第2話 旅立ちってなんだかエモいよね
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
特殊スキル:
倒した対象のステータスとスキルを奪う。
レベルアップによるステータスの上昇を0にする。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
対象のステータスとスキルを奪う!
まるでアニメに出てくる魔王みたいな能力だ。
俺は正義のヒーローの方が好きなんだけどな…と心の中でつぶやいていると
ぐぅぅぅう!!
腹のモンスターが悲鳴をあげる。
「そういえば今日昼を抜いて6匹目に挑んだんだっけ…」
ズボンのポケットからスマホを取り出して画面を見ると14時26分だった。
もうこんな時間か…
久々に牛肉が食べたい。
鶏肉じゃなくて。
レベルも10になったことだし、卒業記念に奮発しちゃおう。
てなわけで、今日はコンビニではなくスーパーに寄るとするか。
「そういえば今の所持金いくらだっけ…」
バックの中に手を突っ込んで財布を探す。
「だいぶ古くなったな、これも」
中から年季の入った皮の長財布を取り出す。
母さんが中学卒業祝いで買ってくれたものだ。
かれこれ5年くらい使っている。
変えようとしていたが機会がなくて今の今まで使っている。
チャリン…
財布を振ると中から寂しい音が聞こえてくる。
「うっ、今あるのこれだけか…」
513円…
鶏肉すら買えるのか怪しい金額だ。
とりあえずダンジョンを出て、アイテムを換金してもらおう…
俺がいるのは『
ダンジョンには連盟がレベルを設定しており、階層の数がそのダンジョンのレベルになる。
俺がいる『門出』は最底辺ダンジョンでレベル1。
階層が1階しかない。
レベルを10にし、特殊スキルを解放する場所の1つとして連盟から新人冒険者に勧められている。
もちろんここ以外のダンジョンでも特殊スキルを解放するまでレベルを上げてもいいのだが、圧倒的に危険度が違う。
レベルを上げきる前にモンスターによって死んでしまう可能性があるのだ。
一方『門出』では、出現するモンスターもリトルゴブリンが単体で出てくるくらいなので、ステータスが低くても気をつけていれば死ぬことはない。
比較的安全なダンジョンであるため、レベル上げにはもってこいの場所なのだ。
なので、半年もあれば大抵の人はレベルを10にまで上げることができる。
まぁ俺は2年かかってしまったんだけどね…
俺のLER値、つまり成長性がGであるためステータスだけでなくレベルの伸びも悪かった。
ちなみにLER値がGなのは日本の総人口1%ほどしかいないらしい。
俺は俺自身をレアな存在だと思っている。
だけど世間の人はそうは思っていないらしい。
世間では成長性Gの人をゴミと呼んでいる。
悲しい。
ダンジョンから出て、ダンジョンの隣にある連盟の換金所に向かう。
「あらトモヤ君、今日は遅かったわねぇ」
換金所の受付嬢の1人、
いつもニコニコ笑顔で俺たち新人冒険者達に対応してくれる。
俺は2年もここに通い続けたので顔見知りになった。
「レベルが10になりそうだったのでいつもより1匹多めに狩ったんですよ」
「そうだったの。張り切るのはいいけどあんまりおばさんを心配させないでよ?」
ちなみにリナさんは29歳で、全然おばさんではない。
顔も別に老けているわけでもない。
スタイルもいい。
男が若くてもおじさんって言うのは理解できるんだけどね。
若い女性が自分のことをおばさんっていうのは珍しいよな。
「すみません。気をつけます」
「で、レベル上がって特殊スキル解放できた?」
「はい無事に!おかげで新人卒業できました。今までお世話になりました。」
この『門出』は新人冒険者のレベル上げの地であるがゆえにレベルが10になった者、卒業した者は連盟から強制出禁をくらう。
卒業した者がいつまでもここに残り、モンスターを狩り続けることで新人冒険者の邪魔をするのを防ぐためだ。
「よかった!冒険者はここからが本番だからね!あ、じゃあこれ渡さないとね。困ったことがあったらいつでも私を頼ってね」
そういってリナさんは俺に名刺を渡してくれた。
名前の他に電話番号やメールアドレスなど連絡先が書かれている。
リナさんはこの『門出』から卒業する冒険者みんなに連絡先を渡している。
冒険者は卒業後の退職率が極めて高い。
自分の強さの限界に挫折したり、絶望し諦めていく人が多いのだ。
リナさんはそんな冒険者を減らすための相談役に自主的になってくれている。
『門出』の卒業者はみな、そんなリナさんに敬意を表しママと呼んでいる。
「じゃあ門出での最後のアイテム査定するから待っててね」
そういってリナさんは俺の集めたアイテムを査定するために換金所の奥へ入った。
俺の今回の集めたアイテムはリトルゴブリンから採れたクリスタルのカケラが6個とリトルゴブリンの剣が6本。
クリスタルは重さによって値段が決まっている。
1gあたり1000円。
武器に使用するので高い。
リトルゴブリンの剣は鉄でできているため、溶かして利用することができる。
1本あたり105円。
鉄とはいえ、リトルゴブリンからとれるのは質が悪いので安い。
〜3分後〜
「はい、お待たせ」
リナさんがトレイにお金を乗せてもどってきた。
「クリスタルの総重量3.6gで3600円。剣のほうが1本100円の6本で600円。合計が4200円ね。剣は最近、色んな冒険者が取ってくるようになったから少し値下げされて…ごめんね。」
「いえ大丈夫です!意外とクリスタルの重量があってよかったです。」
俺の牛肉代は確保できた。
「トモヤ君が特殊スキルが解放したことは私の方から連盟に報告しておくね。能力の開示はどうする?」
連盟には特殊スキルを解放したら必ず報告をしないといけないのだ。
しないと罰金15万円。
強力なスキルなゆえに、それを悪用する人が出てもすぐに対応できるようにするためだ。
ただし能力の開示は個人情報保護法に触れるため、任意となっている。
個人的には、あんまりこの報告に意味ないと思っている。
「ありがとうございます。開示はしない方向で。それではまた」
「うん、バイバイ!卒業おめでとう!」
リナさんは泣きそうな笑顔で手を振りながら俺を見送ってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます