第24話 マッチョはスーツにグラサンが似合う

「参加を辞退されますか?今を逃したら誓約書の記述に従っていただきます。」


うーん…

命の危険があるかもしれないダンジョンで途中退室をするとライセンス剥奪…


ハードモードすぎる…が、


「参加します!」


逃げない。

夢のため、こんな試験逃げてたまるか!


というのは建前で実際は後ろにいるであろうマイさんに恥ずかしい姿を見せることができないからだ。


誓約書にサインをすると係の人に指示された扉を通る。


一応前もって試験会場の情報は確認しておいたが、それでも扉をくぐって中に入ると驚いてしまった。


会場は『幻の館』と呼ばれるダンジョンで25階まである中レベルダンジョン。


ダンジョン名に館とついているだけあって、中は今までのダンジョンと違いちゃんと部屋の中だと分かる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ダンジョン名:幻の館

・ダンジョンレベル25

・出現モンスター 

 ウィッチ      ランクC

 ファントムトム   ランクC

 アイアンゴーレム  ランクC

 ビックリドア    ランクC

 クイーンウィッチ  ランクB

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


出てくるモンスターも調べておいたが、全てCランク以上となっており、戦闘の辛さはこれまでの比ではない。


中でもウィッチやファントムトム、クイーンウィッチは、これまで使ってこられなかった魔法タイプの攻撃系スキルが使用される可能性がある。


もしかしたらモンスターの名前的にも幻術系スキルも使ってくるかもしれない。


正直こいつらと出会ったら逃げの一手か、一回倒してステータスを奪うか。

判断を間違えればただじゃあ済まないかもな。


アイアンゴーレムやビックリドアは物理系だと思うので大丈夫だと思いたい。


しかしリドアというモンスターがいるんだな。

初めて聞いた。


ビックリドアはリドアの巨大化バージョンなのだろうか。


そんなこんなで、しばらくダンジョンの一階層で待っていると次第に冒険者が揃い始めた。


しかし最初の人数より三分の一減っただろうか。

減った人たちはみんな辞退していったのだろう。


入り口の方からスーツを着た女性が1人、同じようにスーツを着た男性が10人やってきた。


連盟の試験官の人たちだ。

スーツ姿の女性はメガネをかけており、いかにも仕事できますと言わんばかりの風貌をしている。


「これより試験を開始いたします。試験の内容はお伝えしたように、このダンジョンのボス討伐です。試験中はこちらにいる10人の判定員があなた達の行動を監視します。不適切な行為や不正をしないようお願いします。」


判定員と言われた10人はみんなゴリマッチョ、スーツがパツパツになっている。

おまけにサングラスをつけているせいで、女性試験官が何かの組織のボスみたいに見えて笑える。


しかしそんなスーツ姿で動き回れるもんなのだろうか?


「このダンジョンは特殊で下へ降りる階段は毎日ランダムで生成されます。地図はお渡ししますが、あくまでこれは目安程度にお考えください。」


マッチョの1人が人数分の地図を持って配り始めた。


渡された地図はこれまでと比べようにならない枚数があった。


25階層まであるのだ、当然だよな。

でも邪魔だなぁ…


それを見ると確かに、普段は書いてあるはずの階段が描かれていない。


地図には間取りしか書かれていなかった。


「なお、この判定員は全員『擬態』のスキルを使いますので、受験生のみなさんの邪魔をすることはありません。存分に力を発揮して合格できるように頑張ってください。」


『擬態』!

『透明化』と同様に姿を消すスキルではあるが、違うのは点としては『擬態』には制限時間がない。


自身でスキルを解除するか、攻撃を受けるまで効果は続く。


また『透明化』のように完璧に体を消すのではなく、あくまで周囲に溶け込むだけなのも違いだ。


その後、試験官の女性から注意事項や細かい説明をされた。


モンスターを倒したときに出るアイテムは残しておいてくれーとか、事前に持ち込んだポーションの使用は許可するとかだった。


そしてあらかた話終わったところで、


「最後に…逃げ出すのは自由ですが、その場合冒険者としての覚悟がないとみなし、ライセンスの剥奪をしますのでご注意ください。しっかりとその辺も判定員が見ます。」


試験官の女性は誓約書に書かれていたことを念押してきた。


「かと言って、判定員は助けに入ることもないので自分たちで解決してください。」


つめてぇ…

命を何だとおもっているんだよぉ…


「それでは今から試験を開始いたします。よーい、始め!」


女性試験官が号令をかけると、10人のマッチョは見えなくなった。

冒険者達もマッチョに続くように走っていく。


始まった…

俺も負けてはいられない。


試験前は対して何も感じなかったが、ここにきて緊張からか、手足が若干震える。


この感じ、初めてリトルゴブリンと対峙した時を思い出す。


パチン!


自分の頬を平手打ちして、気合いを入れる。


よし、行こう。

俺の挑戦が今始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る