パパの帰宅

「やあ、みんな大変やったね」

「パパ、お帰りなさい」

「あなた、実験は成功したん?」

「ああ、今から注射を打つよ」

 パパは黒いカバンから透明な箱を取り出した。

「まずママから打とう。すぐには利いてけえへんはずや」

「お注射、いやだな」

 キャッシーが尻込みしている。

「だったら僕が」

「キャッシー、ぜんぜん痛いことあらへんよ」

「ほんとう?」

「ほんとうさ、ねっ、パパ」

「それに、キャッシーやなくて、またもとの名前に戻れるんやよ。ピニ-」

 ピニーは目をぎゅっと瞑り、腕を差し出した。

「よく頑張ったね。もう目を開けても大丈夫や。さあ、今度はパパの番」

 パパは左腕に注射器を刺した。

「ねえ、あなた、プレビーが捕まっているんやて」

「ああ、そうか。あの子の薬もそろそろ効いてくるはずやけどな」

「プレビーには飲み薬を飲ましたん?」

「ああ、あの子だけ成人しておったからね、本人も納得して、まず試しにと思たんや」

 お姉ちゃんは僕たちの実験台になったんや。



 いきなり玄関の扉が開いて、男たちがなだれ込んで来た。

「ご主人さんもお帰りとはちょうどいい。皆さん纏めて表のトラックに乗って戴きますよ」

「何なんだ君たちは、君も同じ種族やないか」

「パパ、この人だよ。プレビーお姉ちゃんを連れて行ったん」

「君は確かプレビーの恋人ではなかったのか?」

「いや、こうしないとウチの妻や娘が犠牲にならないといけないんで、すみませんね、パパさん」

「君にそう呼ばれたくない!」

パパの額に青い筋が走った。

「パパ、顔が……ぼくの顔も何か変」

 プギーはふっくらとした自分の顔に手を当てた。

「何だこいつらバケもんだあ」

「ヒエー、何だっていうんだ」

「おい、待てよ。俺を置いて行くな」

 男たちは慌てて逃げ出して行った。






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