2.
今日は土曜日なので、他の家族も家にいる。社会人の姉も遅く起きてきたから、洗面所が混むかもしれない。
最も、安奈はあまり長い時間洗面所を使わないが。
杏奈たち5人は、地方の国公立大学の二年生である。学部は工学部、学科は応用化学科だ。
一学年100人中、女子は26人いる。少ないように思えるが、機械工学科や電子工学科などと比べると、これでも多いほうだ。
杏奈は自宅から自転車で大学に通っており、その距離は2kmない。
この地方都市は、鉄道の線路の東側に県庁や市役所や繁華街があり、西側はいきなり住宅地で、その中に大学がでんと建っている。
そういう環境だから、親元を離れて一人暮らしをする学生は、大学の徒歩圏内に部屋を借りることができる。
コンパクトにまとまった小振りな街は、便利と言えば便利だが、進学のために東京や大阪などから来た学生は、「田舎だ」とか、「さびしい」とか、「何もない」と不満を言う。
杏奈はここにしか住んだことがない。これからも、あまり離れたところには行かなくていいと考えている。
東京や大阪と違うのは分かっているが、ここにだって街があり、大学があるのだ。
(ああ、遅刻しちゃう。友里ちゃん、遅れたら怖いだろうな~)
遅い朝食を食べているうちに、時刻は10時45分になろうとしていた。
友里ちゃんの家は大学よりも遠い。自転車で約20分だが、急げばもっと早く着く。
杏奈は自分のことを、まあまあ標準範囲内の女子大学生だと思っていた。
スポーツ系のサークルに入っていて、今は付き合っている彼氏はいないが、サークルやバイトで出会った他学部の学生とも、男女問わず友達になれる。
これらの外部で出会った友人達と比べると、今日集まる5人は全員キャラが濃い。
もちろん、自分もそのうちの一人だが、5人の中ではかなり薄味のほうだ。
安奈は、5人の中で一番ヤバいのは友里ちゃんだと思っている。
気難しいほどに真面目な友里ちゃんが、一番キャラが濃い。
杏奈は友里ちゃんのことが好きだ。だから、もっとみんなの中に入ってくればいいのにと思う。
サークルの飲み会やバーベキュー、クラスの子達とのドライブなんかも、何回誘っても友里ちゃんは来ない。
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