3.
パーティーは12時からだから早過ぎるとは思ったが、ちょうどいい時刻に着く汽車がなかった。
それに、安奈ちゃんが11時に来ているはずだから、自分がこの時刻に行っても迷惑にならないだろうと思ったのだ。
この辺りの鉄道は、通勤時間以外は1時間に1本しか運行していない。
その鉄道を使って、美也子は自宅から鉄道で大学に通っている。通学時間は1時間半かかる。
安奈ちゃんは、まだ来ていなかった。
「じゃあ、代わりに手伝うよ」
さもありなんと、美也子は友里ちゃんに手伝いを申し出た。
「おでんはあとは煮るだけだから、おにぎり握ってくれる?」
「うん」
美也子が友里ちゃんの部屋に来るのは3回目だが、いつもきれいに片付いている。
コタツがあってもおしゃれな部屋にできるんだと、美也子は初めて友里ちゃんの部屋に来た時、驚いた。
友里ちゃんのような一人暮らしを、美也子は羨ましく思っているが、自分には無理なような気もしている。
同じ学科の26人の女子は、大まかに二つのグループに分かれていた。
女の子の部分を積極的に出している子達と、そうでない子達だ。
前者は服装も行動も女の子っぽいが、後者はジーンズとTシャツで大学に行くし、将棋や空手などの男子っぽいサークルにも入る。
後者のグループの中でも、美也子たち5人は、とりわけ女の子っぽくなくて、消極的で大人しい一派だった。
彼女達は、基本的に目立つことはしない。派手な色恋沙汰も喧嘩も、クラス全体でやるレクリエーションの幹事もしない。
服や持ち物はなぜかブルー系やダーク系が多くて、男子の群れの中にいると、たまに紛れてしまう。
全員、化粧もほとんどしないし、スカートもあまりはかない。
でも、おしゃれ自体をしていない訳ではないし、友里ちゃんみたいに、服以外のこういう部分に凝って、大人っぽいおしゃれな生活をしている子もいるのだと、美也子は思っている。
玄関のチャイムが鳴った。杏奈ちゃんが来たのだ。
「遅れてゴメン!」
「遅刻厳禁」
友里ちゃんがちょっと怒ってそう言ったが、安奈ちゃんはあまり気にした様子はない。
えへへと笑う杏奈ちゃんの髪はぐしゃぐしゃだ。コートにはシワがある。ハンガーにかけておかなかったらしい。
セーターとズボンは、何日も着ているもののようだ。
杏奈ちゃんは、いつもはちょっとだらしない程度なのだが、たまに今日のように汚ギャルが入る。
自分達の中で一番ヤバいのは杏奈ちゃんだと、美也子は思っている。
でも、明るくて気さくで、5人の中では安奈ちゃんが一番友達が多い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます