二章

ーーーーー


ーーーーー


朧気な意識の中、誰かの声が、薄らと聴こえて来るような気がする。


「………………」


誰だろう。


目を擦りながら、体を起こす。


そういえば、昨日は倉庫で爺ちゃんと話した後、そのまま家に帰って寝てしまったんだっけ。


まだ、心の整理がついていない。


眠ったのに、体に重さが残っているのは、そんな憂鬱さの表れだろうか。


「ダリ姉ー、起きてるかー」


喧しい声が、家の外から聞こえて来る。


さっきっから聞こえていた声はこいつだったのか。


「ったく、何よ朝っぱらから……」


気怠い気持ちのまま、扉を開ける。


「良かった…、まだ居たんだ」


どこかほっとしたような表情の少年は、気恥しそうにこっちを見ながら、何かを手渡して来た。


「ちょっと、これ……、一体どうしたのよ」


それは、硝子で出来た一輪の花だった。


灰を高温で溶かす事で作られる硝子細工は、専門の職人と設備が必要な為、非常に高い値が付けられる。


職人や設備は、基本的に都市部が占有してしまう為、それ以外の村落へ硝子細工が出回る事は無いのだが、ごく稀に、売れ残った硝子細工を、行商人が持ち込んで来る事がある。


それでも、その価格は、到底村民が手を出せるものではない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る