第19話 世の中は理不尽なことだらけ

「ふぅー、やっぱり1人でダンジョン潜るのって大変なんだな。」


マイさんの存在がここにきてとても恋しくなった。

やっぱり1人でモンスターの群れを相手するのはきつい。


パーティメンバーって大事なんだなと感じた。


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『私益世界』自動発動しました。

【使用回数0/12】【23:59】

※一度の戦闘で使用回数を超えるモンスターを討伐したため、『私益世界』はこれより24時間、時間による回復をしなくなります。


これによりステータスが上昇します。

対象:ウルルフ

HP +30  MP +15 

ATK+26  DEF+17  AGI+31 

INT+14  MD +10  DEX+12

LUK+1  SPI+5


対象:ウルルフ

HP +30  MP +15 

ATK+26  DEF+17  AGI+31 

INT+14  MD +10  DEX+12

LUK+1  SPI+5


対象:ウルルフ

HP +30  MP +15 

ATK+26  DEF+17  AGI+31 

INT+14  MD +10  DEX+12

LUK+1  SPI+5


対象:ウルルフ

HP +30  MP +15 

ATK+26  DEF+17  AGI+31 

INT+14  MD +10  DEX+12

LUK+1  SPI+5


獲得スキル:噛みつく×4

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理不尽!!

一度の戦闘で使用回数を超えたら24時間使えなくなるのは先に言ってよ…


ウルルフの群れは1つで1回の戦闘扱いか。


使用回数の隣に新しいタイマーがあった。


それ以外にも見慣れないものがある。


獲得スキルの欄に『噛みつく』と書いてあるが、これは一体なんだ?


かける4ってことか?

スキルはいくつかけても1つだろ。


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NAME:小林智也 Lv12

HP :384/384    MP:231/231

ATK:305  DEF:432   AGI:309

INT:150   MD:306   DEX:156

LUK:30   SPI:81   LER:G

特殊スキル:私益世界【使用回数0/12】

スキル  :咆哮 チェンジ 噛みつく 透明化

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自分のステータス画面を開いてもスキル欄に書いてある『噛みつく』は変化がなかった。


それにしても俺のステータスは見違えるほど強くなったな。


本来ステータスは次のレベルに上がるまで、何をしていたかによって伸び方は変化する。


前線で近接戦闘ばかりしていると、HPやATK、DEFやAGIの伸びが良くなる。


逆にスキルを使って遠距離戦闘をしているとMPやINT、DEXの伸びが良くなる。


一方で味方に強化系スキルを使ったり、相手に幻術系スキルを使ったりしているとMDやLUK、SPIが伸びやすくなる。


今のステータスを見る限りだと、俺のステータスはだいぶ脳筋寄りになったなと思う。


ただ俺は『私益世界』でモンスターさえ選べば、満遍なくステータスを上昇させることができる。


これは本当に強い。


今俺の顔を誰かに見られると十中八九キモいと言われるだろう。

それくらい顔がニヤついている。


さぁ早く下の階層に行って、タイガに追いつかないと…


俺は立ち上がり、下への階段を目指して移動する。


しかし移動をするとすぐにウルルフの群れが現れる。


階段を降りても現れる。


「あぁ、鬱陶しいなぁ!まぁ邪魔するなら蹴散らすまで!!」


新調した斧のおかげでウルルフの群れは簡単に処理できるのだがどうもおかしい。


1つの群れに対して、ウルルフの数が明らかに多い。


どの群れも4匹や5匹とかではない。

8匹や9匹、しまいには10匹の群れが出てきた。


まだここ3階だぞ?

前来た時はウルルフの数が増える4階層でもこんなに多くなかった。


何かが変だと思ったが下を目指すことにした。


ここまで来たんだ、このままおめおめ帰ってしまっては勝負に負けて、マイさんがあの野郎とデートしてしまう。


だけど流石にずっとこの数のウルルフを相手し続けるのは無理がある。


そうやって悩んでいると前方にウルルフの群れがいるのを確認した。


群れのいる所を通らなければ階段へと進まない。

でも進むと戦闘をしてしまって、時間をとられる。


「んー、どうしたものか…あっ!あれ使ってみよう!透明化発動!」


俺はつい自分のスキルを忘れてしまう。

うっかりしていた、これを使えば見つからずに済むじゃないか。


スキルを発動させると、ゆっくりと俺の体はメタルスライムのように消えていった。


おぉ、本当に透明になった!

と喜んだのも束の間、素早く下への階段を目指す。


なんたって効果時間は40秒しかない。

連発が効くスキルでもないので急ぐ。


頼む、気がつくなよ?

足音を立てないように静かに群れの前を通る。


「ぷはっ!怖かったぁ…」


効果が切れる前に、なんとか気づかれず群れの前を通り抜けることに成功した。


どうやら犬や狼のように鼻が利くわけではないようで助かった。


鼻が利くやつらであれば、1発で俺の存在がバレるだろう。


だって今汗くさいんだもん…


こうして俺はMPを節約しながら、『透明化』を活用して最下層まで辿り着くことができたが、せっかくのMP回復ポーションも使い果たしてしまった。


正直こころもとない…

ケチるんじゃなくてもっと多めにポーション買っておけばよかったよ。


「「「ワンワン!ワンワン!」」」


突如ウルルフの鳴き声が聞こえ、身構えたが俺の周りにはいなかった。


鳴き声の元へ向かうとそこにはタイガが1人で何十匹ものウルルフに囲まれていた。


中にはさっきまで見かけなかったキングもいた。


「ふざけんなぁよぉぉお!おかしいだろがぁ!こんな数ぅぅぅ!くそがよぉぉぉ!」


タイガに向かって一斉に何匹ものウルルフが襲いかかっている。


タイガは上手く攻撃をかわし、ウルルフを一撃で倒してはいるものの、次から次へと湧いてくるウルルフ達にジリジリと詰め寄られている。


そして体力が切れ始めているのか、次第にウルルフの攻撃が当たり始めていた。


ウルルフによって噛みつかれていて、タイガの体は傷だらけになっている。


「異常だろぉ!捌ききれねぇよぉぉぉ!」


タイガは泣いていた。


涙を流し、ウルルフによって血まみれになっているタイガの姿はまるで昔、動画に撮られた時の俺のようだった。


とうとうタイガは膝を、肘をついてしまった。


そんなタイガを無情にもウルルフは襲いかかる。


気がつくと俺の体は動いていた。

囲まれているタイガの所へ飛び込み、タイガに噛みつこうとしていたウルルフを切っていた。


「ギャウン!?」


「キャンキャン!」


「ったく、人にイキっていた割には情けない涙流すなよ。ほら、俺も手伝うから立て。」


「お前…すまねぇぇ、すまねぇぇ。」


タイガは腕で目をこすりながら泣いている。


「ほらもう泣くのやめて、俺を手伝えよ。デカい図体しているくせに。俺も1人じゃ捌ききれねぇよ。」


「おう、悪かった…」


そういうとタイガは立ち上がった。

2人なら必ず切り抜けられる、そうタイガに言おうした瞬間


「グラォォォォ!」


けたたましい叫び声が聞こえてきた。


今の叫び声…ウルルフやキングではないよな。

ってことは、こんなタイミングで!?


冗談だろ!?最悪すぎんだろ!!


「ごめん、やっぱり無理かも。」


目の前にボスモンスターが現れた。



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