第3話
試験二日目
ラドミラル学園・野外訓練場
「はい、お疲れ様です。合格発表は一週間後になりますので忘れないようにね
では次の番号…」
野外訓練場には多くの受験生と担当の教師が集まっている
A〜Eのブロックに分けられており、等間隔に分けられ離れた所には的がある
一つのブロックには十人程度の受験生と一人の教師でグループが構成されていた
「僕はDー8か」
ノアは受付より渡された札を見て指定された場所に並ぶ
「では、今貴方ができる範囲での魔法で、あの離れた的に当てて下さい」
そう言われて先に並んでいた受験生が魔法を唱える
「はっはい! 【我に宿りし情熱の炎、形成し、発現せよ、ファイアアロー】」
詠唱が終わると細長い火の矢が受験生の手の平に浮かび上がる
「いけぇー!!」
受験生は的に向かって火の矢を思いっきり投げる、が…
「うん。惜しかったね。あそこまで飛べば十分上出来よ」
火の矢は的の手前で失速し、地面に突き刺さり火が消えた
火の矢を放った受験生は目に涙を浮かべながらもゆっくりと訓練場を後にする
「では次の方、始めて下さい」
「あの、ちょっといいですか?」
次の受験生は教師に何か話してから元の位置に戻る
「うおおおおぉおおおおお!!」
受験生が雄叫びをあげると他のブロックにいる受験生達も一同にこっちを見る
雄叫びが消えると受験生はい勢いよく飛び出していく
「…身体強化か」
ノアはボソッと呟き受験生の動きを観察する
受験生は的に真っ直ぐに向かい、タックルを決めてから拳でラッシュをかける
(直線的で読みやすい動きだね、実践なら一発当てるだけでも難しいだろうね)
ノアが冷静に分析し終えると同時に受験生のラッシュが終わる
「うん!綺麗に魔力を使ってるね。魔力の消費も少ないし、身体強化は君に合ってるかもね」
「ありがとうございます!!」
褒められた受験生は綺麗なお辞儀をしてから訓練場を後にした
「では、次の方お願いします」
「はい」
そしてノアの順番になる
(的を狙うのは簡単。後はどのくらいが基準で合格範囲になるのか…)
「どうかしましたか?」
ノアが考えていると教師から心配する声がした
「いえ、では始めます」
(身体強化が大丈夫ならコレを使っても問題ないはず)
ノアはそう考え服の内側に入っている物を一瞬出してしまう
「どうしました?体調が悪いとかですか?」
教師からまた心配する声
「えっ?いえ、終わりましたけど…」
「えっ?」
ノアは見てなかったのかと思いもう一度同じ動作をする
パシュ
小さい音が聴こえた以外特に何もない
先程の受験生がボロボロにした的は新しく替えてある
その的には特に傷等見えない
「多分なのですけど、この距離だとあまり見えないかと思いますよ?
近くにいけば分かります。真ん中とその上下に穴がありますので」
ノアがそういうので教師は的に近寄る
「う〜ん……えっ!?ほっ本当に穴が空いてる!」
教師が近寄ると的には約0.5cm程の穴が三つ縦に並んで空いている
「えっ?どうやって穴を空けたの!?魔力の流れも感じなかったし、放った瞬間も見えなかった!!」
急いで戻ってきた教師はノアの肩を揺さぶり慌てて話す
「あまり見せたくはないのですが…コレを使いました。身体強化が大丈夫ならコレも問題ないかと」
ノアは懐から一つの物を出す
「こっ…これって魔銃じゃない!」
そう、ノアが使ったのは魔銃と呼ばれる魔道武器
一般的には魔剣が有名で、冒険者や軍の騎士等が使っているが、魔銃はマイナーのマイナー
使ってる人はおろか、市場でも見る事が少ない
その理由は…
「ノア君は大丈夫なの?魔銃って魔力消費が悪いし、魔力操作が難しいはず…」
そう、魔銃は使えれば威力が凄まじい
だがデメリットととして莫大な魔力の消費、そしてその莫大な魔力を操作する技量が必要なのだ
「僕は大丈夫です。慣れていますし
それにその魔銃は僕用にカスタムされてますので」
ノアのそう言われて教師は魔銃をじっと見る
(見た目は普通の魔銃だけど…細かく見ると至る所に手が加えているわね…大元の魔力回路から四つに回路が分かれていて、ふむふむ…)
「あのー?」
「ハッ!!」
自分の世界に入っていた教師の肩を叩き現実に戻す
「ごっごめんなさいねっ!うん、試験は終わりになります。お疲れ様でした」
「ありがとうございました!」
ノアは渡していた魔銃を受け取り訓練場を後にする
(う〜ん…魔銃はダメだったかな?)
ノアは試験内容を振り返りながら帰宅した
周囲からの視線を感じながら…
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