第19話 宣戦布告まで

 ネージュ国王のディアブルは会談の会場である再会館に、部下を5人引き連れて入ってきた。

 ディアブルを初めて見た俺の感想はというと、なんというか……、戦慄した。この言葉にしずらい雰囲気……。しかし、ディアブルを見た瞬間にただものではないという直感は働いた。

 実際、ただものではなかった。そう、ただものではないのである。しかし、このことを知るのはもう少し後になってからであった。


 ディアブルは着席するなり、足をテーブルの上に置いた。一国の王との会談で、開始そうそうこの横暴っぷりにはさすがに笑いそうになってしまったが……。

「久しぶりやな。元気か? 」

 ディアブルとヴェリテ王が旧知の仲であることは事前に伝えられていた。実際どれほどの関わりがあったのか、詳しいことは知らないが二人は昔馴染みらしい。

「お前も元気そうで何よりだよ」

「なんて、与太話をしに来たんじゃねぇよな」

 ディアブルは、おそらくいつもこのような感じで自分のペースに持って行こうとしているのだろうと、今の会話からだけでも容易に想像がついた。

「そうだな……。こちらからの要件はひとつ。我が国の第二王女暗殺計画を指示したのはお前かどうかを聞きに来たのだ」

 ヴェリテ王はさっそく本題に入った。

 ここから先は、もう何が起こってもおかしくはない。俺は再度気を引き締めた。

「仮に俺が指揮していたことが判明して、貴様はどうするんだ? 」

 質問を質問で返すなよ……。

「私が聞いているのだ。計画を指示したのは貴様かと? 」

 ヴェリテ王も一歩も引かない。



「そうだ。俺だ」

 ディアブルは意外にも、あっさりと認めた。

「だが俺が先の暗殺計画の首謀者だったとして、どうするのだ? 」

 ディアブルはむしろ開き直った様子で話を続けてくる。

 ヴェリテは何も言わず席を立った。

 この場を後にしようと出口に向かおうとする。

「また、連絡は後日する。宣戦布告の連絡をな」

 この言葉に俺たち護衛は心底驚いた。

 まずい、というのが正直な感想か……。

 だが、ヴェリテ王の表情はこの空間にいる誰よりも真剣であった。

 これが、一国の王の決断か……。重すぎるな……。俺には到底できそうにない。


「待てよ」

 ディアブルも席を立ち、こちらに歩み寄って来た。。

「お前たち、ここから無事に帰れると思っているのかよ? 」

 まあ、当然そのようなふっかけ方になるよな……。

 なんせ、この部屋の外にはディアブルの部下が500人程度存在する。

 だが、「貴様の部下が何人いようと関係ない。もしワシと戦闘をしたいのなら、後十倍は引き連れてくるべきだったな」と我らの王は言うだけであった。

 ヴェリテ王は静かに歩き出す。


 そして俺たちがこの場を後にしようとした時であった。

「それでお前」

 ディアブルはここで俺に話しかけてきた。

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