第12話 見栄を張っちゃうのは男のサガ
カゲロウが消えた後、俺は気絶しているマイさんと遺品を抱えながらダンジョンを出た。
ユウジさんが昨夜質問してきたフードの不審者はきっとカゲロウのことなのだろう。
ユウジさんにはカゲロウが襲ってきたことを丁寧に話した。
しかし、いくら問い詰めてもユウジさんはまだ話すことができないの一点張り。
喋ってはくれなかった。
マイさんはお腹に打撲ができたが、命には別状なかった。
そしてゴブリンパラダイスは調査をするということで、しばらく閉鎖されることになった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日、俺はマイさんにカフェに呼び出されて一緒潜るダンジョンを探していた。
どうやらあの一件で気に入られたらしい。
男としては可愛い女の子とお茶できるだけでもありがたいのに、ダンジョンでも一緒にさせてもらえるとは…
いいことをするもんだな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇検索内容 銅冒険者 半径20km圏内
ヒットした件数 5
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検索内容が銅冒険者となっているのはマイさんが
「トモヤさんならいけます!私もトモヤさんと一緒であればきっと大丈夫です!」
と言うからだ。
遭難といい、ギャングとの遭遇といい、カゲロウの腹パンといい、メンタルやられてないかな?と思っていたがその心配はいらなそうだ。
「あ、ここなんてどうでしょう?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ダンジョン名:狼の谷
・ダンジョンレベル6
・出現モンスター
ウルルフ ランクE
ウルルフキング ランクC
・レアモンスター
メタルスライム ランクD
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「ここメタル出るんだ。」
「ここにしましょう!私もっとレベル上げて強くなりたいです!」
メタルスライムは倒すと経験値が大量に貰える。
故にメタルが出現するダンジョンは超人気だ。
そういうところは人が集まる。
自分達が見つける前に他の人が狩ってしまう可能性の方が高い。
しかも出てくるモンスターはランクが少し高い。
俺はともかくマイさんのステータスでは厳しいに決まっている。
危ないと説明したが、マイさんは早く強くなりたい、ここがいいですと聞かなかった。
「どうしてそんなに強くなることに固執しているの?」
俺の質問に彼女は頭を下に向け固まってしまった。
「…稼ぐためです。消えた母が作った借金を返済するために少しでも家にお金を入れたいんです。えへへ、お恥ずかしい!」
マイさんはすぐに頭を上げ、満面の笑みを浮かべていたが、俺にはそれは振り絞ってだした笑顔にしか見えなかった。
「トモヤさんはなぜ冒険者をしているんですか?」
「ん?僕?僕は夢を叶えるためです。」
「夢ですか?」
「日本三大ダンジョンの制覇です。」
日本三大ダンジョン、これはまだ誰も最下層まで行ったことのないダンジョンのことを指す。
この3つのダンジョンレベルは80以上とされており、今も完全攻略に向けて高ランクの冒険者が挑み続けている。
三大ダンジョンは静岡、広島、鹿児島に1つずつ存在する。
三大ダンジョンの周りは多くの冒険者が集まり、今の日本で栄えている街は東京や大阪ではなく、この3県となっている。
「トモヤさんならいけますよ。なんたって成長性Bなんですから!」
「う、うん。で、できたらいいね〜」
ステータスを偽っていることがバレた時は素直に謝ろう…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ダンジョン『狼の谷』は結構人がいた。
ゴブリンパラダイスや門出の比にならない。
冒険者の格もなんかこう…言葉に表すことができないが違っている。
全身鉄の鎧…憧れるなぁ、あれお高いやつでしょ。
うわ〜あっちの人の剣とか二代目藤岳シリーズじゃん、かっけぇ…
それに比べて俺の装備はこのボロの剣とアイテムバックのみ。
とても貧相。
だが!こんな男だらけの場所で、可愛い女の子を連れているのは俺だけなんだ。
それで張り合おう。
さっさと受付を済ませてダンジョンに入る。
案の定、鉄の冒険者はやめておきなさいと忠告されたがフル無視してきた。
中に入ると見事な渓谷があった。
話によると渓谷はずっと下まで続いており、全てのフロアをぶち抜いて最深部の6階層まで真っ直ぐ一直線。
落ちれば命はない。
このダンジョンはモンスターと戦闘より渓谷から落ちて命を落とす冒険者の方が多いらしい。
俺が渓谷を恐る恐る覗いていたら、後ろから突如腕を引っ張られた。
「さっ!トモヤさん、早く行きましょう!」
しばらく下の階層に向けて歩いていると初めてここのモンスターと出会った。
「「ワンワン!」」
犬のような可愛い鳴き声をあげているが容姿は狼を少し大きくした感じで全く可愛くない。
ウルルフの群れ…4匹いる。
キングがいないのは嬉しい。
初戦でキングありは勘弁してくれと思っていたから助かった。
ウルルフは単体ではなんともないが、脅威なのはその団結力。
ゴブリンの群れとは連携力が全く違うと聞く。
まず1匹目が飛びかかってきた。
スピードはあるが、やはり単体だとなんてことない。
「うおぉぉぉぉ!!」
「キャイン!」
ウルルフの体は簡単に切り裂けた。
…流石に簡単すぎじゃね?
何かおかしい。
このウルルフわざとやられにきたような感じがする。
ゴブリンと同様にウルルフは霧となり爆散する。
げ!こいつわざと俺の目の前でやられたな!
霧のせいで周りがよく見えない!
急いで霧をかきわけ、視界を晴らすも既に猛スピードで2匹目、3匹目が両サイドから、4匹目が正面から一斉に攻撃を仕掛けていた。
まじ?味方の死んだ時に出る霧による撹乱!?
1匹目がわざとやられたのも連携?
ちょっ、剣は一本なんですよー!?
1匹を斬りつけれても残りの2匹の鋭い牙が俺をミンチにするだろう。
やべぇ…
「スラッシュ!」
「「「ギャウン!」」」
一つの斬撃が3匹まとめて直撃、全員一撃で倒した。
マイさんがスキルを使用して助けてくれたようだ。
え、強くね。
スラッシュってそこまで強いスキルじゃなかったよな?
マイさんは、やりました!と言う顔で俺の方へと駆けてきた。
「トモヤさん、チェンジをなんで使わなかったんですか?あれがあれば追い詰められても打開できるのに。」
あ…忘れてた。
「あっ!もしかして私を試したんですね〜?このダンジョンでも生きていけるのか。意地悪な人だな〜」
「う、うん。これならまぁ大丈夫かな。」
ぎこちない笑顔を見せる。
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『私益世界』自動発動しました。
【使用回数7/10 0:59】
これによりステータスが上昇します。
対象:ウルルフ
HP +30 MP +15
ATK+26 DEF+17 AGI+31
INT+14 MD +10 DEX+12
LUK+1 SPI+5
獲得スキル:噛みつく
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あれ?
ウルルフ4体倒したのに、ステータス奪えたのは1匹だけだな。
もしかして自分で直接倒さないと『私益世界』発動しない感じ?
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