変身
長い年月、人間と暮らしているうちに、動物も言葉を話すようになり、二足歩行出来るようになった。道具を使う生活を覚え、コロニーを形成して楽しく暮らしていたけれど、人間世界の食糧難が逼迫するにつれ、コロニーから動物が連れ去られる自体となった。
遺伝子研究をしていたパパが違う姿に変異する薬を生み出した。
「ママ、聖母マリアみたい。それに躰が宙に浮いているよ」
すらりとスリムな体型になり、豚の面影はどこにもない。
「ピニーも可愛らしい妖精さん」
「お兄ちゃん、こわい」
「ゾンビの方が良かったか。人間から食料として狙われないためには、これしか思い浮かべへんかったんだよ」
「ううん、これで命を狙われないなら何でもいいわ。それにパパ、格好いい」
「みんなただいま。
「あっ、お姉ちゃん」
「ごめんね、私のせいで変なのが押しかけて来て」
「いや、どっちみち狙われていたさ」
「ママ、私、赤ちゃんがお腹にいたんやだけど変身するときに消えてもた」
マリア様になったママが、もうちょっと若いマリア様のお姉ちゃんを抱きしめた。
「あんな最低な男との赤ちゃん、消えてもうてよかったんや。それに大きいなるのを待って子豚の丸焼きでもするつもりやったんやろ」
お姉ちゃんは涙を拭きながら、
「ドナおじさんが捕まっていた子どもたちを救い出して、もうすぐ連れて来てくれるねん。町の人たちにも知らせておいた」
ドナおじさんが荷車を引く、ポコ、ポコという足音が表の通りに聞こえてきた。
ガソリンが高騰して入ってこなくなり、また昔のようにドナおじさんが自動車の代わりに荷車を引いていた。
パパの姿を見て、子どもたちは一瞬ひるんだが、
「一列に並んで、男の子はパパの方、女の子はお姉さんの方に並んでね」
プレビュー姉さんが言うと、2つの列が出来上がった。
「あのー、ぼ、ぼく妖精さんがいいなあ」
「好きな方を選んでいいわよ」
大きな瞳に今にもこぼれ落ちそうな涙を溜めた男の子が胸を撫で下ろし、女の子の列に加わった。
鼻を鳴らす子や、コワイコワイと泣き叫ぶ子もいた。
ママが焼いたウインナーを1本ずつもらい、機嫌のなおったところで注射を打った。
プレビーお姉ちゃんは研究所でパパの助手をしていて、注射を打つのを手伝っている。
そのあと町の人たちも続々と並び、家の前の通りに列が出来た。
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