第14話 回復の報せ
俺が目を覚ましたのは、エール本国の治癒室のベッドの上でであった。
目を覚まし、体を起こすと、横にはフェリシテ王女が、椅子に座ったまま寝ていた。
風邪でもひいたらどうするんだか……。
「フェリシテ様……。フェリシテ様! 」
俺の二回目の呼び声に、フェリシテは少し反応した。
目を擦りながらこちらを確認する。俺の顔に焦点が合ったのであろうか。俺の顔を確認するなり、フェリシテは驚きを隠せないまま俺に抱きついてきた。
「エクラ! エクラ…………。本当に良かった! 」
フェリシテの声は少し涙ぐんでいた。
それにしても、そんな強い力で抱きしめられると…………胸が当たる……。
おっと、いけない。
俺としたことが……。
もうまったく、なんていうか……、王女の胸が大きいとか、髪の匂いがいいとか、そういうことはまったく考えていない。俺はただ、王女が無事で良かったと、自分の仕事をまっとうできて良かったと、そんな感じのことしか考えていない。
「
生きてて良かった……ねぇ…………。
本当のところは、俺は一度死んでいる。先の戦闘でも、俺はある意味命の危険を顧みなかったと思う。もちろんそれは、充分に勝算があった、というのも一つの理由である。しかし、それに加えて一度死んだことがあるというのも大きな理由であったように思えた。
「本当に……無茶ばっかして…………。次、あんな無茶したら許さないんだから……」
「いやフェリシテ様、無茶なんてしてないですし……、というかあれが俺の仕事と言いますか……」
「うるさい……」
うるさいらしい……。
「フェリシテ様、そろそろ離れてくださっても大丈夫ですよ」
先ほどから、それなりに強い力で抱きしめられ続けている。正直、少し苦しい……。
まあ、豊満なボディを堪能できるのはうれs、失敬。またよからぬことを考えてしまった。
…………?
フェリシテの反応がない。
「フェリシテ様? 」
一呼吸置いて、フェリシテが答えた。
「もう少しだけ……」
◆
フェリシテによると、事の顛末は以下の通りであるらしい。
俺の詠唱、森羅万象でペストマスクの奴を含め、一撃で全滅。しかし、直後俺は気絶。
フェリシテは、俺と奴の戦闘が始まってすぐに、詠唱、以心伝心を使っていたらしい。エール本国の人間に事情を話し、応援の要求していたそうだ。
俺が気絶してからしばらく後、本国の応援が到着、保護に繋がったと言う。
この際確保されたエテルネルは現在、エール秘密警察管轄の牢獄に投獄されている。
俺は必要な手続きを済ませ、エテルネルが投獄されている部屋の前まで来ていた。
部屋は五畳ほどの部屋であり、ベッドの他に簡易的なトイレや洗面所、小さなテレビなどが置いてあった。
本来、王族暗殺の計画、実行はその未遂か否かに関わらず重罪である。そのため、本来ならば重要犯罪人専用で劣悪な環境の牢に収容されるらしい。しかし、フェリシテの意向で丁重に扱われている。
「久しぶり」
俺はドアについている目元が出るくらいの小さい覗き穴みたいなところから、エテルネルに声をかけた。
俺の声にエテルネルは少し驚いた様子であったが、挨拶を返してくれた。
俺は彼女の事情を知っている。もちろん、だからと言ってこの国が彼女を許すとは思わないが、なんとか死罪は避けられないかと考えていた。
面会時間は限られていたが、俺は少しエテルネルと話すことができた。また彼女は別れ際に「ありがとう……」と小さな声で言っていたのを俺は聞き逃さなかった。
さて、フェリシテに働きかけて、なんとかならないだろうか……
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