彼女らは、むさ苦しい大学生につき

くろぶちサビイ

1.

 一月のとある土曜日、友里ゆりは一人暮らしの六畳一間のアパートを掃除していた。

 朝は晴れていたのに、だんだん曇ってきた。風も出てきたかもしれない。

 今日は、仲良し女子の5人で定例開催しているバースデーパーティーを開く日で、今回は友里の部屋がその会場だった。

 パーティーは12時からだが、11時に杏奈あんなちゃんが来て、おでんとおにぎりを作るのを手伝ってくれることになっている。

 他のメンバーは美也子みやこちゃんと芽衣めいちゃんと詩織しおりちゃんで、今日のパーティーの主役は芽衣ちゃんだ。

 本当は芽衣ちゃんの誕生日は3日後なのだが、当日は芽衣ちゃんは彼氏とデートするだろうし、5人でやるパーティーは週末でもある今日になった。

 パーティーは会費制で、いつも一人1500円くらいである。みんなで食べるもの(今回はおでんの材料)と、飲み物を買った金額を人数で割った数字だ。

 パーティーの主役は会費を払わなくていいし、買い出しや調理も手伝わなくていい。

 それでも料理好きな芽衣ちゃんは、自分で作った料理を持ってくるに違いないと、友里は期待していた。

 芽衣ちゃんの料理はおいしい。しかも、たくさん作ってきてくれる。

 しかし、材料費はいくらかかっているんだろうと、友里は毎回秘かに思っている。

 だから今日は、自分もデパ地下で買った冷凍シュウマイと、おにぎりに使う米などの材料を、会費の他に提供するつもりでいた。

 友里は、普段は孤独をこよなく愛していて、自分のアパートにあまり友達を呼ばない。

 でも、5人で開くバースデーパーティーは毎回楽しみにしていた。

 友里はサークルにも入ってないし、誰かと付き合ってもいない。

 バイトは一回2時間半の仕事を、週に一回か二回しているだけだ。

 他の学生と比べると時間があり余っていそうに思えるが、友里にはこれでちょうどいいのだ。

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