿助を先頭に、アキラとレイモンが続く形で森の中を猛スピードで駆け抜けます。


「どんな状況っすか?」

「旅人は5人で逃げています。魔王軍の兵士共がかなりの数で追っている感じです」


 アキラが駿助の隣に並び、走りながら状況を尋ねると、駿助は木の上から確認できたようすをざっくりと説明しました。


「駿助! もっとこっちよ!」

「ええっ!?」

「こっちこっち! この先を超えたら見えて来るわ!」


 上空を飛んでいたフェアリーのナノリアから、方向修正が入り、駿助達は少し軌道を修正して森を駆け抜けます。


 少し傾斜のきつくなった斜面をひょいひょいっと上り詰めると、魔王軍に追われる5人の旅人の姿が見えました。


「駿助! 練習の成果を見せるわよ!」

「ええっ!? ほんとにやるの!?」


「当たり前でしょ! さぁ、行くわよ!」

「くっ、仕方ない……」


 なにやら、ナノリアが、駿助に作戦?の指示をしたようですが、駿助は微妙な顔をしながらも、ごちゃごちゃ言っている暇は無いと腹をくくったようです。


「勇者ボディ、オン!」


 駿助が叫ぶと、彼の体が淡い光に包まれて一瞬のうちに変身しました。駿助には変身する能力があるのです。


 変身した姿は、ピッチリと体に密着した白いコスチューム姿で、胸に大きな可愛らしいうさぎのマークが目を引きます。そして、その頭にはうさ耳が生えてピコピコと動いています。


 変身した駿助は、そのままふわりと飛び上がり、木の枝を踏み台にして、さらに大きくジャンプをして森を抜けると、魔王軍の兵士達が密集する中へと飛び込んで行きました。


 魔王軍の兵士共は、追いかけていた旅人たちを取り囲んでいて、今にも襲い掛かろうとしていたところでした。


「てやっ!!」

「「「キーッ!?」」」


 魔王軍の意表を突く形で飛び込んだ駿助は、空中でくるりと回転すると、魔王軍の兵士へと強烈なキックを浴びせました。突然、現れた駿助の姿に、魔王軍の兵士達は驚きの声を上げて、駿助を囲むように距離をとりました。


「正義の味方、ラビットマン参上!!」

 シャキーン!


「魔王軍共、覚悟なさい!」

 シャキーン!


 駿助がラビットマンを名乗ってポーズを決めると、いつの間にやら変身していたナノリアが、続けざまに空中でポーズを決めました。変身したナノリアの姿は、真っ赤な衣装にうさ耳を生やした可愛らしい格好です。そして、練習の成果をお披露目できたからでしょうか、ナノリアはご満悦です。


 ラビットマンとナノリアのパフォーマンスを前にして、魔王軍の兵士達は、何故だか分かりませんがたじろいでいました。


「今よ! ラビットマン、や~っておしまい!」

「てやー!!」


 なんだかノリノリのナノリアが、うさ耳をぴこぴこ動かして、ラビットマンへビシッと指示を出すと、彼は両手にライトソードを出して、たじろぐ魔王軍の兵士共をスパスパと切り棄ててゆきました。




 一方、魔王軍の兵士に囲まれていた旅人たちは、ラビットマンが飛び込んできて暴れているのを好機ととらえたのでしょう、武器を振り回して反撃を始めました。


 そんな旅人達のところへ、アキラとレイモンが魔王軍の兵士共を蹴散らしながら近づいて行きます。アキラとレイモンも既に青色と緑色のコスチュームに変身しています。


「勝手に戦いに割り込んだっすけど、余計なお世話だったっすか?」

「いや、助かった。我々だけでは長くはもたなかっただろう」


「それは良かったっす。それじゃぁ、協力して魔王軍を蹴散らすっす」

「ああ、よろしく頼む!」


 アキラが、旅人たちの指揮を取っている女性剣士へと話しかけると、彼女は渡りに船とばかりに、アキラたちの助けを歓迎してくれました。


「そりゃぁ! 乱れ突きっす!!」

「てい、てい、てい!!」


 アキラの槍が、旅人たちの近くにいる魔王軍の兵士共を次々と串刺しにしてゆき、レイモンも短槍を巧みに操り奮戦します。


 ラビットマン達の活躍で、魔王軍の兵士共は、次々と砂のように崩れ落ち、魔石を残して消えてゆきます。あっという間に形勢を逆転してしまい、30を超えていた魔王軍の兵士共を全滅させてしまいました。

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