第22話 運も実力のうちってな
「どうだ?俺の特殊スキルしょぼいだろ?でもな、俺はその分成長性が高いから問題はない。」
全くと言って自分の特殊スキルについて嘆いていない。
むしろある意味、清々しい表情をしていやがる。
「それにな、どういうわけか成長性が高いやつはだいたい特殊スキルがしょぼいんだ。成長性B以上のやつの中には全くもって戦闘で使えない特殊スキルを身につけるやつがいるんだと。まぁ成長性が高いやつはそもそも特殊スキルに頼って冒険者をやっていないから関係ないんだけどな。」
自前の高いステータスと素早い成長で圧倒できるということなんだろうな。
特殊スキルに頼らずとも生きていけるんだろう。
「そうなのか…知らなかった。」
「とりあえず地上へ戻ろうぜ。俺はもうMPがカラだ。」
「そうだな。あっ、おいお前分かっているよな?」
「あぁ分かっているって、俺の負けだ。俺はあんたの舎弟になるよ。」
タイガはやれやれって言う顔をしている。
いやなんでお前がめんどくさそうな顔をしているんだ。
やれやれなのはこっちなんだが?
モンスターに囲まれて、泣きべそかいていたのは誰よ?
それを助けてやったのは誰よ?
「帰ったら最初にマイさんへ謝れ。」
「なんで?あの人には俺なんにもしていないだろうがよ。」
「忘れたとは言わせない。昨日マイさんをお前は殴ろうとした。重罪。」
「へいへい。」
こうして俺らは地上に戻ることにした。
ボスを倒した時、レベルアップできて本当によかった。
ボスを倒したことでモンスターの出現率は落ちているが、帰り用のMPがもつか怪しかったし。
今後は最低でも絶対5本ずつポーション買っておこう。
あのモンスターの大群だ、タイガもレベルアップをしていた。
流石は成長性B、伊達では無いようだ。
タイガにとってはウルルフ程度の雑魚モン難なく倒せるんだろうな。
そんな雑魚モンの経験値でもレベルアップできるんだからコスパ良すぎなんよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
換金所に戻るといるのはマイさんだけで他の冒険者は全くいなかった。
おかしいな、まだ朝早いとはいえこの時間帯であればチラホラと他の冒険者がダンジョンに潜り始めてもいいと思うんだが。
マイさんは何やら受付の人と口論しているようにも見える。
受付の人が俺たちに気がつくと、驚きながら安堵したような顔をしている。
マイさんも俺たちの存在に気づくと、ウサギの如く飛び跳ねながら、こちらに駆け寄ってくると泣きながら抱きついてきた。
「えっ、ちょっ、マイさん!?」
「良かったぁぁ!心配しましたぁぁ!私、今日フェス日だとは知らなくて、でも急いでトモヤさんに知らせようにも、ダンジョンに入ると電話も繋がらないしで…」
「フェス?あっフェス!今日フェスだったのか。どうりでモンスターの数が多いわけだ…」
フェス日とはモンスターが活性化する日のことを表している。
フェスには2パターン存在し、モンスターの数が増える日とモンスターの強さが上昇する日がある。
今回は前者だった。
モンスターの数が増える日は、どの階層でも最低2倍の量のモンスターが湧くようになり、最下層では10倍の量が湧くようになる。
モンスターの強さが上昇する日は、どの階層でもモンスターのステータスが2倍以上になり、最下層では4倍にもなる。
推奨ランクの冒険者より一つ上のランクの冒険者でもモンスターの物量に耐え切れなかったり、強化されたモンスターにやられて死ぬことがある。
この『狼の谷』の推奨ランクは銅なので、フェス発生中は銀の冒険者でも危ないレベル。
ちなみにフェスだからといってモンスターから取れるアイテムが良くなるわけでもない。
だからよっぽど自分の腕に自信のあるやつか、命知らずの阿呆しかダンジョンには入らない。
しかし不便なことに、このフェスはいつ起こるのかが分からない。
ダンジョンに一回潜って確認しなければフェスが起きているのか分からないのだ。
ランダムとはいえ、一応フェスが発生しやすい時間帯があり、それが夜中の3時〜4時の間。
安全のため、この間に換金所の受付の人がダンジョンに潜って調査をしている。
この間に発生しなければ、その日はフェスが起きないことが多い。
今日ももちろん調査はされていたのだが、今回は俺たちの運がなかったと言うしかない。
マイさんの話曰く、俺たちが入ってしばらくしてフェスが始まってしまったらしい。
俺たちの後から入っていった冒険者が異常な数のモンスターに襲われて、命からがら戻ってきたとのこと。
その後連盟からフェス発生の警告が出たので、このダンジョンは閑古鳥が鳴いている状態だったらしい。
「私、トモヤさん達を助けようとダンジョンに入ろうとしたんですけどランクが低いから、受付の人に危ないと止められて…だったら高ランクの冒険者を呼んで探してくださいとお願いしても、そんなにすぐには手配できないと言われて…私どうすればいいのか分からなくて。」
んんー!
そんなに俺のことを心配してくれていたなんて!
心配させたお詫びにマイさんを今日こそは寿司屋に連れていこう、そう決意した俺であった。
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