第6話 ネージュ会談 ①
俺は、第二王女であるフェリシテのネージュ会談に、当然ながらついていくことになった。隣国ネージュへは、フェリシテの他に、俺を含め九人の護衛がついている。俺が住んでいるエール国からネージュ国までは、馬でおよそ二週間の要する。もちろんフェリシテが馬に乗ることはなく、馬に引かれた車に乗っている。
およそ往路では問題が生じることもなく、順調に進んでいた。
「エクラー、お腹すいた。なんか食べ物ちょうだい」
一つ訂正しよう。ここに一人扱いづらい人物がいた。
「フェリシテ様、夕食の時間まで後わずかです。少々我慢なさってください」
「それよりエクラ、あんた今、失礼なこと考えていなかった? 」
「いえいえ、とんでもございません」
こっわ。
こんな感じで旅路は進んでいた。
◆
ネージュとの国境付近に到着すると、相手国の要人がわれわれの到着を待っていた。ネージュ国は大国であり、内陸国である。その面積は、エール国の実に五倍近くになる。また、ネージュ国もまた、エール国と同じく王国であった。そのため、国の運命のすべてが現国王に委ねられている。
「お待ちしておりました、フェリシテ様御一行。われわれについてきてください」
相手国の要人と思しき人物は、合計で五人であった。全員同じ黒のローブを着用し、フードを深く被っている。手には杖のようなものを携えている。
不思議な連中だ……。
しばらく歩くと大きな城下町が見えてきた。その城下町の中心地には巨大な建物が見える。おそらく、あそこに王族が居住しているのであろう。まだ城下町には距離があるが、その街と城が巨大なため、ここからでもよく見える。
そんなことを考えていた時だった。
俺たちの前を歩く、ネージュの要人二人が詠唱によって頭を射抜かれた。バタバタと倒れる。
俺はすぐ詠唱が飛んできた方を向く。
さっきの詠唱は、訓練でもよく見たものであった。威力からみても、詠唱のクオリティはε《イプシロン》ほどであろう。
「お前たち、北西方向に敵影あり。備えろ! 」
俺は他の護衛たちに声をかけた。
すると、「エクラ! 何があった? 」
そう言って、フェリシテが車から頭を出してきた。その瞬間だった。詠唱の語尾にχ《カイ》の言葉がチラッと聞こえたのは……。
まずい。クオリティχ《カイ》の詠唱はこの異世界でもトップ3に入る威力の詠唱だ。このままでは、ここらへん周囲300メートルは吹き飛ぶぞ……。
…………。とりあえず、やることやらないとか……。
「詠唱! 二律背反ψ《プサイ》」
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