2.軍上層部の執務室にて
「任官辞退者が8割近くにものぼったって?」
国防軍人養成学校からこの報告を受けた国防軍の上層部は、呆れた声をあげた。
「大統領が言ったことなんか素直に信じちゃって…」
国防軍上層部の執務室には、数人の幹部が集まっていた。
「近頃の若者は、物事を疑って見るということを知らんのか」
「若さって奴だよ」
「青いねえ」
ここに集まった軍の幹部たちは、問題となっている大統領の発言には重きを置いていなかった。どうせどこかの段階でストップするだろうと思っているのだ。
「だって、今の時代に軍事侵攻とか戦争とかやっても、リスクしかないからね」
「費用対効果で考えると、元が取れんし」
「国際条約とか人権に関する思想とかも、ここまで発展して整備されちまったからには、簡単に無視できねえと思うのが普通だよな」
「第〇次〇界大戦や東西〇戦の時代で思考が止まってんじゃね?」
「化学兵器や生物兵器や核兵器も、持ってるって言ってるうちが花であって、実際に使ったら、ただのバカだぜよ」
「だな」
「うん」
「ただ…」
幹部の一人が声をひそめて話し始めた。
「任官辞退者が8割ってことは、新入隊員が例年よりも極端に少ないってことだろ?軍御用達の業者に発注する制服とか備品とかもその数だから…」
「業者の今年の売上は、例年と比べると雀の涙だな」
「気の毒に」
「笑い事じゃないぞ。(一段と声をひそめて)リベートが…」
「……。まずいな…」
「最重要事項だな」
「何とかしねえと…」
「大統領の近くにいる奴に探りを入れられねえか?」
「…」
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