第48話 摂津しとねは☆天才美少女☆
金髪ときたら碧眼と返歌するのが世の常だと思われているだろうが、わたしの瞳の色は灰色だ。間違えないでほしい。
お祖母ちゃんがフィンランド人で、わたしはいわゆるクォーターというやつだ。
「クォーターと言うといい気分がしない」とお祖母ちゃんは言うので、お祖母ちゃんの前ではそんなことを言わない。
っていうか、お祖母ちゃんの前で自分の遺伝子的な話なんてしないでしょ。
ちなみに、「おばあちゃん」と書いて漢字に変換すると「お祖母ちゃん」。「おそぼちゃん」じゃない。ズルズルいけちゃう感じがしてしまう。面倒なので、おばあちゃんと書くことにする。
と言いつつ、おばあちゃんの話題はこの先にはない。残念でした。
わたしはというと、一昨年に司法試験をパスした。
その時にマスコミがやって来てさんざんニュースにしていたから、知っている人も多いだろうと思う。
そりゃあ、そうだ。なんせわたしは☆天才美少女☆なんだから。☆で囲んでもらえると嬉しい。わたしは☆が好きだから。光ってる感じがするでしょ。
わたしの天才エピソードは小学一年生の給食の時間に「あげパン」の文字を入れ替えると「パンゲア」になるという発見をしたところから始まる。
あんなに美味しいものが超大陸と化すなんて、まさに世界を統一する代物というわけだ。
そもそも、小一にしてパンゲアを知っているということがわたしの知識量を物語っているじゃないか?
たとえじいさんでも、折り目正しくても、バカだったとしても、実力さえあればいいらしい。だから、
わたしの服を脱がしたらその場でぶち殺すけどね。
なんやかんやあって、わたしも中学二年生で
根本的な話だが、
すごいと思ったなら、菓子折りを持って来るがいい。ちなみに、わたしはラングドシャが大好きだ。
中一で司法試験に受かったもんだから、またもやマスコミはわたしを視聴率の肥やしにするべくやって来た。なんせわたしは史上最年少で司法試験をパスした神童だからだ。
別の不合格者はわたしのニュースを見てさぞかし震動していただろう。畏怖という意味で。もし、自分だったら~なんて夢物語を枕にしてるんじゃないかな。
司法試験に受かった時期と
安心しなさい、わたしが教えて進ぜよう。
試験に合格しなければ
あ~、変わり者と言うと嫉妬に駆られた皆さんから楚もびっくりの総攻撃を受けると聞いたので訂正する。謹んで
わたしには理解できんが。だって、給料の差がめっちゃあるから。
そういう意味でいえば、
もし見かけたら、すぐに家に帰って粗塩をたっぷり入れた湯船に浸かった方がいいよ、マジで。
何が言いたいかっていうと、わたしにも嫉妬の矢が押し寄せてきたっていうこと。
頭が良くて才能に溢れていて、おまけに可愛いと来たら、尋常な精神を持っている人間は死にたくなるような比較を諦めて諸手を挙げて立ち去って行くものだけど、世の中には思っている以上に異常な精神の持ち主ばかりなのかも、とその時は思った。
そんな膿を抱えてる人間じゃ、いつまで経っても
なんせ
強くあれ。
たったそれだけ。
確か、なんとかっていう日本で最初の
だって、短すぎるし、シンプル過ぎて、シンプルだから逆に良いのだっていうのとは反対に行ってしまっているから。
それに、この五モーラ五音節のコミュニケーション不全だったんじゃないかと疑いたくなるような短文で、全ての変人──もとい、
ちなみに、モーラというのは
強くあれ。
シンプルなこの言葉が様々な解釈を生んでいて、それぞれの解釈が核になって真珠みたいにグループができていったらしい。それが派閥という七面倒過ぎて九面倒くらいまで進化したつまらない争いの火種に成長していった。
わたしはこの件について貝のように口を閉ざしたい。
で、わたしは協会の一番偉い人に言われたわけ──あなたには、派閥の壁を壊してこの協会をまとめ上げるべく
召命ってなんだよと思った人は、羨ましいことにわたしと同レベルだ。
どうやら、神に呼び出されたという意味らしい。その存在を証明できていないのに、召命されるんだと思ったものだ。
協会の一番偉い人──最初に会った時に名前を聞いたけど、ボソボソ喋っていて聞こえてなかったし、それ以来会っていないし、だから憶えていないんだけど、とにかくその人の思惑っていうのは、スローガンくらいシンプルだったとわたしは思っている。
わたしは世間の黒い目も白い目も集める存在だった。要は、日本全体がわたしと
そして、だから、わたしの目は灰色なんじゃないかって思った。わたしは
まさしく、それが召命ってやつだね。はい、
急にわたしが生まれる直前の話になるが、両親はわたしの名前を決めるのにずいぶんと手こずったみたいだった。
他と違う名前にしたいと思えば思うほど、アイディアをこねくり回して、結局スタートラインに戻って来るみたいな、小学生が作る最強の
双六だけに、アイディアは
しとねというのは、寝たり座ったりするところのことらしい。いわゆる古語というやつだ。
なぜこの名前になったのかというと、冒頭の約束を反故にしてしまって申し訳ないのだが、お祖母ちゃん──もといおばあちゃんの提案だったらしい。小言を繰り返して決めさせたわけではないだろうと思う、古語だけに。
なんでフィンランドのお嬢さまであるところのおばあちゃんが日本の古語を、と思うかもしれないが、どうやら日本文化に相当な憧れというか、
当時を振り返っておばあちゃん本人が言っていたのだから間違いない。
今でいう日本アゲみたいな番組の草分け的な存在だったのかもしれない、おばあちゃんは。──
とにかく、人の安寧の地であるようにという願いが込められたこの名前をわたしは気に入っている。
そんなわたしこと
もしこの段階で知っていたのだとすれば、あなたは協会に潜入するスパイの疑いがある。すぐに腹の皮を掻っ捌いて──いや、腹を割って話し合おうじゃないか。
それとも、最後まで読み終わってここに戻ってきたのか? ご苦労なことだ。お駄賃を596円弾んでやろう。
そんなつまらない冗談はここまでにして、協会は心底恐れていたわけなのだ。
野良にいる
でも、わたしは頑張るわたしが好きだから、今からもっとわたしを好きになろうと思う。
原状復帰の原則は常識だからみんな知っているだろう。知らない人間は小学校に編入したまえ。きっと死にたくなるぞ。
実のところ、原則解除は正式に認められている広告システムの一部だ。だが、
彼らの肩を持つわけじゃないが、美味しいものを独り占めしたいわけではないらしい。
なにせ原則解除すれば、広告を終了したとしても、発動された広告効果は卵に火を入れるのと同じように環境を不可逆的に変化させてしまうのだ。スマホゲームのモンスターが街を闊歩する世界なんて、エッグいだろう?
ちなみに、
もし明日わたしが死んだのなら、それは
わたしが何を言いたかったかというと、聞いたことがある人もいるかもしれないが、
それってオリジナルなのかって声が聞こえてきそうだ。わたしもそう思う。
協会のシステムでも原則解除はできる。
それなのに、協会は自分を棚に上げて
協会の言い分はこうである。
〝広告事件収束のため、他の機関のシステムに依存した体制は公平性を欠く〟
独り暮らししたいと夢見る中学生みたいなことを言っていると理解してもらって構わない。わたしが許可する。なんせわたしは
だからこそ、〝強くあれ〟ってことなのだ。
付け加えておくと、わたしは派閥に属さないでやってるんで夜露死苦。
話がわたしの話みたいにずいぶん逸れてしまったが、わたしの話だから当たり前か。
しかも、追加料金なし! ずるい! わたしにはできない! ☆天才美少女☆なのに!
今のところ、なぜそんなことが可能なのかは誰も分かっていない。だから、このこともホントは内緒のことなのだ。
それで、さっき言っていたわたしの重大な任務について、ついに話すことができる。
重大な任務? と思った者はわたしの話を聞いていない罰で596円を徴収する。
〝
書き下すのに短冊一枚あれば事足りる任務だが、どう考えてもそんなお湯をかけてちょっと待っていればいいみたいなお手軽さなんか微塵もないのだ。
わたしは知っている。
この任務を完遂することが、わたしの輝かしい未来へのファストパスなのだ、と。今でさえ輝かしいのだから、そんな未来に行ってしまったらサングラスが手放せなくなってしまう。きっとその時のわたしはサングラスに目がないのだろう。
わたしは知っている。
名前を思い出すどころか聞いた記憶もない協会の一番偉い人と対立する協会のナンバーツーのこれまた名前を憶えていないおっさん──わたしの脚をよく見ている──が、わたしの出世階段を大昔のコントみたいに滑り台に変えやがったのである。
というわけで、まあ、なんやかんやあって、わたしはマルダイフーズの
急に話をまとめ出したぞ、この女──そう思うのも無理はない。だが、心配ご無用、感無量。三四がなくて、
もうご存知のように、わたしは興が乗ってしまう。
だからなのだろう、もう今回のエピソードの分量を大きくオーバーしているらしい。
文章は味噌汁だ。脳味噌が溶け出している。
この☆天才美少女☆摂津しとねちゃんの脳にちょっとでも触れられて、あなたは幸運だ。羨ましい。
そういうわけで、また次回からわたしの活躍が続くので、楽しみにしておくように。
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