第3話 夜明けのランナウェイ

 登校するな。バッドネイムは私ミサキとして登校しようとしていた。当然ながら畜生道におちた私は通えない。辻褄合わせるだけならばバッドネイムを派遣するのが正しい。だがしかしお菓子詰め放題コーナー! バッドネイムの人間体としてのキャラクターは最悪だった。私との入れ替わりを認知しながら奴はバッドネイムという本分を捨て、私として生活しようとしている。基本的にズボラかと思えばそれでいて狡猾。家族には完全に私をロールした姿で接しその隙を見せない。けれど学校ではどうだろう。信用できない。私がこれまで築きあげてきたミサキという性格を奴は守るだろうか。いいや限界だオスね! そう、バッドネイムはオスで私は女。昨今の風潮などつゆ知らずバッドネイムの意思がどうあれ必ずどこかに限界がくる。そうなったら私はおしまいだ。友達もなくし孤独になって、仮にカラダが戻ったとしてももうそこはノットエデン。時すでに遅しちらし寿司なのだ。せやかて工藤? このまま奴の横暴をこんなイヌのカラダで止められるっちゅーんか? てん、てん、てん……和葉ーーーッ!!

 とはいえどうにかバッドネイムを監視だけでもする手立てがあれば。どうすれば、どうすれば。事件は迷宮入りのまま、ついに学生生活復帰の朝がやってきてしまう。

「ねえ、バッドネイム」

「おれ ミサキっていいますょろ」

「真面目に聞いて あんた絶対ミサキになりきって貫いてロンギヌスを」

「義理はないね」

「これわかる? 通話アプリ 精度はわかんないけどこれずっとオンにしてて だいたいの会話はこのPCで傍受できるから」

「ミサキ〜 むつかしいことぉわかんなーい」

「……そっか じゃあ私にも考えがあるわ」

 私はクラウチングスタートの姿勢(気構え)をとりそのまま部屋の壁に激突した。途端バッドネイムがヴッと唸って悶絶した。ここでいうバッドネイムは私でもあり元バッドネイムをも指す。私は気づいたのだ。昨日、風呂上がりにすっ転んだバッドネイムの痛みがなぜだか私にまで伝わっていることに。つまりどうしてだか痛覚だけは共有されているということに!

「あーれー? おかしいなぁ? おねえさんはどうして痛がってるのー? ぶつかったのは僕なのにぃ?」

「て、テメェ何しやがった!」

 バーローww まだ気づいてねえのかよ。水平線上のストラテジーに!

「いい? あんたと私は同じ痛みを分かち合ってる つまり運命共同体ペイン六道なの 私が死ねばあんたも死ぬアンダスタン?」

「クソ仕様かよ」

「で? どないしまんねんな! アプリ オンのままに出来ねえ奴いる? いねえよなぁ!」


 

人は人を救わない……なぜなら……人は人を救わなくても……その心が痛まないからっ……!

なら……期待するなっ……! 他人に……!

自分だっ……! 自分……!

自分を救うのは……自分だけ……!by伊藤カイジ!


【次回予告】遂に始まる学校篇! バッドネイムの暴走を止められるのは私だけ! そのためなら盗聴だってなんだってやってやるんだから! って今屁こいたなてめえ!? 次回 セックスアンドザシティseason4「男はタマのついた女?」もう着ることなんて絶対ないドレスでもとっておくけど、元カレは捨てちゃう!

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