6.2
友里はこっそりため息をついた。
友里は、詩織ちゃんがこんな格好で遅刻してきた理由に見当が付いていた。
1年生の6月頃のことだ。
飲み会の帰りに、二人だけになった時、詩織ちゃんが宣言したのだ。
「私、アイドルを目指してるの!」
酔っぱらっていたから、本人は覚えてないかもしれないけどと、友里はその時のことを思い出しながら考える。
詩織ちゃんは、アイドルに関する何らかの活動をしていたがために、遅刻したのではないだろうか。
(別にアイドルを目指すのはいいんだけど…)
こんなに薄着をして、真っ青になるまで凍えて。気持ち悪い模様の靴下なんか履いて。
友里は、この中で一番ヤバいのは詩織ちゃんだと思っている。
アイドルなんて、簡単になれるものではないだろう。
詩織ちゃんは、試験では常にクラスで5位内に入るんだから、そういう部分を生かせるものを目指したほうが、本人も楽だし、世の中のためにもなるし、現実的でもあるような気がする。
だが、自分には見守ることしかできないことを、友里は知っている。
なりたいものになるのが一番幸せなのだ。
「もう大丈夫。あったまった」
しばらくしてから、詩織ちゃんが申し訳なさそうにみんなに言った。
「遅れてきてごめんね。用事があって…」
「別にいいよ」
「うんうん」
詩織ちゃんの服装に誰も突っ込まないところを見ると、みんなも詩織ちゃんがアイドルを目指していることを知っているのかもしれない。
「みんな揃ったし、乾杯しようか」
「そうだね」
5人はそれぞれのグラスに飲み物を注ぎ直した。
コタツのテーブルの上には、おでんや唐揚げやシュウマイなどが所狭しと並び、それを囲んで5人の女子がぎゅうぎゅうにつめて座っている。
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