第2話 甲斐の虎

北条城の件より少し時間はさかのぼり、場所は越後から南に移る。ここは言わば山の国、

海は無く、沢山の木々で溢れている土地。

 人が住むには少々難しいところはあるだろう。

 その地の名は、全国の武将から恐れられている、戦神、武田信玄たけだしんげんが当主とする、甲斐かいという国がある。


当主の武田信玄は、若くして甲斐当主となり、甲斐周辺一帯を次々と攻略し、その圧倒的強さに甲斐の虎と呼ばれる程に。


現代でも語り継がれ、名言でわかる様に、

 人は石垣、人は城、人は堀、情けは味方、仇は敵なり、と。立派な城があっても、人の力がないと役に立たない。

 人こそが城であり、人こそが国であると。


まさに、一国の当主とある武田信玄であったが、城を一切持たなかった、そんな武将である。


この信玄の人間性により、甲斐の国を支える家臣達の繋がりは、相当なものであった。

 また、家臣の能力を正当に評価することで国内をまとめ、領地を大幅に増やし、今では大きな国となった。


だが、この甲斐は長年に渡り抱えている問題がある。


屋敷の中庭で1人、黙々と刀を振る信玄。。
















「御館様!!」


信玄「ゔおぇいっっ!びっくりしたー!」


背後に急に現れ堂々と立っている男。軍師の山本勘助やまもとかんすけだ。

 戦略の天才であり、築城術を得意とし、その知識を活かし取った城の数多く、信玄の片腕とまで言われるようになった。

 

信玄「勘助、最近それ多いぞ!急に出てくるやつ。」


勘助「ありがとうございます。」


信玄「いや、褒めとらんぞ」

また真田さなだの者に習ったりしてるのか・・

勘助「御館様!」


信玄「ぁ、はい!!」


勘助「食料の件でしたが、また冬頃には厳しくなるとの事で調べがつきました。」


信玄「・・そうか、あいわかった。」


長年の問題とはこの件だ。

甲斐は貧しい土地であった。


山地で耕作面積が少ない上に、川は急な流れで氾濫しやすかった、信玄は治水工事をし改善させたが、甲斐が農耕に不向きな土地であるということには変わりはなかった。

 海がないことで塩や海産物の供給は、その時々の同盟国に、武田家は長年頭を下げて頼ってきた。

 この当時、同盟を組んでいたのは、甲斐から南側にあたる、関東の北条ほうじょう、東海の今川いまがわ、であった。


信玄「なんとかせねばならぬ、勘助皆の者を屋敷へ呼べ。」


勘助「はい!」


そして屋敷に家臣達が集まった


信玄「皆の者よくぞ参った、今日は大事な話しを。。」

  

家臣達は皆真剣に聞き耳を立てる


信玄「北上作戦を再開しようと思う!」


家臣達に驚く者こそいなかったが、素直に頷く者達、不安な空気を放つ者達がいた。


その通りだ、食料問題は家臣達も十二分に理解している、それだけではなく、領地を増やすことで利があるからだ。


だが問題は越後にいる長尾景虎。


越後の景虎とは約2年前に衝突

(現代でいう第一次川中島の戦いである)

武田信玄が、甲斐から北の領土を広げに敵国を攻めたところ、制圧寸前、さらにそこから北にある越後から援軍が突如現れた、それが景虎であった。

 結果、敵国の領土は多少は取れたものの

被害は莫大、とても勝利したとは言えない。

 連勝で勢いのあった武田であったが、ここにきてその勢いが止まるほど、景虎率いる越後軍は強かったのだ。



信玄「ただただ攻めるだけではない、越後を侮ってはならぬ、今、同盟を組んでいる、北条ほうじょう今川いまがわ達と、越後を共通の敵として進軍させ、攻め入る!」


徐々に納得し始める家臣達。


信玄「苦労を掛けるが、甲斐の為。。必ず勝利し海場まで手にするぞ!」


恐れもあったが、信玄の言葉に皆、覚悟を決める事となった。


信玄「それでは皆の者、それぞれ戦の準備を。」


家臣達「ハッ!」


それぞれ部屋から出て行く家臣達の中、信玄は1人の名前を呼ぶ。


信玄「あ、!あーそれと真田!!」


真田「はい、御館様!」


この家臣は、武田信玄の片腕とも言われる重臣、真田幸綱さなだゆきつな

 この男こそ、後に戦国時代を終わらせる、日本一の兵と呼び声の高い、真田信繁さなだのふじげの祖父である。


信玄「今度は北を攻める、お前の領地が一番近い、なにか策を一緒に考えよう。」

真田「でしたら御館様、良きさくを考えましたので是非!」


信玄「は、早いなっっ」





真田「私の、しのびを使う手でございます。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る