第23話 確保

 数日後、カフェ・てらすに津田から依頼の詳細が届いた。


 そこに記された内容を掻い摘むと以下の通りだった。


【依頼内容】世直し断頭台の処分、又は確保。


【場所】アサクサ。

 野々村ミヤビの奮闘により、小型の発信機を付けることに成功した。

 この発信機による位置情報は津田キッペイ、冬道メヱコ、カフェ・てらすしか知らない。

 尚、情報の漏洩を禁ずる。


【特殊権限】カフェ・てらすに殺人許可証マーダーライセンスの付与。

 対象以外の殺人が行われた場合、津田キッペイが全ての責任を負う。


 コウタロウの発言通り、世直し断頭台の確保が認められている。

 イクミは依頼内容を見て、ほっと胸を撫で下ろした。


「これで僕たちには処分以外の選択肢が与えられた。

 ヒトナリくん、イクミくん。頼んだよ」


『了解』


 2人は声を揃え、コウタロウの指示を承諾した。




 ――イクミとヒトナリは電車に揺られていた。

 普段言い争いをしている2人も、何時もと違い静かだった。

 2人は各々の考えを持ってこの任務に当たっている。

 イクミは特に殺人許可証が下りたことが脳の大部分を占めていた。

 確保という選択肢は獲れたものの、殺人というタブーを無視できてしまう現状が、彼女の心に影を落とす。

 しかし電車は、彼女の意思など度外視して目的地へ辿り着いた。


「イクミ、ついたぞ……。アサクサだ」


「ん……。ここは相変わらずだね」


 神異による経済格差が日本の問題となっているが、その被害をモロに受けたのがアサクサだ。

 1999年に恐怖の大王が襲来した際、アサクサはほぼ壊滅した。

 恐怖の大王が討伐された後、政府は復興ではなく、神異による発展を優先した。

 甚大な被害を受けた場所は後回しにされ、1部の地区のみ急激発展を遂げて今の日本社会に発展した。

 そして今も政府は、発展にのみ目を向け、復興が必要な場所は臭い物に蓋をする様に無視し続けている。

 その結果、ノストラダムスの大予言から17年経った今も傷跡が大きく残っている。

 今やアサクサはスラム街と化しており、日本国内で最悪の治安を欲しいままにしていた。

 また、神異が使えない人々がコミュニティを築いているため、神異所持者の人数も必然的に最低値を誇っている。


 様々な場所から排他された人々だからこそ、世直し断頭台を支持する声はアサクサが1番大きい。


「世直し断頭台がいるとしたら……たしかにここだな」


「発信機はアサクサ駅に棄てられてたって。ここからは、地道に探るしかないかぁ……」


 2人は近代さを残し崩れ落ちたビル、人の居なくなった商店街、建物の隙間から生えた草木など、チグハグな風景を瞳に映す荒廃した都市へ足を踏み入れた。

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