第18話 約束の破棄
俺はヴェリテ王とともに、会談の会場へと向かっていた。馬に乗って、先陣を切るのはヴェリテ王。その後ろをヴェリテ王の第一騎士であり、俺のこの世界での父親でもあるアトラスが走る。
この二人以外に結局ヴェリテ王は、俺を含めて三人しか護衛を連れてこなかった。俺、デトロワとメテオールである。この二人もまた、王族の護衛を務める一族出身であるが、俺やアトラスとはまた別の一族出身である。
デトロワは、なんというか……、いけすかないやつっていうのが率直な感想だった。髪は全体的に長く、後ろで結んでいる。無愛想というか、愛嬌がないというか……。俺はデトロワを何度か見たことあったし、なんなら何度か話したこともあったが、一度も笑っているところを見たことがないというのが実情であった。
今日も相変わらず無表情だな……。
一方、もう一人のメテオールはデトロワとはまた対照的な性格をしている。陽気。この一言に尽きる。いつもヘラヘラしていて、楽観主義者という言葉がお似合いの男だった。
俺がメテオールと話した時はずっとニコニコしていて、随分と話しやすかった。メテオールのような人間は、どの世界に行っても愛されるんだろうなぁーと、そう感じさせるやつだった。
メテオールはずっとデトロワに話しかけているが、デトロワの態度は
だからであろうか、メテオールは俺に話しかけてくるようになった。
「なあなあ、エクラって言ったっけ? 最近どんな女の子と遊んだ? 」
なんだこの品のない会話は……。てかなんでメテオールはそんなこと気になってるんだよ……。
「別に誰とも遊んでいませんが……」
そして俺の返事がまごうことなき事実、というのもひとつ問題であった。
「なんだよ……。俺たち割と良い位にいるから、遊ぼうと思ったら結構遊べるんだぜ」
知らねぇよ。てか、なんだよその露骨に自分の立場を使っていく嫌な奴の戦い方はよ……。なんで、こんな適当な奴が王族の護衛になってるんだか……。
「あまりこの男の話を真に受けない方がいいぞ」
こんな話をしていると、珍しくデトロワの方から話しかけてきた。俺たちのくだらない会話に痺れを切らしただろうか……。
「こいつはこんなふざけたことを言っているが、奥さんがいる」
は!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!
「しかも愛妻家だ」
まじ、このメテオールなんでこの話題を俺に振ってきたんだよ……。
◆
会談が行われる会場には、俺たちの方が先に着いた。約束の時間まで残り20分。果たしてネージュ国御一行は時間通りに来るのだろうか……?
「ヴェリテ様、本当にこのような少数精鋭で向かわれてよかったのでしょうか? 」
アトラスがヴェリテに尋ねた内容は、俺も気になっていたことだった。
いくら約束で護衛が10人までと言われているからって、ここまで人数を絞らなくても良かっただろうに……。せめて10人いっぱいいっぱい連れてきた方が少しは安心できたと思うが。
「心配ご無用。今日は別にディアブルと争いにきたわけではない。話に来ただけだ。それに万が一のことがあったら、ここにいる4人が守ってくれるんじゃろ? 」
王のこの最後の一言は、私たちのことを心の底から信頼しているからこそ出た発言であろう。だからこそこの一言を言われたここにいる護衛たちの士気は最大限上昇したし、俺ですら武者震いした。
さすがに一国の王は士気の上げ方をよくわかっている……。
「もちろんっすよー」
ふざけた態度で返事をしたのはメテオールだった。
いや、まじよく王様にその態度で接せられるよな……。ある意味尊敬するよ。
そんなことを思っていると、デトロワが不意に言った。
「来ました」
この時俺はなぜデトロワが室内にいるのにも関わらず、相手の到着がわかったのかを知る由もなかった。
そして最大の問題は他にあった。
「ヴェリテ様。この一団の数、おそらく300を超えています」
俺はこの言葉を聞いた時、一瞬頭が真っ白になった。情けない……。どんな時も冷静にいなければとは思うのだが、まだまだ経験が浅かったようだ。
メテオールはそんな俺の腕をつかんで、無理やり外に連れ出した。
俺とメテオールは会館の外に出て、その一団の規模を直接目にしたのである。
そしてメテオールが小さな声で言った。
「これは500以上はいるか……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます