第12話、密林の王

「ねえ、レイン」

「何?」

「えっと、此処って密林みつりんだよね?」

「うん、そうだね。実際じっさいにたくさんの木がえているし密林で合ってるね」

「そうだね、けど僕はさっきから不思議ふしぎに思っている事があるんだけど」

「うん、たぶん私も同じ事を思っているだろうけど。一応聞いてみても良い?」

「…………何で、密林の動物達が皆僕達にひれしているの?」

 そう、この会話かいわからも分かるだろうけど。今、僕達の目の前には密林の動物達が一斉にひれ伏して頭を地面じめんにこすり付けていた。

 なんだろう?どうして、こんなにたくさんの動物達が僕達にひれ伏しているんだろうか?とりあえず、いてみよう。

「……えっと、其処の一番大きなおさるさん?どうしてみんなひれ伏しているの?」

「…………キィ。えっとあの、どうかおこらないでくださいますか?」

「うん、怒らないからおしえてくれないかな?」

 そう言うと、僕より一回ひとまわりくらい大きなさるはほっと一息つくと頭を上げた。

 すると、おずおずと僕というよりもレインをちらちら見ながら言った。

「そちらのお嬢さん、どうやらとても強いおちからをお持ちのようで。その力に全員ひれ伏したというわけでして…………ひぃっ!」

 猿の言葉に、レインが僅かに不機嫌ふきげんな表情になる。その表情の変化を見てしまった猿は一瞬で恐怖に顔を引きらせる。どうも、僕達にこわがっていたんじゃなくレインに恐怖していたみたい。

 けど、こまった。こんな状況じゃまともに密林でらせない。僕としては、密林の動物達とも仲良くしたいと思っているんだけど。

「……ねえ、お猿さん。僕達はこの密林でらしたいと思っているんだ。だから、密林の皆とはもっと仲良なかよくしたいと思うんだけど」

「キィ……分かりました。今日より貴方様がこの密林のおうという事ですね?」

「いや、ちがうけど。もっと仲良く対等たいとうな関係で行こうよ?」

「キィ、そうは言われましても。この密林の獣達は全員既に貴方様方に屈服くっぷくしておりますが?」

「え~?」

 周囲まわりを見てみる。すると、動物達全員が僕達に頭を地面にけ深々と屈服を示していた。いや、どうして?

 う~ん、どうして皆はこうもかたいのかな?もっと気楽に行こうよ?

「えっと、もっと同じ密林に住む者同士対等に出来できない?」

「……キィ、どうかわたくしどもをこまらせないでください。わたくしども自然を生きる獣にとって、唯一のほうは弱肉強食なのです。其処におられる強きお方と共にあらせられる貴方が王になっていただかねばわたくしどもは恐怖きょうふで死んでしまいます」

「う~……」

 困った。本気で困った。こうも言われたら、どうも僕はよわい。流石に死なれたら困るし、何よりもこの動物達は皆レインを本気でおそれているっぽい?

 それに、これ以上僕がねばって動物達を困らせたら本気でレインが怒りそう。多分だけど、レインが怒ってこの動物達を本気でなぐりにいくんじゃないかな?

 どうか、それだけはめて欲しい。

「……じゃあ、せめてこうはしない?少しの間、僕達がこの密林でレイン達と一緒に暮らすからそれを君達は見定みさだめて欲しい。それで、君達が僕達を認めてくれたらこの密林で本格的にごす事にするよ。代わりに、どうしてもレインが怖いなら僕達はこの密林を揃って出ていくよ」

「キィ、それは本気ほんきですか……?」

「うん、本気だよ?」

 僕の言葉に、猿はしばらくかんがえ込む。そして、他の動物達とまたしばらく話し合った後に僕へとき合う。

「……キィ、かりました。貴方の提案ていあんを受け入れましょう」

 そう言って、猿は頭を深々とげた。

 レインは少し不満そうだったけど、それでも僕に考えに文句もんくはないみたいだ。けどまあ、僕は後でレインにあやまっておく事にした。

 まあ、一人で勝手かってに決めた事は謝らないとね?

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