第4話


チュンチュン…


周囲はまだ薄暗い中、ノアは外に出て目を閉じて立っていた


「ふぅ………ふっ!」


掛け声と共に懐から魔銃を取り出し次々に打つ

打った先には大小合わせて十枚の人の形をした鉄の板が置いてあり、身体中に穴が空いている

今回打った場所は頭の中心


「一枚はちょっとズレてたか…途中で留め具が緩んだのが原因かな?」


ふむふむと今回の結果を考察しながらも

緩んだ金具を直す


「さてと次はっと」


再び目を閉じ腰から真っ黒のナイフを抜くと身体を脱力させる


「……しっ!」


目を閉じながらもバックステップ、サイドステップ、体をそらしたり前に出てナイフを振ったりする

いわゆるシャドーと呼ばれるトレーニング

自分の中にある人物の動きをイメージし相手にする


「くっ!」


何度か攻防を繰り広げた後、動きが止まりナイフを落としその場にへたり込む


「やっぱりまだまだ師匠には勝てないか…

あそこは一度フェイント…いや、流した方が……」


ブツブツと独り言を呟きながらナイフを拾いビュンビュンと振り始める


☆★☆★


ラドミラル王立学園前


沢山の人が集まりガヤガヤとしている

今日は試験結果の発表日

試験を受けた人やその両親が集まっていた

張り出されている番号を見て

歓喜する者

落胆し下を向き帰る者

番号をボーッと見つめる者様々である

その中を気配を消しサッサっと人の隙間を縫うように歩くノアの姿があった


張り出されている掲示板の前は中々空きそうにない為、少し離れた場所にある木の枝から自分の番号を探す


「ない…」


手に持つ番号と掲示板を何回も見直すが、いくら探しても見当たらない


「国王様の依頼を失敗するなんて……」


ノアは何が駄目だったのか考える


「筆記はほぼ間違いはないし…それなら実技?

確かに本気ではなかったけど、あの耐久性の的だと的どころか外壁をも貫通する可能性もあるし……う〜ん」


考えるが答えがでない悩んでいると掲示板から少し離れた場所で騒ぎが起きていた


「おいっ!あのエリザベート様が二位だぞ!?」


「一位のノアって誰だよ!」


んっ?と思い騒ぎの方を見るとそこには一位から五位の名前が貼り出されていた


一位 ノア

二位 エリザベート・ベル

三位 レオ・メイヤーズ

四位 オリビア・ブライス

五位 アリス・フローレス


「なるほど。上位は別に張り出されてるのか。それは見つからない訳だ」


ふむふむと頷きながらサッと木から降りすたすたと帰路につくその途中、ノアと二人の女性がすれ違う

一人は腰まで伸びる長い赤髪を靡かせ、無い胸を張り自信に満ちた顔で歩く女性

もう一人は胸まで髪が伸び、太陽に照らされキラキラと光る金髪が胸が弾む度にふわりと浮かび、赤髪の女性の話を笑顔で聞く女性

そんな二人の会話がすれ違う際に耳に入る


「どうせ私が一位なんだから見に行かなくてもいいんじゃないかしら?」


「でっでも一応見ておかないとね?もしかしたら私達が知らない人が上位にいるかも知れないし」


「まぁそうかもしれないけど…でも私に勝てる人なんてそういないわよ!」


「あはは……」


赤髪の女性は余程自信があるのか終始勝ち誇った顔をし

それに相槌を合わせる金髪の女性


ノアはそんな二人をチラッと見た後その場から姿を消す


「どうかしたの?」


「誰かいたような…見間違えかしら?」


二人はノアがいた場所を一瞬見るが何も無い事を確認すると何事も無かったように歩き出した



☆★☆★


アルステラ王国王城にて王座の前でウロウロしている男性が二人


「まだか…まだか…」


「もうすぐオリバー軍団長が来ますから落ち着いて下さい!」


ウロウロする王を宥めながら追う宰相

二人は早朝よりオリバー軍団長のある報告を待っていた

すると部屋の扉が大きな音を立てて開く


「大変お待たせ致しました!いや〜国民にバレないようにするのは難しいもんですなあ〜」


「そんな事はよいからはよ報告せよ!」


「はっ!では僭越ながら報告させていただきます……無事合格!」


「それはわかっておるわい!ノアなら間違いないじゃろうが!!知りたいのは順位じゃ!もうよい!」


王は興奮しながらオリバーの手に持つ用紙を奪い取り目を通す


「…ノアは軽くと言っておったがそれでも一位なのか…」


「ですな!あの師匠も軽く散歩ついでにワイバーン殲滅するぐらいですからな〜

同学年では敵無し…いや、王国内でも敵無しかもですな!」


オリバーは顎に手を当てながら笑顔で話すが

王は難しい顔をしている


「二位のエリザベート・ベルはあのベル家の者か」


「そうですな。あのベル家の長女で確か文武両道な才女と聞きますな〜

ただ、親子揃ってプライドが高いとの噂も…」


「やはりか、何事もなければ良いがの…」


王達がノアの心配をしている頃


「さて、今日からはいつもより早寝早起き!登校前にいつもの日課を終わらせないとね」


明日以降の計画を立て、早めの就寝につくノアだった

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