第32章 追い求めた真実の眼差し
最初から全て、仕組まれていた。恭一が遺物と接触し呪いを受けることも、この世界へ来ることも、一人の女性を愛することも。全てが、仕組まれていた事だとしたら?
「
「…」
「
「…」
家の者以外は決して知らない事実も含めた情報が
「おっと、ここにはもう一つ事実がありました。大災害を引き起こした元凶と接触した死にかけの貴方は、その者と、ある誓約を結びました」
「誓、約…なんて…」
そんなもの結んだ覚えなどない。恭一は体の奥底から侵食していく何かに飲まれながらも、声を出そうとしたが届かない。
「一なる者との誓約は、貴方の魂が続く限り、
「っ…時限、爆弾…?」
「貴方がどうして、今まで見えなかったものが見えたり、それに対処できる霊力を得て、この事象に関する全てを追い求めようとしたのでしょうか。名門の一族の当主になることのできる道もあったのに、混沌を求めた、強さを求めた、天使と悪魔の存在の意味も!貴方の心の底にあった殺意と闘争の衝動のままに、探し求めた結果、貴方は、たどり着いた」
再び、あの者のところへ。
『私たちは、再び逢うことになるだろう』
差し出された手が、恭一の上の瓦礫を取り除き、次の記憶で、恭一はその者の腕に抱かれ、何処かへ連れて行かれた。濡れた赤い血に染まった体に、恭一の顔にかかるその者の髪の先には、燃え盛る炎が迫っていた。
『これは…呪いだ…いつかまた逢えた時…私の悲願は達成されるだろう』
『それまで、生きろ』
ハッと現実に引き戻された時、今まで分からなかったその者の顔が一瞬だけ、はっきりと認識できた。遠い炎の光に照らされ、見えたその顔は___
「アイテル…」
「君は利用されていたんだよ。あの時、君はもう既に呪いを受けた。
_『騙されるな、恭一!』
ラミエルの声は恭一に届くことはなかった。
_『恭一…!ねぇ!ちょっと、冗談じゃないですよ…!』
「…アイテル…が…」
『私、間違っても、いきなりお国をまるごと焼いたりしません。虐殺なんてしません。
アイテルの言葉、ふと振り返って向けられた微笑み、優しくいつも自分を抱きしめてきた肌が、嘘かまことか。信じようとしたもの、ようやく愛しめた存在が、あの日の炎の中に焼かれていくかのよう。
咲は彼女を殺そうとしていた。あれはもう知っている咲ではないことはわかっていたが、自分にいつも忠実であった彼女の行動の全てに合点がいってしまった。
アイテルが恭一の呪いを共に引き受けた理由も。彼女は自分の力を自分に戻すために、恭一と繋がっていた。
自分は、良いように使われていた。最初から。全て。今までの人生も全て、
「それが、真実です。貴方達は強く惹かれるようにされていた。あの日から既に、
「だから、アイテルには死んでもらわないといけないんです。…お分かりでしょう?ですが、僕のような一般人には、彼女を殺しきることができません」
__『ふざけた戯言ばっかり並べやがって…』
天使は
「…貴方が、手を下すんです。エバの一部をその身に宿した貴方なら、器を完全に破壊し、エバの干渉を、この世界から一時的にですが、遠ざけることができます。世界の滅亡は免れる。そして貴方も、その呪いから救われるんですよ。悪いお話じゃ、ないでしょう?」
「…」
「貴方自身に課せられた運命は、貴方にしか決められないものです。このまま貴方は、世界が終わり、永遠に魂が縛られる事を望むのでしょうか?違いますよねぇ?」
「…」
『私がついています。貴方には、私が』
アイテルの言葉が、まだ引き返せると恭一を止めようとしたが、屈辱を味わった彼の耳にはもう、耳障りな雑音でしかなかった。
「さぁ、決断しましょう。恭一さん。貴方の愛が、憎しみを超えてしまう前に」
__『恭一‼︎私の声を聞きなさい!きょう…』
ラミエルの不確かな存在が掻き消され、恭一の認識から遮断された。彼は再び、剣の切先のような目を開け、赤く血に染まった瞳を露わにする。
「…アイテル…」
恭一を依代に、呪いがますます力を増していくのを見た
「さあ、行きましょうか。貴方を騙した女の所へ」
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