第17話 一期一会の出会いを大切に

「いやいや待ってくれよ、マイさん。どうしてあんな約束したんだよ。」


勝負の内容は『狼の谷』のモンスターを狩り、制限時間10時間以内に戻ってくる。

その後アイテムの換金を行い、金額が高かった方の勝ちとなった。


「お前は鉄の冒険者だもんな。俺はそんな格下のヤツをイジメる趣味はない。そっちは2人でいいぜ。俺は1人でダンジョンに潜る。」


と余裕をかましていた。


「いいんです!あんなやつに負けないように頑張りましょう!」


いや、マイさん負けた時何されるかわからんのよ?

なんで被害者のマイさんが1番好戦的なんだよ…


「ウジウジしてないでコンビニでおにぎりでも買ったら、装備探しに行きますよ!」


もう夜の7時20分になっていたが俺の武器を探すことになった。

あーあ、せっかく寿司の口になっていたのに。


まぁ俺もバカにされたままは嫌だったので、マイさんの後ろをついていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


装備屋に着いたのは夜の8時過ぎだった。


マイさんにつれられたのは古臭い店で、おっちゃん店主がレジ前でテレビを見ながら座っていた。


時折眠そうにあくびをしている。


この店で大丈夫か?と思ったのだが、マイさん曰く、こういう店の方が意外と掘り出し物が見つかるとのことだった。


実際中に入って装備を見ると確かに良い物が揃っている。


しかも値段は相場より若干安めだった。


しかしそれでも高いのは違いないんだけどね…


試しにダンジョン産のやつも見てみたが、安くなっているとはいえ、それでも目が眩む値段をしていた。


やっぱり1万程度の安物で我慢しないとダメかな…


なんて思っていると一本の片手斧を見つけた。

端っこの方で誰にもバレぬよう、息を潜めているように感じた。


その斧をじっくりと見てみると、刃の部分は綺麗な翠色と小紫をしている。


値札にはダンジョン産の証である宝箱のマークがついていた。


お値段はなんと驚きの2万円!

ダンジョン産の武器としては破格の安さだった。


「うわっ!トモヤさん、これめちゃくちゃ安いですね!ダンジョン産の武器なのにどうしてなんでしょうか?」


「綺麗だろ、それ。でもなお嬢ちゃんそれはハズレだ。売る気もないんだ。騙されて仕入れちまったゴミさ。」


声の主はこの店の店主だった。


「ハズレとはどういうことでしょうか?ダンジョン産の武器であればスキルがエンチャントされているはず。スキルがエンチャントされているだけでも相当の価値があるのでは?」


「そのエンチャントされとるスキルが問題なんだよ。」


店主はテレビを消して立ち上がると、松葉杖をつきながら俺たち2人のもとへやってきた。

右足がなかった。


「お嬢ちゃんよ、これは持ち主と共に成長する武器なんです。って言われたどう思う?」


「すごいなと思います。強いなと思います。」


「俺もな、最初はそう思ったから仕入れちまった。が、実際は大間違いだった。この斧はな、使えるもんが最初から決まっているんだ。お嬢ちゃん、ちょっとこれ持ってみな。」


言われた通りマイさんは斧を持ち上げようとするが、一切持ち上がらない。


「えっ、なんで!?ううううう」


マイさんが女性であることを加味してもこれくらいの斧であれば容易く持ち上げられるはず。


見た目はそこまで重量があるようには見えないが、実際は違うのだろうか?


しばらく持ち上げようと格闘していたが、結局マイさんは1ミリも浮かせることができなかった。


「重たい…こんな重たい斧誰も使えないですよ。」


「そう、これがこの武器のスキル。成長性がGでないやつは持ち上げることすらままならないんだ。」


そう言うと店主は1枚の紙を渡してくれた。

そこには鑑定によるこの斧のスキル内容が書かれていた。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

スキル:ヘビー・オア・ラブ

LER値がGではない者が所持しようとした時、武器の重量が20倍になる。

この武器を使って戦闘をしている間、持ち主のATKを0.5倍した値をこの武器のATKに加算する。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

ATK:10

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「この斧の推定重量は10キロで20倍は200キロ。こんなの誰が使うっていうんだ。」


店主は笑いながら語る。


「成長性Gの冒険者自体そもそもいないし、Gの冒険者がこれを持ったところで、ステータスが低いから斧の攻撃力は全く上がらない。オマケにこの斧の攻撃力はゴブリンの棍棒と同じで弱い。要するにゴミだ!まぁ見た目だけは綺麗だし、移動させるのも大変だからそこに置いているけど。」


一通り話を聞いて俺は成長性がGであることに感謝した。


この斧、俺専用の武器になるためにあるじゃん…


「僕これ買います!」


「いやあんちゃんよ、さっきの話とその紙の内容見たのか…って、はぁあーーー!?」


俺はヒョイと斧を持ち上げた。

おっちゃん店主は目をまん丸にさせて驚いている。


「驚いた…あんちゃん、もしかして成長性ゴミ…いやごめんよ。Gだったのか…」


「はい!これ気に入ったんで貰っていきますね!」


「トモヤさんよかったですね!無事武器が見つかって!」


俺はそんな唖然としている店主に構わず、店主の手にお代の2万円を置いた。

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