二章

「……爺ちゃんに聞いたんだ。姉ちゃん、明日此処を出てくんだろ?急で驚いたけど、姉ちゃんには、旅の話とかいっぱい聞かせて貰ったしさ。だから、何かお礼がしたくて、さっき村に来てた行商人から買ったんだ」


「買ったって……、あんた、これ幾らすると思ってんのよ」


「それはほら、昨日、姉ちゃんから貰った灰を売って買ったんだよ。……ほんとは、それでも全然足りなかったんだけど、必死に交渉したら、行商人のおっちゃんが特別にって。俺の交渉スキルも馬鹿に出来ないでしょ?」


少年が得意気に話す。


良く見てみれば、彼の体は灰と汗で所々汚れているし、目元には、汗なのかそうではないものか、敢えて追求はしないけど、良く分からない跡が残っていた。


きっと、昨日、私があげた灰だけでは足りず、急いで他の灰を掻き集めて来たんだろう。


それでも足りなくて、行商人に必死な形相でお願いして、その姿に、行商人が根負けしたって所だろうか。


「……っ、ほんと、馬鹿な奴ね」


何だか、目の奥が熱い。


「それ、ダリアっていう花なんだって。姉ちゃんと同じ名前なんだよ。……俺、おっきくなったら、姉ちゃんみたいに、色んな所を旅するから。姉ちゃんが話してくれた灰海の花だって、いつか、自分の目で見に行くよ」


いつものお調子者な姿とは打って変わって、真剣な面持ちで少年は話す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る