第16話 ダメ、絶対
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スキル:透明化 消費MP:60
自分の体を40秒間、透明化させる。
攻撃やスキルによりダメージを与えられた場合、効果は解除される。
また自分で攻撃やスキルを発動させた場合も効果は解除される。
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40秒って意外と短いな。
消費MPも60と少しお高め。
しかも攻撃をくらうと解除、攻撃をしても解除か。
でもまぁ不意打ちを狙ったり、どうしようもなくて逃げるッ!て時は使えるか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺とマイさんはしばらく休憩した後、地上を目指して出発した。
本当はボスも探したかったが、剣がないと闘いもままならない。
一応、拳で殴って闘う武道家スタイルも試したが性に合わなかった。
かといってずっとスキルの『噛みつく』を使うの嫌だ。
メタルの時はどうしようもなくて、恥を捨ててまで使ったがウルルフ相手に噛みつきたくない。
帰り道に出てきたウルルフは全てマイさんの威力倍増スラッシュで片付けてもらった。
「やっぱり攻撃力が上がったのでスラッシュの威力も上がってます!前は8倍スラッシュでしたが、今は4倍のスラッシュでも十分ウルルフの群れを殲滅させれます!」
と嬉しそうにしていた。
レベルアップするとHPやMPは一応全回復はするのだが、疲労までは取れない。
体が鉛のようだ。
アイテムバックもウルルフから取れた牙とクリスタルが大量に入っていて重たい。
しかもぶっ続けで戦闘や探索していたもんだから昼飯を食べていないので腹も減った…
地上はすでに太陽が落ちかけていた。
ポケットのスマホで時間を確認すると18時になっている。
「もうこんな時間か…」
換金所内は俺らと同じようにダンジョンから帰ってきた人で溢れていた。
受付には行列ができている。
「うへぇー…さっさとすませたかったんだけどな…」
換金をすませたらウマい飯でも食べよう。
焼肉…いや寿司にしよう。
少し前、SNSで高校生の通称ペロロン君16歳が醤油ボトルを舐めた動画をあげて炎上してから、行くのを控えていたけど久々に行ってみようかな。
「マイさん近場にある寿司屋に行きません?」
「いいですね!ぜひ行きましょ!」
ということで寿司屋デート(仮)が決定した、はずだった…
受付への行列に並んでいると、後ろからいきなり肩を組まれた。
「誰!?」
そこには知らないガタイのいい、身長は180後半はある男がいた。
「俺も混ぜてくれよ〜!お前のこと知ってるよ。動画見たぜ。万年新人のGさんだよな?まさかこんな可愛い子連れてるなんてなぁ」
動画、あのことか…
リナさんに頼んで消してもらったのにまだ残っていたとはな。
やっぱりデジタルタトゥーは消せないか。
「あのー、どちら様でしょう?」
マイさんの顔からは困惑という文字が書いてあるのが見える。
「初めまして〜。俺は
どうやら俺より2つも冒険者ランクが上らしい。
そして正真正銘の成長性Bの人だった。
「トモヤさんから離れてください!動画ってなんですか?それに万年爺とはなんでしょう?」
「あはは!爺じゃないよ、G!ABCDのG!え?あの動画見たことない?成長性がゴミのくせに一丁前に冒険者ずらしてて、リトルゴブリン1匹ごときに苦戦しているやつの動画。血だけじゃなく、惨めにも涙も流しているぜ?それがコイツなんだ。」
ケラケラと笑いながら俺を指さしてくる。
「そんなはずない!トモヤさんは成長性がGなんかじゃないです!Bです!」
「あんた騙されてるよ〜。いるよなー、女の子に相手してもらいたいからって成長性で見栄を張るやつ。え〜と待ってな。おっ、これこれ。ほらコイツだろ。」
タイガがスマホを取り出して一つの動画を流し始めた。
「そんな、信じな…え…」
そこには約1年半前、冒険者になりたての俺の情けない姿が写っている。
今でも覚えている。
俺と同じ新米の冒険者の中に鑑定系のスキルを持っていたやつがいた。
稀ではあるがレベル1でもスキルをもっているやつはいる。
俺を盗撮したやつはたまたま初めから持っていた鑑定スキルで人のステータスを晒し動画を撮り、SNSで拡散しやがった。
俺の動画が出回っているのに気がついたのは動画が拡散されて2日後。
やけに換金所のエントランスでチラチラ顔を見られるなと思ったらリナさんから慌てた顔で呼び出され、事の顛末を知った。
すぐに連盟経由で動画は削除、動画投稿者もライセンス剥奪という処分を下された。
しかし思いの外動画は多くの人に見られており、俺はことが冷めるまで肩身の狭い思いをした。
まだレベル3だった俺はステータスもオール3だった。
そんな絶対に冒険者に向いていないやつが、一生懸命涙を流しながら戦っているのは他の人からすれば滑稽な物だったのだろう。
成長性がゴミだとネタにしやすい。
それくらい成長性が低いのはバカにもされやすいのだ。
「なっ、こんなやつより俺と飯行こうぜ。良い店知ってんだ。」
マイさんは動画を見終わった後、下を向いて黙っていたが、鬼の形相で
「仮に成長性がGでも私はトモヤさんとご飯が食べたいです!あなたのような下劣な方は嫌だ。」
意外な解答だった。
タイガは面食らっている。
マイさんがこんな顔をするとは思っていなかったので俺も面を食らった。
「は?こんな魅力もなんもないやつのどこが良いんだよ。しかもコイツは鉄の冒険者。こんなやつとつるんでいたらいい思いしないぜ?銀の俺についてきな?」
「結構です!ほらトモヤさん、受付が空いたようです。行きましょ!」
マイさんはタイガを無視して受付へと向かう。
タイガはプルプル怒りで震えている。
「ふざけんなよ!このクソ女!」
「きゃあ!」
そういうとマイさんを殴りかかろうとした。
「チェンジ!」
彼女に拳が当たる寸前でなんとか俺は入れ替わりガードすることができた。
メタルから高い防御力を奪ったが、それでも拳をガードした手が少し痛い。
一応、銀の冒険者らしい攻撃力だった。
「ふざけているのはどっちだ馬鹿野郎!女性を背後から殴る男がどこにいるんだよ!!」
「はぁ!?何のスキルだ、それ!邪魔するんじゃねぇ!ゴミ虫が!」
しばらく、やいやい言い合っていたが埒があかなかった。
後ろで俺らの言い合いを見ていたマイさんだったが、とうとう痺れを切らせて
「うるさぁーいッ!もういいッ!分かった!勝負よ!アナタがトモヤさんに勝てたらご飯でもなんでもデートしてあげる。ただしトモヤさんが勝ったら、トモヤさんの舎弟になりなさい!」
うそーーーん!
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