第2話 リヴィン・オン・ア・プレイヤー

 犬になった。犬だった犬は私の姿になって私だった。わけがわからないと思うが私も何をされたのかわからなかった。急に目の前が大きな光に包まれたかと思うとそこからしばらくの記憶が飛んで気づくと自宅にいたわけだが私は既に犬だったのだ。意識を取り戻してからはそんな思考の整理を無限にしていたが一向に追いつかない。家族にそのことを説明したくても口から出るのは「ワン」だの「バウ」だの「ウー」である。そうだ! 私はいつぞやあのクソ犬と少しでも意思疎通がはかれたらと買ってもらったあれがあるじゃないか。バウリンガル! 私は慣れない四足歩行で記憶の糸を辿りバウリンガルを探す旅に出た。道のりは険しく砂塵荒ぶる大砂漠、かと思いきやタイダルウェイブのやまない大海にサメ、シャチ、リヴァイアサンがウヨウヨ紆余曲折を経てどうにかこうにか手に入れたひとつなぎの大秘宝!

 私はバウリンガルを咥えて父のもとへと近づいた。床をトントンしてバウリンガルの存在をアピールする。

「なんだ? どうしたんだなつかしいおもちゃ持ってきて? あの頃はお前もまだ今よりカラダが小さくてな 思い出すなあ」

 浸るなクソ親父! 装着せし! バウ リンガルを!

「電池切れてるなこれ」

 おわた。

「母さあん! 予備の電池なかったけ?」

「何? ちょっと今ミサキの手当てで忙しいんだけど」

 お願いお母さん! それは犬よ! 電池が先決!

「食器棚の引き出しにあるでしょ 勝手にとって」

 ナイスーーーーッ! 私は台所へ駆け出した。

「そんなにこれで遊びたかったのか まだまだ子供なんだから」

 あくしろよ!

「これで よしと」

 お父さん! 私ミサキだよ! 犬になっちゃった! 信じてもらえないかもだけど! 助けてお父さん! 私は必死でそう訴えかけた。

「そう慌てるなって なになに? えーっと "楽しい チューしたいキブン♡" よしよしよしよし!」

 ボエーーーーッ! チキショーーーーッ! わかっていた。私はかつてこのバウリンガルがどれほど神話であるかをバッドネイムで試して知っていたはず。所詮ドリームユアドリームス。わかっていたはずなのに溺れるものはファラオの呪い!


 私はどうすればいいの。お父さん、お母さん、おねえ。私、ここにいるよ! おい、バッドネイム! お前もなんとか言え!

「んなこと言われてもな」

 え? 

「おれだってワケわかんねえんだわ」

 あんた、わたしの言葉がわかるの?

「まあ元イヌだし」

 なら通訳しろし!

「やだね」

 ガッ    デム!

「てなわけでしばらく好きにさせてもらうぜ バッドネイム♡ ニチア」



【次回予告】私の体を乗っ取ったクソイヌ! やはりその性格もクソだった! 私のカラダなのをいいことにあんなことやこんなことや、ヤメテーーーッ! 次回、コレクターユイ!「占いネットで恋の予感!?」見ないとゴミ箱ポイポイのポイよ!

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