第1話、レインとレイ

 ……僕の名前なまえはレイ、孤児院に引き取られてから約三年の時が過ぎた。僕は三歳になり、今は孤児院の一室で皆と一緒にあそんでいる。

 というより、もみくちゃにされている?

「レイくん、いっしょにおままごとしましょう?」

「そんなことよりレイ、おれといっしょにひーろーごっこしようぜ!」

「え~?わたしといっしょにおままごとするの!」

「おれといっしょにあそぶんだって!」

 中々の人気者にんきものだと、僕自身思っている。どうしてこうなったんだろうか?分からないけど、前世ぜんせからこんな感じだった気がする。

 そう、僕は転生者てんせいしゃだ。それも、異世界転生という奴だ。僕は、以前地球にある日本という国から転生を果たした。とは言っても、別に非業ひごうの死を遂げた訳でも俗にいう神様の手違てちがいで死んだ訳でもない。

 ただ、駅のホームから転落てんらくしかけた友達を助けたら自分が転落しただけだ。もちろんドジなのは理解している。そもそも、どうして僕は異世界に転生出来たのか?

 僕を転生させたのは、神様のはからいだ。けど、その神様の思惑を僕は理解している訳ではない。ただ、異世界で転生させてくれるというからそれにおうじただけ。本当にただそれだけの話だった。

 何も特別とくべつな事はない、筈だ。うん、そう思う。

「みんなおちついてよ。うでをひっぱられたらいたいって!」

「あ、ごめん」

「ごめんなさい」

「いいよ。みんなでいっしょにあそぼう?」

 そうやって、僕は皆と一緒に遊ぶのが何時もの日常にちじょうだった。けど、そんな中に一切混ざらないでつまらなそうな顔で僕を見ている子が一人居た。

 レインだ。以前はよく一緒に遊んだものだけど、何故なぜか最近は一緒に遊ばなくなり一人で遊ぶ事が多くなった。ていうより、つまらなそうに僕達をみている事が多いと思う。一体どうしたんだろう?

「ねえ、そこでなにをしてるの?レインもいっしょにあそぼうよ」

「……………………」

 少し、レインは悲しそうというかさみしそうな顔をして去っていく。僕は、そんな彼女を不思議ふしぎそうな顔で見ている事しか出来なかった。

 ……しばらく、他の子と遊んでいると院長があわてて部屋に入ってきた。何をそんなに慌てているのだろう?そう思っていると、僕達に院長は息もえ絶えで聞いた。

「ねえ、貴方達レインを知らない?さっきから姿すがたを見ていないのよ!」

「え~?しらなーい!」

「ぼくもしらなーい!」

 他の子たちは皆知らないと口々にげる。そういえば、僕もあれからレインを見ていないな?そう思い、院長に聞いてみた。

「えっと?いんちょうせんせいはレインを見てないの?」

「え、ええ。さっきからレインだけ居ないのよ。一体何処に行ったのかしら?」

「ちょっとさがしてくる」

 言って、僕はそのまま走り出した。院長が慌ててめるが、部屋の外へそのまま出ていく。

 けど、孤児院の外へ出た所で僕は一人の男性につかまった。この国の国王陛下だ。

 何故、此処に国王陛下が居るのか?陛下へいかはフリーダムなのだ。何時も孤児院に来ては宰相さいしょうの人がれ戻しに来る。宰相の人、最近胃薬を常備しだしたらしい?

「おいおい、あぶないじゃないか?孤児院の外は危ないぞ。さっさと戻りなさい」

「へいか~、レインをみてない?」

「レイン?レインがどうかしたのか?」

 陛下が怪訝けげんな顔で聞いてくる。其処に、院長が慌てて走ってきた。とはいえ院長はあんまりはやくない。だからこそ、子供の僕でも簡単かんたんに院を出る事が出来たのだけど。

 ちなみに、どうやら陛下は院長がきらしい。秘密ひみつにしているようだけど。

「はぁ……はぁっ……い、意外と速いわね」

「えー?いんちょうせんせいがおそいんだよ」

「ぐっ、と……所で陛下がどうして此処ここに?」

「む?い、いや別に。様子を見に来ただけだが……」

「そうですか?いえ、それよりレインを見ませんでしたか?さっきから全く姿を見ないんですよ」

 院長のその言葉に、陛下は顔色を一瞬でえた。どうやら状況をさっしたらしい。

 陛下は院長に詳しい話を聞いている。とはいえ、僕もそんなに待っている訳にもいかないから。なんとかけ出そうともがいた。

「む、おいあばれるな!」

「う~、えいっ!」

「ぬおっ!」

 そのまま陛下の手から脱出だっしゅつし、そのまま走りる。背後から慌てた声が聞こえるけど僕は気にせず走り去る。

 王都の一角にある小さな公園こうえん。其処は、以前僕達が院長にれられ遊んだ場所だ。

 僕とレインのお気に入りの遊び場だった。其処に、レインはつまらなそうに立ちつくしていた。やっぱり此処にた。

「れいん、みつけた!」

 にっこり、満面の笑みでレインに呼びかける。びっくりして、レインがこちらを向いた。けど、僕には関係ない。僕はそのままてとてととレインに向かって走る。そのままレインを捕まえられれば、きっと格好良かっこうよかったんだけど?

 僕は格好悪くつまずいてこけた。

「いてっ‼」

「れ、れー⁉だいじょうぶ?」

「えへへ、だいじょうぶだよ。それよりレインつかまえた」

 そう言って、僕はレインの足をつかまえた。それでも、レインは心配そうに僕を見ている。まあ、あれだけ盛大にころべばそうもなるだろう。

 けど、関係ない。僕はにっこりとレインに笑みを向けながら、レインに僕の気持ちを伝える。きっと、今回レインが孤児院を脱走したのは僕が原因だろうから。きっとレインはさみしかったのだろう。

 そう思い、僕はレインにつたえる。

「レイン、いっしょにあそぼう?ぼくはレインといっしょにあそびたい」

「けど、みんなといっしょにあそんだほうがたのしいんじゃ?」

 レインがそう言うのを、僕は首を横に振って否定ひていした。

「ちがうよ?ぼくはレインともいっしょにあそびたいんだよ。レインといっしょにあそぶのがぼくはだいすきなんだ」

「っ‼」

 レインは、僕の言葉に一瞬泣きそうになる。それを何とか寸ででこらえたのか、僕に背を向ける。

 けど、やっぱり僕はレインと一緒に遊びたいからそんなレインにもう一度言う。

「レインといっしょだからたのしいんだ。レインといっしょじゃなきゃいや」

「れーは、わたしがどこかべつのばしょにいったらどうするの?」

 それはきっと、レインの出生しゅっせいと関係しているのだろう。以前、院長が他の職員と話しているのをこっそり聞いた事がある。レインはまれが特殊なんだって。レインは今は両親の許で暮らせない。けど、何れ親が迎えに来るって。

 その時、レインも一緒に聞いていた。きっと、その事を気にしているんだ。

「じゃあ、ぼくもいっしょにレインについていくよ。ずっと、レインといっしょ。レインはめいわく?」

「っ⁉ううん、わたしもれーといっしょにいたい。ずっと、れーといっしょだよ」

「うん、ずっとずっとぼくはレインといっしょだから。いっしょにあそぼう!」

 と、その時遠くから院長が僕達をびかける声が聞こえてきた。どうやら陛下も一緒に居るらしい。陛下へいかが居るせいか、少しとおりがざわついてきている?

 思わず、僕とレインは同時に笑みをこぼした。

「かえろうか、れー」

「うんっ、いっしょにかえろう?」

 そう言って、僕とレインは一緒に院長のもとに走っていった。僕とレインの姿を見付けた院長はきそうになりながらも強く抱き締めた。

 抱き締めながら、僕とレインをしかりつけた。けど、叱りながらも院長が泣いているのが分かるから、僕もレインも共に苦笑くしょうするだけだった。

 ……以来、レインも一緒に遊ぶようになった。相変わらず、僕のまわりに子供は絶えなかった。けど、その中には以前と違ってレインも一緒いっしょに居た。

 皆で一緒に遊んだ。皆で一緒に遊ぶのが楽しかった。そんな日々ひびが続いた。

 けど、そんな日々もわりが近付いた。僕が孤児院に来て、五年目の一の月。

 一人の男性おとこが、少年と少女を一組連れて来た。その男性を、僕はっていた。

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