第10話 説教はほどほどに
管理長の怒りの電話から20分後にミホさんはやってきた。
ドアを開け、第一声が
「申し訳ございません!!」
だった。
「申し訳ございませんで済むか!!第一謝る相手が違うだろうがぁ!!」
とユウジさんはキレていた。
正直被害者の俺がひいてしまうレベルだ。
でも実際に、渡さなければいけない地図を渡し忘れたことは行方不明者を連盟側が出したことに変わりはない。
俺はともかくマイさんは3日もそれでダンジョンを彷徨ってしまったわけだし、ユウジさんが本気で怒るのも無理はない。
説教は1時間くらい続き、ミホさんからの謝罪で俺は解放された。
ミホさんが説教されている間、俺は空気になることに徹していた。
家に帰れたのは夜中の11時だった。
お湯をためるつもりだったが早く寝たかったので諦めた。
また明日も事情を話してもらいたいから来て欲しいとのこと。
俺が管理長室にいた時、マイさんは医務室で軽く食事と休息をとり、病院へ行っていたらしい。
大したケガもなかったそうで、飢餓状態も食事をとったことで改善したようだ。
ようやく部屋のベットでぐったりとすることができたが、まだ寝てはいけない。
忘れてはならない。
俺のバックにはまだあれが入っている。
そう!宝箱!
正直ミホさんが説教されている時、開けたくて開けたくて仕方なかった。
期待と希望を胸に待ちに待った宝箱を開ける。
中身は…入っていなかった。
どうやら中身はスキルのようだ。
宝箱は中身を確認すると消えた。
急いで自分のステータス画面を確認する。
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NAME:小林智也 Lv10
HP :175/175 MP:70/70
ATK:131 DEF:109 AGI:84
INT:56 MD:53 DEX:73
LUK:22 SPI:45 LER:G
特殊スキル:私益世界【使用回数7/10 0:45】
スキル :咆哮 チェンジ
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「チェンジ?」
なんだその漫画に出てくる乳製品戦隊の隊長が使いそうなスキルは!
オラわっくわっくすっぞ!
興奮しながらスキルを確認する。
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スキル:チェンジ 消費MP:30
対象と位置を入れ替える。
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思っていた効果と違った。
つまらん。
「もらったぞ!その体ぁぁぁぁ!って言ってみたかったのに。」
でもまぁ効果はシンプルだけど強い。
何かに使えるだろう。
次の日、俺はユウジさんに言われた時間にゴブリンパラダイスへ向かった。
換金所の前でマイさんとばったり会った。
「おはようございます。ケガもなく元気そうで何よりです。」
笑顔で振り返ってくれた。
昨日は憔悴して顔色も悪く、髪もボサボサだったので気が付かなかったが、よく見ると顔立ちがすごく綺麗だった。
「おはようございます。でもただ…」
マイさんは何故か下を向いて黙ってしまった。
「ただ?」
「中に入ってから説明しますね。」
受付に着くと、また管理長室へ通された。
部屋のドアを開けると既に、ユウジさんとミホさんが並んで座っていた。
2人は俺たちが着いたのに気づくと立ち上がり頭を下げた。
マイさんと俺も座り話し合いが始まる。
まずユウジさんが最初に口を開いた。
「この度はうちの職員の重大なミスによりお二人を危険な目に合わせてしまったこと申し訳ございませんでした。改めてお詫び申し上げます。」
「いえ私も地図のことをきちんと確認していればこうはならなかったです。卒業したばかりとはいえ、無知がすぎました。」
俺も地図の重要性について理解していなかった。
教習所では全く教えてくれんかったからな。
ライセンス取得時に教えてくれればいいのに。
「そう言ってもらえると幸いです。また坂井はこちらにきたばかりの新人で担当している人はお二人しかおりません。今行方不明になっている3名の方は関係ないと分かりました。」
それを聞き一応安心した。
「そして今日お二人にきていただいたのは、あるお願いがあるからです。」
「お願い?」
「マイさん、医師からあなたはダンジョンで彷徨っている時の記憶が少し飛んでいるとお聞きしました。」
「はい。4日目、トモヤさんに会う少し前の記憶が思い出せません。気がついたら焚き火をしていました。混乱して周りを歩いているとギャングゴブリンと遭遇し、トモヤさんに助けてもらいました。」
マイさんは当時の状況を詳しく語ってくれた。
どうやら遭難4日目、俺と会う前に何か怖い物を見たらしい。
ただそれが何だったのか、霧がかかったように思い出せない。
その後、その怖い物から逃げていると誰かに会ったとのこと。
しかしその会った人も今は全く思い出せない。
マイさんはその誰かと会ったことで、やっと助かると安心したが、視界が急に暗くなり、気がつくと焚き火をしていたらしい。
急に自分の視界に人はいなくなるし、場所も大きく変わっているしで混乱、周りをあてもなく歩いていると出るはずのないギャングゴブリンに襲われた。
災難でしかない。
「あるお願いとは、トモヤさんにマイさんを連れてその怖い物を見た場所まで行ってもらいたいのです。」
俺は最初まだ疲れているだろうマイさんを連れて行くのは反対だったが、思い出せないのが気持ち悪いとマイさんは乗る気だった。
こうしてゴブリンパラダイスの探索が決定された。
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