神の降りる夢に
上杉きくの
秋の夜長は
『風景描写が長すぎる』
『適当に色ばっかり盛って、肝心の中身がスカスカ』
『内容も綺麗事すぎて退屈』
青白いモニターの前であたしは唇を噛んだ。
三か月前、あたしは初めて書いた小説を投稿サイトに上げた。神様の
書き上げた達成感と喜びは次第に不安に変わり、今日届いたその感想で気分は真っ黒に染まった。暗い敗北感に背中を押され、いっそ全ページ削除してしまおうかと震える手を動かした。
すんでのところで思いとどまったのは、それでもあたしはこの話が好きだったからだ。
散々に言われた風景描写はあえて入れたものだった。場をつなぐため、文字数を稼ぐために冗長に入れたんじゃない。どうしても書きたかったから書いたのだ。……それが読み手に受け入れられなかったのは、きっと、あたしの書き方がまだ未熟だったからだろう。
なら次はそう言われないものを書いてやる。あたしはモニターを強く睨みつけるとPCをシャットダウンした。
ベッドに転がってもモヤモヤとした気持ちは収まってくれそうにない。秋の夜長は、ネガティブに突き落とされた時には耐えがたいものだった。
大きく息を吐くと、あたしは部屋の隅にある小さな本棚に向かった。
親元から飛び出すように引っ越して一人暮らしを始めてから、部屋に置く本はここに収まるまでと制限をつけた。かわりに電子書籍を使うようになったけれど、やっぱり紙の手触りに比べるとあまり手は進まない。
あたしは本棚から一冊の本を抜き出す。去年買った、この中では比較的新しい一冊だ。
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