第30話:その後の三人 1
ご意見・ご感想ありがとうございます!
これ以上の意図的ざまぁはありませんが、その後の三人をお送りいたします。
まぁ、いつも通りですね!
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ドリアーヌ・マルリアーヴ。
マルリアーヴ伯爵令嬢になった元平民。
自分を誘拐した育ての母を恨みもせず、弔おうとした優しい娘と評判になったが、何の事は無い、実の母だったという落ちが付いた。
婚約者のいる男と平気で
ジョナタン・ジョフロワ。
ジョフロワ公爵家嫡男であり、才色兼備な完璧淑女を捨て、全てにおいて劣っている妹を選んだ男。
その理由は、おそらく男の自尊心だろうと影で馬鹿にされている。
その証拠に、公の場では婚約者に娼婦のようなドレスを着せる性癖がある。
ティファニー・ウェントワース。
ウェントワース侯爵令嬢。
姉と婚約していた公爵子息を、親友と協力して寝とった女。
しかし彼女と婚約した途端に公爵家が衰退した為に、不運の女神や貧乏神という不名誉なあだ名が付いている。
「何よこれ。人の不幸を面白可笑しく書いてんじゃないわよ!」
ドリーは読んでいた新聞を床に投げ捨て、グリグリと踏みつける。
新聞には、今話題の貴族が絵姿付きで紹介されていた。
他の貴族は写実的な絵なのに対し、ドリーやティファニーはどこかコミカルに手が加えられていた。
「うるさいぞ!ドリー!!」
ソファに寝転び、安酒を飲みながらジョナタンが叫ぶ。
「ドリーじゃなくてドリアーヌよ!」
ドリーが叫び返す。
平民だった時の名前で呼ばれるのが嫌なのか、ドリアーヌと呼ばないと必ず訂正をする。
愛称として認めれば良いのに、と二人のやり取りを遠くから見ていたティファニーは、溜め息を吐き出す。
結婚してそろそろ5年。婚約期間を入れると8年が経っていた。
姉シャーロットの婚約者の時はとても格好良く見えていたジョナタンは、ただの爵位だけの驕った人間だった。
ティファニーの実家のウェントワース侯爵家からの支援は一切無い。
「縁を切らないだけマシだと思え」
結婚式当日に父親に言われ、母親には子育てを理由に結婚式の参加すら断られた。
「実の娘なのに!」
泣いて訴えたら、両親に「実の姉を陥れたのは誰だ」と言われ、ティファニーは何も言えなくなった。
姉に虐められていた訳でも、両親の愛情が偏っていた訳でも、使用人に差別されていた訳でも無い。
ただ一方的に、ティファニーが姉に劣等感を持っていただけだった。
自分より優秀な姉が、婚約者に
ティファニーの選んだ下品で娼婦のようなドレスを、婚約者からの贈り物だと思い込んで着て、そのせいで周りから馬鹿にされ、ジョナタンに
そしてそれら全てを仕組んだのが自分だという優越感。
ティファニーは目の前に置かれた小箱を眺めた。
小さなクズダイヤがはめられたイヤリングである。
まだ平民だったドリーが、街でジョナタンと婚約者の為に選んだ物だ。
「こんなの、売っても二束三文だわ」
この時にドリーが買って貰ったピンクダイアモンドは、その場で買える最高級品だった。
姉の手に渡ると思っていたので笑って聞いていたが、その後すぐに婚約者がティファニーに変更になったので、その時のイヤリングがティファニーの物になったのだ。
他人事ならば笑い話だが、それが自分の身に降り掛かってくると話は変わる。
ティファニーは正妻として、ドリーを第二夫人に迎える事は了承したが、公爵家の夫人としての権限は一切許可しなかった。
ドリーは公爵家の金も権力も使えない。
それに対しては、義父であるジョフロワ公爵も同意していた。
「また酔っ払っているのか!」
出掛けていたジョフロワ公爵はソファの上で酒を飲んでいるジョナタンを見て、怒鳴りつける。
「お前のせいで公爵家が……」
「うるせぇ!」
いつもの公爵の小言が始まろうとした時、ジョナタンは持っていた酒瓶を投げつけた。
酔っていて気が大きくなっていたのだろう。
「ギャッ!」
頭に瓶が直撃したジョフロワ公爵は、受け身も取らずに床に倒れた。
そのまま動かず、床に血溜まりが広がっていく。
「きゃああぁぁぁあああぁぁぁぁ!!」
公爵の1番近くに居たティファニーは、屋敷中に響き渡る悲鳴を上げた。
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