第34話:オマケ




「リズちゃんに会いたい」

 ウェントワース侯爵は、空の籠を前に呟いた。

 娘二人は嫁に行ってしまった。

 可愛い息子と妻が居るが、やはり動物モフモフとは別物なのだ。


「モフモフに癒されたい」

 ポツリと呟いた侯爵を、扉の向こう側から使用人達が見ていた。



 翌日、黒猫のぬいぐるみが籠の中に入っていた。

 本物の猫より大分小さい片手に乗るそれは、侯爵の机の上に置かれた。


 さらに数日後、大分本物らしくなったぬいぐるみが籠の中にあった。

 ほわほわの手触りのそれは、執務室のソファにクッションと共に置かれている。



 更に1ヶ月後。

 籠の中にピャーピャー鳴いている子猫が居た。

 黒猫ではなかったが、侯爵を見ても逃げなかった。


「この猫を飼うぞ!」

 侯爵は子猫を手に宣言をした。

『リズ』と違い、本当の猫は手間が掛かる。

 それでも侯爵は、幸せそうだった。


 やっと乳離れした程度の大きさの子猫は、実は使用人の家の庭に迷い込んで来たものだった。

 自分で育てるつもりだったのだが、一応籠の中へ入れてみたのだ。



 ぬいぐるみの猫達は、本物の猫の遊び相手になっている。

 いつか、猫と息子も仲良く遊べると良いな、と侯爵は頬を緩めた。




────────────────

これにて本当の終了です。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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私は猫である─悪役令嬢の飼い猫に転生しました─ 仲村 嘉高 @y_nakamura

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