第8話 『灯台/最終回』

あの女から3分遅れで、岬の灯台に着いた。


まもなく太陽が上がるようで、海が青く輝いていた。


灯台守の小屋に入った。男が待っていた。


「女は?」


「最後の謎を持って、灯台に登っていったよ。」


「どんなことが書いてあったかは知らない?」


「いや、知っているさ、ボーヤ。」


「最後の謎はどんな言葉?」


「それは『私の夢が分かったかな?』だ。そして、灯台を登るように指示が出されていたよ。」


「ありがとう!」


灯台の頂上に行く螺旋階段を僕は急いだ。


3分遅れで、叔父からの遺産を逃したなんてことだけは避けたい。


ところで、叔父の夢ってなんだったんだろう?




さんざん、人をあっちへやったり、こっちへやったりして、おかげでカーチェイスにはなるわ、ヘリコプターから襲撃されるは、最後は女強盗に遭うし、一晩で30年分の冒険をしたようだ。


冒険・・・叔父はヨットでよく世界をまわっていた。さながら冒険のように。


冒険する、それが叔父の夢だったのか?


螺旋階段を上りながら、僕は息をはずませ、頭をフル回転させた。


灯台の上に来ると女がまっていた。


「はい、ぼうや」


女が封筒を出した。


中を確かめると一枚の便箋。


そこには、叔父の筆跡でこう書いてあった。


「私の求め続けた夢がわかったかな?」


僕にはもう分かっていた。叔父が求め続けていたのは、『冒険』だ。


だから、僕に冒険を体験させてくれたのだ。


カーチェイスやヘリによる銃撃も、叔父があらかじめ頼んでくれておいたものなのだ。


そして、この女性も。


「冒険だろう。」僕は彼女に言った。


「お利口さんね。」


彼女は僕の頬にキスして、灯台を降りていった。


叔父が残してくれた遺産は、結局、僕のための冒険物語だったのだろうか。


水平線から朝日が顔を出し始めた。


真夜中のドライブが終わった。


まぶしい太陽を眺め、封筒をポケットにしまおうとした。


その時、封筒から1枚の古い切手が落ちてきた。




(終)

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『真夜中のドライブ』 @horai_japan

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