4.

 今日の差し入れの料理は、鶏肉とゴボウとジャガイモで、揚げ物を三品作ろうと芽衣は考えていた。メインがおでんだから、組み合わせは悪くない。

 鶏肉は普通の唐揚げでいいだろう。

 ゴボウは薄い衣を付けて揚げた後、お醤油とみりんであえる。

 ジャガイモはフライドポテトにして、クレイジーソルトをまぶそう。

 鶏肉とゴボウはスーパーで買ったが、ジャガイモは実家から送られてきたものがたくさんあった。

 5人の中で一人暮らしをしているのは、芽衣と友里と詩織である。3人とも他県から進学のために引っ越して来た。

 5人が通う大学は、国公立ではあるが、偏差値は高くない。

 学部も4つしかなくて、47都道府県に一つ以上ずつある国公立大学の中でも小規模なほうだ。

 でも、芽衣はこの大学に進学して良かったと思っている。

 もしも出身県の大学に入れるような頭が自分にあったら、一人暮らしすることはできなかった。家から通わなければいけなかったからだ。

 いつの頃からか、自宅は窮屈な場所になっていた。理由は分からないが、多分そういうものなのだと芽衣は考えている。

 大人になったら、親が疎ましくなるものなのだ。反抗期の時とは別の理由で。

 だから芽衣は、自分達の中で一番ヤバいのは、美也子ちゃんだと思っている。

 美也子ちゃんは、週末の土日のどちらか、または両方をお父さんと過ごす。

 二人でドライブがてら近場の温泉に行ったり、映画や買い物やトレッキングなんかにも行ったりする。

 お母さんも参加して三人で行くこともあるが、月に一度あるかないからしい。

 信じられないことだと芽衣は思う。夫婦よりも多くの週末を過ごす父と娘。ファザコンというやつだろうか。

(鈴木君と付き合うことになったら、美也子ちゃんどうするんだろう)

 鈴木君と美也子ちゃんは、以前からいい感じなのだ。

 付き合っちゃえばいいのにと、芽衣はずっと思っているが、口に出して言ったことはない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る