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ばしゃっとバケツで水を汲む音がして、その後に水で濡れて重くなった服を脱ぐような音が聞こえてくる。
絶対に振り向いてはいけない。おれのすぐ後ろに裸の真海先輩がいる。考えないようにまっすぐ数メートル先の水面を見つめる。ゆらゆらと揺れる水面の光を視線でなぞる。
「わたしは白瀬くんの背中見えるから安心だけど、白瀬くんは音しか聞こえないね」
真海先輩が見えなくても、水の音がして先輩がいることを確認できるから不安にはならなかった。けれど、後ろから聞こえる水の音が想像を掻き立てて逆にだめな気がする。
「じゃあ話してもいいですか?」
喋って気を紛らわせた方がいいと思って前を向いたまま言う。
「うん、いいよ」
「先輩、水泳部に入ろうとは思わなかったんですか?」
「うん。中学は遊びだったけど高校は本気でやってるっぽかったし。あ、そうだ。白瀬くん水泳部とかどう?」
「おれ、かなづちなんです。見せらんないくらい」
「想像できないなあ」
真海先輩が笑う。シャンプーをしているのか身体を洗っているのか泡がコンクリートに落ちる音が聞こえた。
「そっか。じゃあやっぱりバスケ部かなあ」
バスケ部に入っても良かったけれど、高校は中学よりも部活の種類が多いから勿体ない気もして迷っていたら夏になっていた。
このままでは帰宅部のまま三年間を終えそうだ。
「うーん。どうでしょうねー」
「じゃあさ、バレー部は?」
「うちバレー部強いじゃないですか。全国とか行って。おれそもそも球技苦手だし」
「白瀬くんは背が高いし、入部したら喜ばれると思うよ」
身長はありがたがられるかもしれないけど、技術とセンスがなくて絶句される未来が見える。というか、部活の話をしたってこのまま学校が再開するとも思えないのだけれど。
「白瀬くんって身長何センチあるの?」
「百七十八センチです」
「すっごいね。わたしと二十センチも違う」
小さいなとは思っていたけれど二十センチも差があったなんて。先輩は背の高い男嫌いかな。青野先輩はそんなに高くないしな。すぐに青野先輩のきれいな顔が頭に浮かんで、振り払う。今ここにいない人のことなんて考えても仕方ないんだ。
それからしばらく会話を続けたあと「終わったよ」と言われて振り返ると、バスタオルを身体に巻いた先輩が立っていた。
真海先輩が会話をしてくれたおかげで変なことを想像しなくて済んだことにほっとしていたけど、今度は目の前に無防備な格好の真海先輩がいる。どうしよう。不自然に顔を背けるのもよくないから、先輩の目だけを見るようにする。
真海先輩はおれの視線の所在なんて気にすることなく、髪の毛を小鳩高校タオルで拭く。黒い髪から水が滴ってきれいだ。
「じゃあ白瀬くん、交代ね。わたしそこであっち向いてるから」
これ置いとくね、と小鳩高校タオル二枚と空のバケツを二つコンクリートの上に置いた。
「いつまで入れるかなあ、プール」
「浄化装置止まってると思うんで、いつまで持つんでしょうね。雨とか降ったら入れないかも」
「じゃあバケツで水浴びするしかないか」
「そうですね」
先輩と会話をしながら服を脱ぐ。
男にしては細く白い自分の身体はあまり好きではなかった。真海先輩の方を見ると櫛で髪を解かしている。狭く華奢な肩は自分と全く違う骨格をしている。
まず二つあるバケツの両方にプールの水を汲んだ。髪と身体を洗って、それからシャツを洗おう。とりあえず片方のバケツにシャツと下着、靴下を放り込む。脱いだスラックスは絞ってそのまま干すことにした。
保健室から持ってきたハンガーを手に取りスラックスを干し皺を伸ばす。フェンスにハンガーを引っ掛けようと振り返ると、既に掛けてある先輩の制服が目に入った。
シャツやスカートの横にキャミソールが干してあってその下に目立たないようにピンク色のブラジャーとパンツが掛けてあって、目を逸らす。真海先輩の下着を見るわけにはいかない。
真海先輩が干した衣服と距離をとってスラックスを掛ける。
「白瀬くんのこと、もっと知りたいから質問してもいい?」
「あ、はい」
「えーと、好きな食べ物は?」
「好きな食べ物。えーと、コロッケ」
「コロッケかあ。わたしも好き」
「真海先輩は?」
「聞かれるとぱっと思い浮かばないね。うーん……大福、かな」
答えが可愛らしすぎて思わず笑ってしまった。真海先輩は肌が白いから大福に少し似ているな、と思ってまた笑う。
「こんな話してると食べたくなっちゃうね、ごめんね」
「全然、今度一緒に食べましょう」
バケツに水を入れてプールの水を頭から被って髪の毛を洗う。真海先輩のクラスメイトのシャンプーは花の香りだろうか、甘くさわやかな香りがする。
「白瀬くんは兄弟とかいる?」
「二つ下に妹がいます。先輩は?」
「四つ上のお兄ちゃんがいるよ」
四つ上ということは今大学生だろうか。真海先輩のお兄さんはどんな人なんだろう。全く想像がつかない。
シャンプーの泡をバケツに掬った水で流しながら、先輩との会話を続ける。
「誕生日はいつ?」
「七月七日です」
「え。もうすぐじゃん。三日後?」
まだ一日しか経っていないけど、昨日起こったことが非日常すぎて日付の概念を忘れていた。
真海先輩に言われて今日が七月四日だということに気付く。
「ほんとですね」
「お祝いしたいね。ケーキとか用意できないけど」
ケーキよりも真海先輩が隣にいてくれる方がよっぽどうれしいとはさすがに言えなかった。
三日後にはさすがに救助隊が来ているだろうし、そうなると真海先輩が隣にいない可能性もある。できればここから出ても一緒にいたいとわがままな欲が芽生えてしまう。
「いいですよ、そんなの。先輩は誕生日いつですか?」
「わたしは三月十四日だよ。ホワイトデー」
「じゃあ三日後にはしばらく同い年ですね」
「そうだね。だから先輩も敬語もやめないとね」
「それは無理です」
コンディショナーを流したあと、ボディーソープで体を洗う。
汗をかいていたから身体を洗えることがとてもうれしい。避難所にいる人たちはこんなことはできないだろうから、こっちに残った方がよかったかもしれない。真海先輩は日除けの下で伸びをしている。
それからまた質問を繰り返して、それが意外と盛り上がった。中学時代の話とか、好きな音楽の話とか、他愛ない会話のキャッチボールが日常みたいで心地が良かった。
昨日もちらほらと何気ない会話をしていたけれど、こうやって質問し合うと真海先輩のことを沢山知ることができてうれしいし、おれのことを知ってもらえるのもうれしい。
スラックスの隣に洗った衣服を干して、小鳩高校タオルを腰に巻いた。下半身に小鳩高校と大きく書いてあって自分でも笑えるくらい格好悪い。きっと早弓が見たら腹を抱えてぎゃははとあの大声で笑うに違いない。この格好を真海先輩に見られるのかと思うと恥ずかしいけれど、仕方なかった。
「終わりました」
日除けの下はすこしひんやりしているような気がする。日陰に入るだけでこんなにも違うんだな、と当たり前のことを改めて思いながら真海先輩の横に腰を下ろす。
「小鳩高校」
おれの下半身を見て先輩が小さく呟いた。
目立つように書いてあるから仕方ないんだけれど、真海先輩がおれの下半身を見ているのはさすがによくない。
話を逸らさないと、と思っても何を言えばいいかわからない。プールの方を見ると水面のひかりが夏のぬるい風に吹かれてゆらめいている。
「やっぱりちょっときしきしするね、髪」
先に口を開いたのは真海先輩の方だった。櫛で梳かした髪に触っているけれど、しっとり濡れていてきしんでいるようには見えない。
自分の髪は真海先輩みたいに長くないし、きしんでいてもたいして気にならないからわからなくて「そうですか?」とあいまいな返事をした。
「気のせいかも。ドライヤーがあったら完璧なのに」
指先で挟んだ毛先を見つめる。おれは男だから気にしないけど、女の子はやっぱり気になるのか。
妹のドライヤーの時間が長かったことを思い出しながらおれも指に挟まれてぴょんと跳ねる先輩の毛先を見つめた。
「そうだ、山科先生の車のクーラー使いましょう」
昨日職員室で見つけた山科先生の車の鍵があるから、クーラーくらいは使えるだろう。ラジオももしかしたら繋がるかもしれない。
暑すぎて熱中症になりそうだったら使おうと思っていたけれど、髪を乾かすのに丁度いいかもしれない。
「それいい!」
「ついでに涼めますしね」
「山科先生の車なら場所もわかるし、瓦礫に埋もれてはないと思うの。白瀬くん賢いね」
「そんなことないです」
「ここにいるの気持ちいいから、少し休んでから車の方行こっか」
「そうですね」
日除けの下で水面を眺めながら真海先輩と話していると心が安らいだ。
ぬるい風も気持ちがよくて、もう少しここにいたいと思う。真海先輩も同じ気持ちだったようでそれがうれしかった。
プールサイドのコンクリートを太陽がじりじりと照りつけて、くっきりと浮かび上がる日向と日陰の境界線に視線を落とす。
「じゃあ質問の続きしてもい?」
「あ、はい」
「白瀬くんは彼女とかいないの?」
「おれは居たことないです」
彼女がいる男が話したこともない女の人のために校舎に戻ることがあるだろうか。昨日伝えたはずなのに真海先輩はまだどこかでおれが校舎に残ってしまった人を助けるために残ったと思っていそうだ。
真海先輩は意外と鈍感なのかもしれない。青野先輩に対しても同じように鈍感なのだろうか。それとも違うのだろうか。ぼんやり考えて、傷つきそうだからすぐにやめる。
「えっ。意外! すごくモテそうなのに」
目を丸くしておれの顔を覗く真海先輩が可愛くて思わず顔を逸らす。
告白は人よりもされてきた方だと思うけど、中学生のときは好きな女子なんていなかったし、高校に入ってからは真海先輩しか見てなかったから全て断ってきた。早弓から渡される知らない女子の連絡先も全て断ってきたし、正直女子と話すのはずっと苦手だった。
「全然ですよ。あんまり女子と話したことないですし」
「本当に?」
先輩は気付いてないだろうけど、昨日はかなり緊張していたし自分なりに頑張って話しかけていた。真海先輩が話しやすいから今は自然に喋れるけれど、たまに緊張して頭で考えられずに思ったことをそのまま口に出しそうになる。
昨日、一緒に寝たいと言った時も頭で考えるより先に言葉が溢れてしまっていた。
真海先輩に話しかける練習を早弓にさせられていたけど全く活かせなかったな。それどころか怖がってばかりでずっとかっこ悪いところしか見せていない。
「オレがたぬパイ役するから、白瀬は普通に話しかけてみ」と笑う早弓とのふざけたやりとりを思い出す。そもそも真海先輩のことを何も知らない早弓に先輩役ができるわけもなく、いつもふざけて終わっていた。
早弓は意外にも口が固くておれが真海先輩のことを好きなことを誰にも漏らさなかった。
その代わり二人になった時はしつこく聞いてきたり、会話のシュミレーションをしてきたりと面倒で、だけど楽しかった。真海先輩がたぬき顔だからたぬパイと呼んでいたのがなんとなく嫌だったけど、今はそれを聞けないのが少し寂しい。今のおれを早弓が見たらどう思うだろう。笑うところしか想像できない。
「じゃあ、余計わたしと居たらだめなのに、ごめんね」
「おれは真海先輩と居たいですよ」
こんなのすきって言ってるようなものだけど真海先輩は鈍感で気付いていない。自分の言葉が恥ずかしくて下を見ると下半身を隠したタオルの小鳩高校という文字が目に入ってくる。こんな格好悪い姿で何を言ってるんだ、おれは。
視線の行き場がなくて真海先輩の方を見る。真海先輩もバスタオルを一枚身体に巻いているだけでその下は裸だ。体は華奢なのに意外と胸が大きくてつい視線が吸い込まれそうになる。
気にしないように目を逸らそうとしたとき、真海先輩の胸元に赤い痕が見えた。
「先輩、鎖骨の下のところ」
うっかり口に出してからまずいとはっとする。これじゃあ胸元を見ていたと思われても仕方がない。最悪だ、と思ったけれど真海先輩は特に気にせずおれが指差した右の鎖骨の下、膨らんだ胸の少し上のところにある痕を見た。白い肌に浮かぶ赤黒い痕は、前に早弓が彼女に付けられたとか言って見せてきたキスマークに似ている。
「あっ」
自分の胸元を見て真海先輩は驚いたような声を上げた。反応を見るにキスマークの存在に気づいていなかったのかもしれない。きっとそれは青野先輩がつけた痕だろう。
「青野先輩が、付けたんですか」
昨日真海先輩から言われた言葉が脳裏に過って、青野先輩のことを思い出して苦しくなる。
青野先輩のことを何も知らないのにもうすでに嫌いになってしまっている。嫉妬でしかないのだけれど。
「そう、みたいだね。気づかなかった」
先輩は少し寂しそうな顔を浮かべていた。青野先輩は真海先輩を置いて行ったのに、身体だけ繋がって心を傷つけてきたのに、先輩はまだ青野先輩のことがすきなの?
「はるはこういうの付けてくれないと思ってた。わたしがつけてばっかりだったから」
真海先輩にそこまで執着させる青野先輩はずるい。でも、真海先輩はいつも悲しそうな顔ではると青野先輩の名前を呼ぶ。
青野先輩の話をするときの真海先輩は悲しい顔をしていて見ていられない。
「嬉しいですか、それ」
「どうだろ。複雑だね」
「複雑?」
「はるから離れなきゃって思って、離れて安心したから」
少し安心して自分も複雑な気持ちになる。まだ残っている痕はまるで青野先輩の呪いみたいだ。
「何がきっかけで青野先輩のこと、すきになったんですか?」
「丁度昨日そのことを考えてたの。でもね、思い出せなかったの」
先輩はプールの水面を見つめている。
「どうしてはるのことずっと追いかけてきたんだろう。いつも不安で、いつも苦しかったのに」
「わからないけど、いつも不安だったから離れられなかったんじゃないんですか」
「……うん。きっと、そうだと思う」
真海先輩を不安にさせて、追いかけてないとどこかに消えしまいそうな危うさを見せて、真海先輩を縛っていたんじゃないですか。そうでなければ本当に真海先輩に興味がないか。いずれにしろ、真海先輩にそんな思いをさせて今もまだ残っている青野先輩が憎い。
もし青野先輩が現れたら真海先輩は戻ってしまうんじゃないかと思う。
ねえ、先輩と無意識に口から言葉が滑り落ちる。
「おれも先輩に痕つけたい」
言ってからはっとした。また頭を通さずに言葉が口から滑り落ちてしまった。
そのときには手遅れで真海先輩は驚いた表情でおれの顔をまじまじと見つめていた。
「えっ?」
「青野先輩のこと忘れさせたい。先輩は青野先輩のことを話すとき悲しそうな顔してるから」
もう、言ってしまったのだから思ったことを言葉にしたほうがいいと思った。
真海先輩に悲しい顔をさせる青野先輩のことなんて、消してしまいたい。
もし先輩が悲しい顔じゃなくて、しあわせそうな顔で青野先輩のことを話していたとしたら、真海先輩のことを諦めるしかなかった。でも、そうじゃない。
真海先輩をしあわせにできるのは青野先輩じゃないと思った。おれでありたいと思ってしまった。
少し考えるように真海先輩は黙り込む。
プールサイドに吹くぬるい風がおれと真海先輩の間を抜ける。
「だめだよ、そんなの」
下を向いて真海先輩が言う。
「青野先輩のつけた痕が大事ですか?」
「違うよ。白瀬くんが汚れちゃうから」
「真海先輩はきれいですよ」
「ありがとう。でもだめだよ」
「おれは真海先輩に安心をあげる」
そう言って真海先輩の首に顔を近づける。
先輩は言葉では拒んだけど、遮ったりしなかった。
「真海先輩がどこに居ても見つけるよ」
「あっ」
首筋に口を当てると、真海先輩の甘い声が耳の傍で聞こえてどきどきした。
甘いにおいがする。どのくらいの力で吸えば痕が残るのか分からなくて、時間をかけてから唇を離した。
真海先輩の首筋に赤い痕が浮かぶけれど、すぐに消えてしまいそうな薄い痕だった。
「全然付かないですね」
「だめだよ。白瀬くんはこんなこと覚えちゃ」
「おれは知りたいです。先輩、おれにもつけて」
「白瀬くんを汚せないよ」
「真海先輩を残して欲しい」
困ったような表情でおれの顔を見る。
「白瀬くんは、いいの?」
「はい。真海先輩に、教えてほしいです」
少し間をおいて真海先輩の顔が近づいてくる。先輩の舌がおれの首筋をなぞって、吸い付く。
清楚な印象の先輩がイメージとは真逆のことをしていてまたどきどきした。濡れた髪から甘いシャンプーの香りがして、柔らかい胸がおれの胸板に触れるのを感じる。唇が強く吸い付いて、思わず吐息が漏れる。
「せんぱい」
呼ぶと唇をゆっくりと離して、丸い瞳でおれの目を見つめた。
痕が付いてるかわからないけれど首筋が熱を帯びたようにじんじんと熱い。
「真海先輩は青野先輩のこと、忘れてください」
「忘れられるかな。こんなにもこびりついて、消えないのに」
「真海先輩は、青野先輩に呪われてるみたいです」
真海先輩に不安を与え続けてもなお心に残り続ける青野先輩が憎くて、苦しくなる。
このまま先輩を抱きしめたいと思った。けど、それじゃあ青野先輩と一緒だ。
今の時点で手遅れなくらい大胆な行為に及んでしまったけれど、これ以上は気持ちを伝えてからじゃないとだめだ。
青野先輩の端正な彫りの深い顔を思い浮かべて理性を保つ。
「もう一回、つけてもいいですか?」
真海先輩が小さく頷く。
鎖骨の左下に唇をあてて吸い付くと頭上で真海先輩の息が漏れる音が聞こえた。目の前に先輩の胸があって息が止まりそうだった。
思わず口走ってしまったとはいえ、確実に順番を間違えてしまったな。
早弓には言えないけどもし知ったらへたくそと言われるに違いない。すきだと言うタイミングを見失ってしまった。どうせ口を滑らせるならすきが溢れてしまった方がよかったのに、青野先輩が邪魔をした。
「はるのこと、忘れたいな」
そう呟く真海先輩の白い肌にはおれのつけた赤いキスマークが浮かんでいる。
鎖骨下に赤黒く残る、青野先輩がつけたキスマークが薄く見えた。
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