壱 - 還士入場!
星は割れる、力がなくとも。
ここは第八銅鑼銀河団にある星割りの聖地、
その控え星雲には各銀河に名を馳せるの十名の代表
会場の熱気がここまで伝う。闘志十分の還士たちが、その熱気を受ける。
しかしここでは、彼らのほとんどが挑戦者だ。……無論、私も。
星割りはもともと、死にゆく星を見送る「星還しの儀」から生まれたとされる。超新星爆発により星がブラックホールになる前に銀河へ星を還す祭事が、やがて銀河興しの祭りとなり、数億年たった今、競技性を持ったスポーツに変化した。
星割りの選手が「
私も還士のはしくれ――。
誰もが憧れる還士とは言え、ほとんど無名だ。まあ地元の地方銀河ではちょっと有名ってくらい。地方の小さな連盟戦なんて、よっぽどの通じゃないと見向きもしない。
――そんな私が今、星割り統一の会場にいる。
「今から棄権すべきではないか、小娘よ」
私の隣にいた別の大星団の代表のひとりが、そう声をかけてきた。三本の腕を持つ還士。年ほどは私よりも上……実力も、そうだろう。
けれど私は、こんな嫌みでしか自己顕示できない小者の相手をしにきたんじゃない。
「あんたの小言、声が小さくて聞こえないわ。デカいのは図体だけ? ――いや、態度だけかしら?」
「貴様、なんたる無礼を……!」
その後も三本腕は何か言っていたが、私はそれを無視した。
そして自分に言い聞かせる。
集中しろ、集中しろ。集中するんだ、
瞬間、私は全ての雑念を追い払う。
必要な声、必要な響き、必要なにおい、必要な光。
必要な物だけを、目の前に。
私は集中の中で、その姿をしっかりと見据える。
――万丈万場紫電羅岐。
彼を倒すために私はきた。
「還士入場!」
控えに号令がかかり、還士達は会場に入る。会場にいる数多の銀河人たちが、諸手を振ってそれ迎え入れた。
気圧されそうなほどの熱気。
客席から正面に向かって真っ直ぐ、星が並んでいる。手前の最小一〇〇〇〇AUの天体から、最奥十万AUの天体まで合わせて百星、なるほど地方大会では見られない圧倒的なサイズの星々だ。
還士が星の前に立ち並ぶと、会場は一気に湧き上がる。取り分け、万丈万場紫電羅岐と親弾合掌猛成敗を呼ぶ声が大きい。その他の還士を呼ぶ声もちらほら。……私を呼ぶ声は、少なくともここまでは届いていない。
そして星割りの審判である「見送人」が一人一人の紹介を終えると、いよいよ星割り統一がはじまる。
――割るぞ、最後の星。
星は割れる、力がなくとも。
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